⛩【菊と稲荷】ヒルコノミコト・12:ヒルコノミコトの正体。 | 神仏広告代理店

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【菊と稲荷】

【菊と稲荷】の始まりの物語はコチラです→『プロローグ。』

 
 

<あらすじ>

 

『怖いと思われている稲荷の誤解を解いてほしい』 

 

その言葉と共に、六甲山の高取神社で

 

「神様」という存在に、接続してもらった私。

 

 

前からついていたという高野山の清高稲荷大明神さま

 

子狐眷属の姿も確認できるようになり、

 

奇妙な共同生活(?)が始まっていた。

 

 

 

***

 

 

 

「太陽が沈んで暗闇に包まれる、不安な時間。

 

そんな時間も御神影として人々に寄り添い、

 

人々を守っている神……」

 

 

 

 

 

御神影(おみえ)とは、えびす神の姿が描かれた神札。

 

平安時代から全国で配布されてきた。

 

 

 

 

子狐2「ポッチャンするの?」

 

菊「ポッチャン?? 何が?」

 

 

 

子狐2「お日さま」

 

菊「太陽? ポッチャンて何?」

 

 

 

子狐2「お日さまって沈むんでしょ? 沈む時の音

 

 菊「あー水に入る音? 沈むけど……音はしないよ」

 

 

 

子狐2沈むのにポッチャンしないの?

 

「…………」

 

 

 

 

 

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え。

 

 

ちょっと待って。

 

 

 

 

 

太陽が水に入った時の……音……

 

 

 

 

 

菊「…………」

 

子狐「…………」

 

 

 

 

菊「昔の人って……」

 

子狐「?」

 

 

 

 

「昔の人って 宇宙の概念がないから……

 

もしかして太陽はいつも

 

海にほんまに沈んでるって思ってたんじゃ……

 

 

 

 

 

じゃないと「太陽が沈む」って日本語が……ヘン。

 

 

 

 

 

 

妄想が頭を巡る。

 

 

 

 

 

夕日を見る場所にもよるけど、日本は島国だから、

 

最終的には「海に沈む太陽の姿」を確認していたはず。

 

 

 

 

 

夕日が遠くの海に沈むのを見て、

 

そして次の日に海から昇るのを見て……

 

 

 

 

"夜の太陽は海の中"

 

そう人々は思っていたのでは……

 

 

 

 

その時、私は長田神社で事代主神が渡して下さった言葉を思い出した。

 

 

万物は影響し合う中でそれぞれの気を受け、どこか消耗する。

 

"気枯れ” という状態だ

 

 

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次に思い出したのは、三輪惠比須神社の湯立て神事。

 

 

 

塩はネガティブなものを根こそぎ切り離す

 

塩に浄化作用があるとしているのは、日本特有

 

1日の終わりに塩風呂……

 

 

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菊「太陽ってさ……」

 

 

 

太陽って、その日1日の人や街や時間や……

 

とにかくその日1日の疲れや穢れをその身に付けて

 

 

 

そして海に沈んで……

 

 

 

海の中でそういう穢れを全部祓い清めて、

 

そして光り輝く光と共に、新しい朝を運んでくれるって……

 

 

 

菊「そんな風に、昔の人達は信じてたんちゃう?」

 

子狐2「お日さまの1日の終わりの塩風呂が "海" ってこと?♪」

 

 

菊「……なかなか的を射た例を一発で出してくるね💧」

 

 

 

 

 

その時、ふと思い出した。

 

それは去年の12月の下旬祭後に西宮神社の宮司さまが話された事。

 

 

 

ヒルコノミコトは、海に捨てられた可哀想な神と思われていました。

 

 

 

 

古事記などの書物について、昔から研究がされていまして、

 

平安時代にもそういう会があったのですが、その時にこんな事が分かりました。

 

 

 

ヒルコノミコトに使われる「棄つ」という言葉は今では「棄てる」という意味ですが、

 

古事記の中で「棄」という漢字が使われている他の場面を調べたところ、

 

