1月23日 記念日 その2 | スズメの北摂三島情報局

スズメの北摂三島情報局

2011/08/02 リニューアル
2019/07/14 アメブロ移動
柴犬ハルがお伝えします

八甲田山の日(続き)。
八甲田山は、全国的には余り高くはない、1,600mに満たない山地ではあるが、青森県を東西に二分し、それぞれの気候の特徴に大きな影響を与えている。夏季は太平洋から冷たく湿った北東からの季節風「やませ」が吹込み、青森県の太平洋側は濃霧・冷害に見舞われる。対して、八甲田山の西側は優良な稲作地帯で、弥生時代の水田跡が発見されている。冬季は日本海から湿った北西の季節風が吹き、津軽地方に雪をもたらす。一方、八甲田山の東側は、晴天率が高く降雪も少ない。夏冬いずれも、八甲田山によるフェーン現象(山の斜面に当たった後に山を越え、暖かくて乾いた下降気流となった風によって、その付近の気温が上がる現象)であると考えられている。八甲田山は、その南に位置する十和田湖と同じく、カルデラ(火山の活動によってできた大きな凹地)を有する火山群である。広い湿原のある田代平近辺の窪地が、カルデラの北半分に相当し、南半分は、カルデラ形成後に噴火した八甲田大岳等の火山群が盛上がっている。櫛ケ峯(1,517m)のある南八甲田は、古い先カルデラ火山に相当する。カルデラを形成した巨大噴火は、調査されているだけで過去2回(約65万年前と約40万年前)発生した。南八甲田は、2回目のカルデラ噴火の前に火山活動を終えている。北八甲田は、カルデラ南半分を埋める形で約16万年前から活動を始め、繰返し噴火しながら多数の(余り大きくない)成層火山(ほぼ同一の火口からの複数回の噴火により、溶岩や火山砕屑物等が積重なり形成された円錐状の火山)を形成した。歴史時代の記録では、溶岩を流出するような大きな噴火は無いが、山群の所々から火山ガスが噴気している。火山ガスの主成分は、水蒸気、二酸化炭素で、他に二酸化硫黄(亜硫酸ガス)も含まれる。通常は少量の水素ガス、一酸化炭素、硫化水素、塩化水素が含まれ、火山によってはフッ化水素、メタンガス、アンモニア、ヘリウム、ラドン、水銀蒸気等が含まれることもある。毒性をもつ成分や酸欠により、動植物の生命に大きな危害を及ぼすことがある。また、熱により、周辺の生態に大きな影響があることも多い。吸った動物や人間が、その場で死亡することも珍しくない。また、中毒に気付かず、手遅れとなり死亡することもある。噴火はしなくても、恒常的、或いは間歇的に火山ガスのみを噴出する火山も多い。温度は数百℃以上であることが多く、空気よりも密度が高いので、窪地に溜まり易い。1997(平成9)年には、訓練中の自衛隊員3名が、窪地から噴出し、そこに滞留していた高濃度の二酸化炭素により窒息死する事故が発生している。また、2010(平成22)年6月には、酸ヶ湯温泉上方の登山道を外れた沢に於いて、山菜採りに訪れていた女子中学生1名が、現場に滞留していたと考えられる火山ガスによって、中毒死する事故が発生している。1997(平成9)年に自衛隊員3名が死亡した場所は、南西に約7km離れた地点にある。気象庁や防災科学技術研究所(文部科学省所管の国立研究開発法人で、地震観測データを利用した地殻活動の評価及び予測に関する研究、国際地震火山観測研究、火山噴火予知と火山防災に関する研究、マルチパラメータレーダを用いた土砂・風水害の発生予測に関する研究、台風災害の長期予測に関する研究、地域防災力の向上に資する災害リスク情報の活用等のプロジェクトを行なっている)等の地震観測施設により、地震の観測が行なわれている。2011(平成23)年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)以降、八甲田山周辺を震源とする地震が増加している。また、2013(平成25)年2月以降、山頂直下を震源とする地震が散発的に発生している。一方、アメリカ合衆国によって運用される衛星測位システム(地球上の現在位置を測定するためのシステム)、全地球測位システム(GPS)での観測により、山体が膨張してるように見えるとして、2013(平成25)年6月18日に気象庁が観測機器を新たに設置し、監視を強化したことが報道された。