6月8日 記念日 その1 | スズメの北摂三島情報局

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2011/08/02 リニューアル
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柴犬ハルがお伝えします

西暦(グレゴリオ暦)AD2024年 令和6年 平成36年 
昭和99年 大正113年 明治157年 皇紀2684年 干支 甲辰(きのえ たつ)
第2土曜日 旧暦  5月 3日、先勝(癸卯)、月齢  1.6 
グレゴリオ暦で年始から160日目、年末まであと206日。
誕生花 ジャスミン。

成層圏発見の日。
1902(明治35)年6月8日、フランスの気象学者、レオン・ティスラン・ド・ボールが観測用の気球を揚げ、大気中の気温の変化から成層圏の存在を見い出した、と言われる。成層圏とは、地球の大気の鉛直構造において、対流圏と中間圏の間に位置する層である。対流圏と成層圏との境目は対流圏界面(高度は極地で約8km、緯度が低くなるに従って高くなり赤道付近で約17km)、成層圏と中間圏との境目は成層圏界面(高度約50km)と呼ばれる。対流圏や中間圏では、高度と共に温度が低くなるのに対して、成層圏では逆に、高度と共に温度が上昇する。成層圏下部、対流圏界面付近では、気温が約-70℃前後であるのに対して、中間圏との境の成層圏界面付近では、-15℃から0℃になることがある。但し、上空へ行く程高温といっても、成層圏の温度上昇率は一定ではない。まず、対流圏界面の高さを10kmとすると、ここから上に20km位までの温度は、対流圏界面とほぼ等温状態が保たれる。そこから約15km位までは、温度が僅かに上昇する層があり、さらに、そこから成層圏界面までは、温度が急激に上昇する。成層圏で高度と共に温度が上昇するのは、成層圏の中に存在するオゾン層(地球の大気中でオゾン[3つの酸素原子からなる酸素の同素体]の濃度が高い部分で、生命にとって有害な紫外線が地表に降り注ぐ量を和らげている)が太陽からの紫外線を吸収するからである。しかし、オゾン濃度が一番高いのは高度約20km~約25km付近であるが、実際に成層圏内で温度が一番高いのは、高度約50km付近である。この理由は、オゾン濃度がどうであれ、上部のオゾン層程、濃度の高い紫外線を吸収することもでき、また、上層である程、空気密度が低いことから温度の上昇率も大きいためである。この理由から、成層圏では、実際のオゾン濃度が一番高い付近よりも上に温度が最大の場所がある。1839(天保10)年、スイスの化学者クリスチアン・シェーンバインがオゾンを発見し、その特有の臭いから、ギリシャ語で「臭い」 を意味する「ozein」に基づいて命名した。1879(明治12)年には、フランスの物理学者マリー・アルフレッド・コルニュが、太陽光のスペクトル観測において、300nm付近より短い波長の紫外線が地表付近で観測されず、大気による紫外線の遮蔽があることを発見した。1881(明治14)年にアイルランドの化学者ウォルター・ハートレイは、実験室内で300nmより短い波長の紫外線がオゾンにより強く吸収されることを発見し(ハートレー帯吸収)、大気による紫外線隠蔽の原因はオゾンであると提案した。1913(大正2)年、イギリスの物理学者ジョン・ウィリアム・ストラット(レイリー卿)は、下層大気では紫外線の吸収が無いことを発見した。そして、同1913(大正2)年には、シャルル・ファブリと、アンリ・ビュイソンの2人のフランス人科学者によって、「オゾン層」の存在が発見された。1920(大正9)年には、オゾンに関する研究の第一人者とされるイギリスの物理学者・気象学者、ゴードン・ドブソンが科学的測定によって、オゾン層の存在を証明した。成層圏という名称からは、この層は、対流圏のような擾乱(大気が乱れる現象)のある層ではなく、安定した成層(積重なって層をなすこと)であるかのような印象を受ける。確かに、対流圏程気象は活発ではないが、完全な成層でもない。成層圏の発見は、凡そ100年以上前にも遡る。1902(明治35)年にフランスの気象学者、ティスラン・ド・ボールが、気球観測によって対流圏とは構造がやや異なった層があることを発見し、翌年に発表した。その発表内容は、成層圏は対流圏とは異なり、成層圏下部は温度が低く、上部は温度が高いというものであった。従って、下部に重い気体が、上部に軽い気体があるため、上下の混合は起こらないと推定したことから、当時は、この層は成層であると考えられてきた。これが現在の「成層圏(stratosphere)」という名前の由来である。語源となったラテン語の「stratus」は、英語で「a spreading out(広がり)」の意である。その後、高層気象観測の技術も発達し、成層圏の本格的な研究により、実際は、成層圏でも上下の混合が起こっており、成層圏内でも風が吹いていることが分かった。成層圏内での風の分布には興味深い特徴があり、まず成層圏下部では、対流圏上部の偏西風の影響を受け、概ね西風が吹いている。成層圏上中部では、次のような現象が見られる。極(南極や北極)付近は、夏に白夜(真夜中になっても薄明になっているか、又は太陽が沈まない現象)が起きる。従って、季節が夏の半球では、太陽が当たる時間が低中緯度よりも高緯度の方が長くなる。そのため、極付近では、オゾン層によって大気がどんどん暖められ、結果として高圧状態になる。逆に低緯度では、相対的に低圧である。このため、高緯度側の高圧部から低緯度側の低圧部に向けて気圧傾度力が生じる。気圧傾度力は、低緯度から高緯度に向かうコリオリの力(回転体上を運動する物体に働く慣性の力で、回転軸と物体の速度の向きとの両方に垂直に働き、物体の速度の向きを変える)と釣合い、これを満たすように夏半球が東風になる。従って、成層圏上中部では、特別な場合を除いて、夏季は常に東風、即ち、偏東風が吹いている。これを、成層圏偏東風と呼ぶ。また、冬には逆の現象が起き、極付近では、夏とは逆に一日中太陽が当たらない状態なので、低緯度付近と比べて低温、即ち、低圧となる。よって、低緯度から高緯度に向けて気流が生じ、コリオリの力を受けて偏西風となる。これを成層圏偏西風という。この現象は、季節によって変化する風、即ち、季節風と捉えることができる。この現象は言わば、「成層圏のモンスーン」である。この循環に加えて、夏の極上空では、熱圏へ向かう上昇気流、冬の極上空では、熱圏からの下降気流が起こっており、これらを纏めて、ブリューワー・ドブソン循環(成層圏循環)と呼んでいる。成層圏偏西風と成層圏偏東風、どちらも最大風速は秒速約50mである。このように、成層圏は名前のように成層ではなく、大気擾乱がある。但し、前述のことは通常の季節変化を示したものであり、冬季に成層圏突然昇温という現象が起こった際には、成層圏偏西風が東風になることがある。フランスの首都パリで生まれたレオン・ティスラン・ド・ボールは、フランス政府の機関である国立気象管理センターの所長を務めた。退職後、個人の気象観測所を作り、無人観測気球を使った高空の気象の実験を行なって、高空の観測に無人気球を使った最初の科学者となった。1913(大正2)年にレオン・ティスラン・ド・ボールが没した後、その個人気象観測所は国に寄付され、研究は継続された。なお、高層気象学の分野の先駆者とされるドイツの医師・気象学者、リヒャルト・アスマンは、レオン・ティスラン・ド・ボールとほぼ同時期に、成層圏発見を報告しており、共に成層圏の共同発見者と評価されている。