【菊と稲荷】の始まりの物語はコチラです→『プロローグ。』
<あらすじ>
『怖いと思われている稲荷の誤解を解いてほしい』
その言葉と共に、六甲山の高取神社で
「神様」という存在に、前よりも強く接続してもらった私。
前からついていたという高野山の清高稲荷大明神さまの
子狐眷属の姿も確認できるようになり、
奇妙な共同生活(?)が始まっていた。
その清高稲荷大明神に依頼されたお祭りが終わると同時に、
次のミッションが始まっていた。
それは「事代主(コトシロヌシ)という神を解読すること。
事代主神とは、もう一柱の「えびす神」だった。
***
前回の続き
菊「このタイミングでこんなメールが続けて届くって……」
長田神社の主祭神・事代主神の存在をすぐ目の前に感じながらも
でもまだ言葉は何も渡される気配がない。
子狐1「お稲荷さまのところとか、先にぐるっとお参りしてみよっか」
菊「うん。そうだね。そうしよう!
事代主神さま、また後で参りますね」
そう言って、私は本殿を後にした。
本殿奥の楠宮稲荷社で、倉稲魂神に会った時、こんな言葉を渡された。
……クスノキは天と地を繋ぎ、
それぞれに枝を、根を、網の目のように張り、
世界をやわらかく強固にする
そして、月読神にはこんな言葉を渡された。
菊「なんか……月読神さまの視点は高すぎる場所からのもので、
倉稲魂神さまの視点は、私たちの目線の高さって気がするね」
子狐2「稲荷は人のそばにいる存在だからね」
子狐1「でもどこからの視点でも、神は人を見てるし、循環したいと思ってるよ」
菊「循環?」
子狐1「……やっぱり……信仰が消えると、神の存在も弱まって消えてしまうから」
子狐2「それは "人" にとっての存在感というか、存在価値なんだけど……」
なんか。わかる気がする。
月読神が渡した言葉のように、きっと大きな……
大きすぎる視点からでは、私たちのいろいろはちっぽけで。
ちっぽけな私たちがどうなろうと、大きな視点からはあんまり関係ないんだと思う。
でもそんなちっぽけな私たちの "命" のために、
日本の神様たちはいろんな役割をそれぞれに持って、力を発揮して下さってる。
なのに……その "いろんな役割を持つ神" それぞれへの信仰心が消えたら……
確かにその神は「不要」となってしまい、
存在が消えてしまうのかも。
本殿前に戻った私は、そこにあった長田神社のリーフレットを手にした。
菊「別名『恵美主(えびす)さま』……この漢字って、初めて見たかも」
えびす
恵比寿
戎
蛭子
恵比須
……
「えびす」にはいろんな漢字が当てられている。
菊「あ、西宮神社の荒えびす様は『沖恵美酒』さまだったな。ちょっと似てる」
鮮やかな赤い本殿。
その向こうに見える植物の緑が美しい。
菊「事代主神さま、どこですか」
その時は言葉を交わすという感じではなく、
ただその渡された言葉をiPhoneにメモした。
『海底の活断層を抑えてくれている神』
という考察の元に参拝しているのだから、その意味の大半は理解できた。
見当もつかなかった「音」という言葉に関しては、
帰宅して調べた "事代主神系のえびす神社総本社"、
美保神社のことでその意味を知る。
美保神社の神様は「鳴り物」の神様。
菊「……私、ちゃんと聞けてる。神様の言葉」
とにかく初めて繋がることにできた、長田神社の事代主神。
それは「もう一柱のえびす神」で。
その後、清高稲荷大明神のお祭りも無事に過ぎ、
私の頭の中は「事代主神」のことを想う時間が重なっていった。
子狐1「"えびす神" のことは "えびす神" に聞いてみたら?」
子狐2「行こうよ!ママ! お留守番されてるし、喜ばれるよ♡」
菊「ほんまやね。行こ。えびす大神さまと話したい」
自転車飛ばして、西宮神社に*
こういう時に頼れる神様が近くにいてくださるのは、本当にありがたい……✨
拝殿で二礼二拍手一礼。
菊「えびす大神さま! こんにちはー!」
えびす大神(以下:え)「やあ。元気か? お参りありがとね」
菊「お留守番、ありがとうございます!」
え「たくさんの人が留守神のことを紹介してくれたりして、
お留守番ありがとうございます! ってお参りされると、やっぱり嬉しくなるね♪」
菊「嬉しいんですか? やっぱり」
え「そらそうやんー。ほんまはいてんのにさ、神無月で神様いてへんとか言われたら
おいおい、ここおるって! ってなるやん?(笑)」
菊「(笑)確かに! そうですよね」
え「信じてくれる ”人” がいてこその "神" ってとこもあるからね」
え「同じえびす神やけど、名前に使われる漢字にも違いが出てたりする。
僕は……平仮名になってるからな。
名前ってさ、結構……縛られるっていうかさ。
……その通りになったり……なってたりするやん」
菊「……………」
えびす大神はふと笑った。
え「でもな。それも神の仕事やねん。
そういう役割も、神の仕事やから。
そんなん、神は分かってんねん。でもさ、できればそれ……
知っといてほしいよね。そこかな」
涙目。
え「……泣かしてもうたな。ごめんな。
図書館行ってみ。僕の本、すごいの置いてあるで。
きっとお菊ちゃんの役に立つわ」
「えびす」という名前。
えべっさんって、いつも親しみ全開で呼んでるけど。
そこには、その神によって様々な暗号が込められているのを知った。