2013(平成25)年7月からは、東北大学噴火予知研究観測センター等による広帯域地震観測が実施されている。また、2013(平成25)年9月には、東京大学地震研究所と東北大学噴火予知研究観測センター等による、12ヶ所の観測点での重力臨時観測が実施された。2016(平成28)年12月1日より、気象庁が24時間体制で火山活動を監視する常時観測火山に追加されることとなった。八甲田山には、「多くの田代(湿原)があるから」という名称の由来の通りに、多くの高地湿地が存在することで有名である。八甲田山が他の高山に対して景観上の特異性を持っているのは、この湿原群に負うところが大きい。仙人岱(せんにんたい)は、世界有数の豪雪地帯としてもその名を知られている酸ヶ湯温泉から大岳へ登る途中の比較的頂上近くにあり、「辰五郎」水飲み場がある。また、ここはヒメワタスゲの分布南限地となっていて、ヒナザクラ、アオノツガザクラ、モウセンゴケ、コバイケイソウ等も生育している。木道もあるが、以前の登山者による過度の踏付けにより、荒廃が激しく裸地化している場所が多く、現在植生の復活が図られている。モリアオガエル、ヤマアオガエル、イモリ等の両生類も多く見られる。毛無岱(けなしたい)は、大岳から大岳鞍部避難小屋から別ルートで酸ヶ湯温泉に下る途中にあり、上毛無岱・中毛無岱・下毛無岱の広大な湿地である。中毛無岱からの階段から望む下毛無岱の全景は、多くの登山者が足を止め、写真を撮る絶好のポイントとなっている。テラスがあり、そこで風景を見ながら休憩することもできる。田茂萢(たもやち、東北地方では、萢 = 谷地 = 谷戸となる)は、八甲田スキー場の八甲田ロープウェイで登る田茂萢岳(標高1,324m)頂上に広がる湿原で、木道がヒョウタン(英語でgourd = ゴード)のように8の字になっているゴードラインを歩くことができる。晴れていれば、赤倉岳、井戸岳、大岳が眼前に見えて、そこへ縦走する山道もあり、毛無岱へ抜ける道もある。ミツガシワ、チングルマ、ヒナザクラ、エゾシオガマ等が見られる。特に、7月下旬から8月中旬のキンコウカの群生と、10月上旬の草紅葉は見事である。山頂公園駅には売店やトイレ、食堂等が完備されている。田代平湿原は、八甲田温泉近くにある湿原で、青森市の天然記念物に選ばれている。他の湿原と比較して標高が低いので、趣が異なっている。ここに生育するのは、他の沼地に生育するヒツジグサと違い、開拓民が持込んだものがそのまま定着した、温帯性のスイレンである。八甲田温泉から湿原に入ることができ、湿原の端には、青い鳥居が立つ龍神沼がある。湿原内の道路は、1周でおよそ1時間程度である。6月中旬には、ワタスゲの穂が満開となり、一面の海のようになる。同じ頃、レンゲツツジやヒメシャクナゲ、ツルコケモモも見ることができる。6月下旬にはニッコウキスゲ、7月には、キンコウカ、カキラン、モウセンゴケ、ムラサキミミカキグサ、タヌキモ、タチギボウシ、ネジバナ等を見ることができる。8月下旬には、ウメバチソウ、サワギキョウ、ナガボノシロワレモコウ、タチアザミが咲き、これ等が咲く頃には秋の気配が漂ってくる。標高1,584mの大岳の他に、田茂萢岳、赤倉岳、小岳、高田大岳等の山々が、殆ど同じ高さで並んでいる。ロープウェイは田茂萢岳に設置されており、冬はスキーが楽しめ、積雪期以外なら、ハイキング気分で山歩きが楽しめる。秋には全山紅葉し、見事な錦秋模様となる上、登山道沿いにはコケモモやガンコウランが多く実を付けており、目と舌の両方を楽しませてくれる。また、冬季には、東北地方でも有数の豪雪と強い季節風により、アオモリトドマツに見事な樹氷を楽しむことができる。加えて、山麓に散在する温泉群は、多様の泉質で味わい深い。北八甲田山系は、比較的登山道が整備されている山が多いものの、南八甲田山系の登山道は、意図的にぎりぎり人が利用できる程度の整備しか行なわれていない。そのため、南八甲田山系の山に無雪期に登るためには、長時間の藪こぎや荒れた登山道の移動を強いられる。南八甲田山系の登山は、夏期の登山よりも、山スキーを利用した積雪期の登山を行なう人の方が多い。