まずは、8月後半から課題としていた古い文字板の再生については、色々と試行錯誤を繰り返していましたが、限界はあるもの一定の方向が見えてきました。
この金筋の精工舎の時計は、一度紙文字板で再生していたのですが、再度やり直しました。古いペイント文字板には、独特のつや消しのテカリがあるので、その雰囲気に近いものができればとの思いでした。
文字板の再生がようやく落ち着きましたので、次は進んでいなかった、蓄音器の修理をする事にしました。
コロムビアの昭和初期の蓄音器No.460グラフォノーラを入手しましたので、こちらをオーバーホールしました。
ゼンマイ切れはないようですが、表のサランネットが劣化して殆どありません。また、天板の塗装剥げが痛々しい状態です。
まずは、機械のオーバーホールをしました。
一通り部品をチェックしました。動かずに放置された期間が長かったようで、歯車の溝にも油が固まって硬くなっていました。
2丁ゼンマイで、幸いにもゼンマイは切れていませんでしたので、少し安堵しました。
香箱にオイルを塗布して組み上げました。
回転はスムーズに雑音は最小に、軸受を調整しました。ここで音が小さいと思っても、箱に入れると振動が板で増幅されて強調されますので、調整は難儀です。
箱に機械を組み込む前に、破れたサランネットの交換をしました。古い布の方が合うのですが、ここは在庫の音響用のネットを使っています。
ただ、上蓋の開閉をスムーズにする金具が壊れていて、上にあげた蓋が止まりません。
どうもこの蓄音器はこの部品が致命的で、使いたくても使えずに放置されたようです。
誤って油をさして厚紙がふやけて外れたんだと思います。
色々と調整の手を尽くしてみましたが、直らず、やむなく手持ちの部品がありましたので交換しました。
蓋も止まりましたので、回転の調整も行いました。
作業は、小さくて転がって無くすと大変です。
こちらも組み上げて、音の調整をしました。
実際のレコードを聴きながら、高音や低音、解像度の具合をビスの締め具合で調整するんですが、ここはいつも手探り、難しい調整です。
音の方はなんとか調整ができましたが、ここで問題が発覚。オートストッパーの部品もダメになっていました。
こちらにも油をさして、紙の摩擦具合をダメにしているようです。
残念ながらこちらも部品を交換しました。
写真は交換前の部品ですが、曲げて調整しようとした跡があります。
なんとか稼働の部分は仕上がりました。
偶然ですが、デッカのSP盤は、キツめに溝が彫られているので、音の調整ではこれでビビリがでなければOKです。グレンミラー楽団のタキシードジャンクションを聴いてみました。
増幅部は木製の容量大きいシングルホーンです。金属ホーンではありませんが、ラッパの音が良く出ます。他にもコロムビアの卓上蓄音器をメンテナンスしてきましたが、このホーンの音質が厚みとツヤがあって仕上がりがいい印象を受けました。
あとは、天板の劣化の課題です。
天板の塗装を全て剥がしました。その上で緑が強いオークで下地を染めたのですが、まだ色味がオリーブ色が強いので、セラックニスがそのまま使えません。色味の調整もあるので、塗料待ちの状況です。
次は、同じくコロムビアNo.203です。
こちらも、ゼンマイが入手できましたので、オーバーホールしました。
次は、No.15のサウンドボックスのオーバーホールです。
ここまで破れた振動板はビビリの原因になりますので使えません。純正ではありませんが、新しいダイヤフラムに交換しました。
盤が擦り切れていますので、少し解像度が落ちて音が潰れた感じに聞こえますが、手前味噌ですが迫力ある音に仕上がりました。
箱の傷などのメンテナンスが残っていますが、完成までも少しといった所です。
まだまだエンドの切れたゼンマイの蓄音器などがありますが、時計修理の合間を見ながら、修理していきたいと思います。
蓄音器は、針が箱の中に大量の落ちていますし、いろんな悪さをします。
時計より触って酷使されていますので、その分不具合も多い印象です。今回も2台が部品取りに回りましたので、1台仕上げるのにもう1台が犠牲になる蓄音器修理の宿命を感じています。