クーラーの中ですが、いつもの月より、修理のペースが落ちています。
作業でこれまでの色んな課題も見えてきました。それを少しずつですが、改善しています。
不動との事ですが、分解して様子を見ると、機械は懐中時計と同じような雰囲気です。
メインスプリングが折れて、ゼンマイが滑って巻けない状況です。
ゼンマイの入った香箱を取り出すのに、コハゼを緩めて力を解放させてから分解しました。
先端や末端でしたら、元のゼンマイは活かせるのですが、この位置は、ゼンマイを継ぐしかありませんが、狭い香箱に収めるゼンマイの継ぎは不向きですので、別に交換のゼンマイを探しました。
長さの全部を収めると、窮屈でゼンマイを巻く回数が少なくて使えません。
程よい長さで切る必要があります。
左よりも3巻くらい多めの位置で切断して、末端の加工をする事にしました。
焼き鈍して、折り曲げて「く」の字にします。
折り曲げも、ゼンマイの厚み1枚分浮かせて、ヘアピンのような、丸さを残して加工しないと、曲げた場所からすぐ折れてしまうんです。
なんとか無事加工ができました。
テンプもゼンマイが復活して無事稼働を始めました。これで一安心と思ったのですが、慣らしの稼働で分かったのですが24時間持たない。
20時間位で息が切れて遅れる状態です。さらにゼンマイが巻けるように短くして、上手く行くか、ゼンマイの種類が異なると反発力や厚み、長さのバランスが異なるのでこういう事が起こります。
これまでの作業が徒労になって残念ですが、深追いは避けてしばらく様子を見ることにしました。
次は、昭和30年代の精工舎の本打ち掛時計です。
いつものように、劣化した塗装を全て剥いだ上で、原盤から起こしたシートを貼って修復しています。
精工舎の本打ち時計は、ボン打ちの動きが繊細で、バネの具合や注油で変化します。
動きを良く見ると、定時で跳ねるアゲカマの部品が浮き過ぎていて、0時の位置で効いていませんでした。下げすぎると地板を擦るので良くありませんし、部品が薄いので微妙な調整です。
無事調整も完了して不具合は解消されました。
さらに、戦後と思われる、トーマス型の丸時計をレストア・オーバーホールしました。
文字板を外して試しに全体を濡らして、漂白をかけてみましたが、日焼けと化学変化が起こったものは無理でした。
文字板は、これまで紙でコピーしたものを、ホワイト液で修正して、A2の大きさに再コピーして文字板に使っていたんですが、再コピーは際がぼやける傾向があって、課題でした。
端は切れますがA3でギリギリ、原盤のデータがコンビニ等のコピー機でスキャン保存できます。
今回は、これを補正・修正して、デジタルコピーのサービス店で、出力する方法をとりました。
コピー紙のままでは、綺麗過ぎて違和感がありますので、色褪せ加工をして板に貼っています。
一度目は、糊を塗る際の刷毛の毛が糊に残っていて、紙を貼って、凹凸に気がつきました。
トホホですが、ここは、勿体ないですがやり直ししています。
続いて、機械のオーバーホールです。
組み上げて慣らしの運転をしましたが、振り子が角度によって底に引っかかる癖がある事がわかりました。
あと、掛時計は、正午ぴったりでボン打ちせずに、プラスマイナス1分くらいずれる事が良くあります。
本打ちの時計は、殆どずれる事はないのですが、数取り式の古い時計は、長針の遊び具合とアゲカマの角度でずれるので、針を修正するか、カマの角度を変えるかして調整する必要があります。(文字板をずらす方法もありますが…。穴がずれるので、あまりしたくない。)
歯車にも遊びがあるので、きっちり合わせるのはなかなか難しく、プラスマイナス30秒でよしとしています。
このほか、部材の経年劣化で外れたものを膠で補修しています。
お盆の時期は、お参りもあり作業が進みませんが、古い八角時計を2台メンテナンスしました。
1台目は、アメリカアンソニア製のものです。
機械は、アンソニア式のものですが、箱はラベルがなく、和製の箱に収められています。当時は、機械をアメリカから輸入して、和製の箱に組んで舶来時計として売ったようで、文字板にも振り子室にもマークやラベルがありません。
機械も状態は良く、オーバーホールしました。
さらにもう一台は、精工舎の漆塗八角時計です。
再度、一から分解して再調整しました。
これは、リューターで削って、砥石で磨いて綺麗に均しました。
原因がこれだったのか、確証はありませんが、ガンギ車の抜けが阻害されて、アンクルに引っかかる原因も考えられます。
組み上げて慣らし稼働でも問題なく、快調に動いており、不具合は出なくなりました。
さらに、文字盤は、貼り紙ではなく、当時の雰囲気の塗装文字板になんとか再生はできないものかと、試行する事にしました。
別の塗装剥離と修正跡のある文字板でテストする事にしました。
これまでは、傷や汚れは消しゴムで消して消すだけでよかったのですが、今回は、経年劣化で出るヘアクラックや薄い汚れを残しながら、剥離した部分を新しく白で塗り潰し、ヘアクラックもそれらしく復元するという作業で原盤を作成しました。
当時の文字板はトタン板に塗装し、これに手書きや印判でローマ数字を書いたものと思われます。
亜鉛を含んだジンクホワイトの下地に黒で文字を書いたと思われるのですが、シートを貼るのと手書きでは、違いがあって限界があります。