まずは、フランスのDEP社の小ぶりなトラベル時計です。以前ブログでご紹介した斬新な文字板が目を引く時計ですが、ゼンマイを巻く芯が折れていて、ネジの溝を切るダイスを用意し切り直したのはいいのですが、巻く方向に対して逆で、巻くたびにネジが緩んで使い物になりません。そのまま、お蔵入りとなっていました。
意を決して、時計旋盤を入手しました。アメリカ製で台数も多く出回るマーシャル・ピアレスの8mm旋盤です。手元の拡大はデジタル顕微鏡を用意して老眼対策。削るための道具は、ハイスの完成バイトを研いで作成。しばらくは加工の練習が続きました。
下が折れた巻き芯で、上は試作中の失敗したものです。
手間はかかりますが、部品全体を旋盤で削り出す必要があります。
4mmの真鍮棒から、同じ寸法に削っていきました。慣れないと綺麗な線を出すのが難しいですね。
ずっと懸案になっていた時計ですが、時間はかかりましたが、なんとか実用レベルに戻せて安堵しました。
次は、昭和初期頃の愛知時計です。
面取りガラスを組み合わせた、振り子室のデザインが美しい時計ですが、残念ながら頭の部分が欠損しています。
別に修復不能な愛知時計がありましたので、部材はその時計の側板から取る事にしました。
曲線は、倉庫から電動糸鋸を出して、ニワカ日曜日大工です。
木の飾りですが、オリジナルは大きめのものが使われていたようですが、他のデザインも参考にして今回はおとなしくオシャレな雰囲気のものにする事にしました。
お湯丸で型取りをして、レジンで複製しました。
機械は、ゼンマイのコハゼの先が折れていて、加工して止まるには止まりますが、歯も傷めているようです。これはいずれ破損の原因となりますので、部品はそっくり同じ愛知時計の部品と交換しました。(右を左に交換)
機械はオーバーホールして、ゼンマイの清掃、油引き、部品の洗浄、ホゾの詰め、振りの調整など、一通りのメンテナンスをして、無事復活しました。なかなかのべっぴんさんに戻りました。
型取りするにも、手元にオリジナルはないので、木を削って作る事にしました。
プロクソンの木工旋盤です。大きなものの加工はできませんが、小さいものなら加工できます。
色味を合わせるのが一番苦労します。
程よいつや消し具合が出ればOKです。
スリムロングなデザインで、振り子も長いので、ゆったり動きます。
当時の機械式時計は、職人さんがそれぞれ分業しながら、一台一台個性や表情ある時計を作っていたんですね。細かい加工や細工が施されていて、とても魅力があります。