イザナギが黄泉の国で逃げる際に「桃を棄つ」であったり、

 

櫛を折って「棄つ」という所で出てくるんですね。

 

 

 

 

神話においては単に「棄てる」という意味ではなく、

 

その場を清め浄化する意味。

 

 

 

さらに、捨てた場所からタケノコが生えてくる事から、

 

再生や誕生をさせる力を持つ言葉であると分かりました。

 

 

 

こういった事から、単に棄てられた可哀想な神ではなく、

 

 

 

 

清め浄化し、

 

再生させる力をもった

 

神であると思われます。

 

 

 

 

 

 

頭の中がパアッと晴れた。

 

 

 

 

 

 

ヒルコノミコトは

 

 

 

 

穢れて沈んだ太陽を

 

 

海の中で清め浄化し、そして太陽本来の力を再生させ、

 

 

新しい "朝" を誕生させる神……

 

 

 

 

 

 

海に沈んでいる間の……

 

つまり

 

夜の "見えない太陽" を守り司る神なのでは。

 

 

 

 

 

菊「サナギ。なんだ……きっと」

 

 

 

 

さ なぎ。

 

狭 凪。

 

 

 

 

「凪」は風速ゼロの静かな状態。

 

「狭」は神聖。

 

 

 

 

菊「そして、そのまま狭いという意味も」

 

 

 

 

サナギは殻の中で、新しい姿を再生し、

 

羽化をする。

 

 

 

そしてサナギから出た蝶のその姿は……

 

自由で、軽くて、美しくて

 

 

 

 

そんな日々を、えびす神は私たちに毎日、毎年、

 

ある一定の期間を「サナギ」の中で守り、清め、与えてくれている。

 

 

 

 

『青柴垣神事』で、當屋さんが『蝶形の扇』を後ろ襟に挿して、

 

それが私は後光に見えて太陽のようだと書いたけど。

 

 

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『青柴垣神事』での「蝶」は

 

「太陽」そのものであるんだろう。

 

 

 

 

子狐1「清められた太陽を釣るのが "三郎殿" で、

 

海の中で清める事をされているのが "夷さま" という事?」

 

 

 

菊「……夷さま……えびす」

 

 

 

 

もともと古代はやまと言葉。

 

音に意味があり、漢字は後世の単なる当て字。

 

 

 

 

「え」=「江」

「び」=「日」

「す」=「守」

 

 

 

 

そんな漢字が浮かんだ。

 

 

 

 

「江」はもともとは「大きな川」という意味だが、日本特有の意味がある。

 

それは「海や湖水などの陸地に入り込んでいる所。いりえ」とある。

 

 

 

 

菊「西宮神社も昔は入り江にあったし、

 

美保神社も入り江だよね」

 

 

 

 

"えびす神" って、入り江にいて、

 

或いは入り江の中

 

太陽を守る神の事を指しているのでは……。

 

 

 

 

 

子狐1「太陽のことを "お日さま" って呼ぶけど。

 

この "日" っていう字って、いろんな読み方があるんだね。

 

さっきも "その日一日" って……」

 

 

 

菊「ほんとだね……」

 

 

 

 

『日』という漢字が表すもの

 

① 太陽

② 昼間

③ 一日 日にち

④ 日々

⑤ 日曜

⑥「日本」の略

 

 

 

 

……そうか。

 

 

「日」という字は太陽であり、それは私たちの毎日の暮らしそのもので。

 

そしてそれはまた「日本」という国そのもので。

 

 

 

 

菊「……えびす大神さまはさあ……」

 

 

 

 

新しい太陽を……つまり新しい「朝」を釣り上げ、

 

新しい「暮らし」を毎日、私達に与えて下さっている。

 

 

 

 

 

そして

 

 

 

 

今は……

 

 

 

 

 

清めた光り輝く "新しい時代" を釣り上げ、

 

与えてくれる神なのではと、私は感じた……。

 

 

 

 

 

《『ヒルコノミコト』最終話に続く》