『フライト』 | やりすぎ限界映画入門

やりすぎ限界映画入門

ダイナマイト・ボンバー・ギャル @ パスタ功次郎

■「やりすぎ限界映画工房」
■「自称 “本物” のエド・ウッド」


■『フライト』
やりすぎ限界映画:☆☆☆☆★★★[95]

2012年/アメリカ映画/138分
監督:ロバート・ゼメキス
出演:デンゼル・ワシントン/ナディーン・ヴェラスケス/ケリー・ライリー/ジョン・グッドマン

2013年 第29回 やりすぎ限界映画祭
2013年 ベスト10 第7位:『フライト』
やりすぎ限界男優賞/やりすぎ限界女優賞/やりすぎ限界監督賞/やりすぎ限界脚本賞:『フライト』


[ネタバレ注意!]※見終わった人が読んで下さい。



やりすぎ限界男優賞:デンゼル・ワシントン


やりすぎ限界女優賞:ナディーン・ヴェラスケス


やりすぎ限界女優賞:ケリー・ライリー


■第4稿 2019年 4月26日 版

[極限のくそリアリズム「全部作り話」]



実話に見えたが「全部作り話」だった。恐るべき極限のくそリアリズムに震撼した。

[「失敗しない人間」はこの世に一人もいない]



「失敗しない人間」はこの世に一人もいない。どんなに頭が良くても、どんなに身体能力が優れてても、風邪で熱が出ただけで人間は正確な行動や判断ができなくなる。この世の全ての人間が、絶対失敗することを避けられない運命を背負ってる。「人間の評価」は失敗をした後、何をもってその失敗を補うかで決まるのだと思う。



ウィップ・ウィトカー機長(デンゼル・ワシントン)は「薬物依存症」で「アル中」。墜落事故の朝も恋人のトリーナ・マルケス(ナディーン・ヴェラスケス)と「覚醒剤」と「酒」を「普段通り」決めた。さらにウィトカーは飛行中も「酒」を飲む。だが “ねじジャッキ” の故障で突然墜落事故が起きる。ウィトカーは奇跡の操縦で不時着に成功。乗客乗員102人のうち96人の命を救った。だがトリーナを含む6人が死亡。墜落原因の調査が始まる。

[嘘を吐く「苦しみ」]



ウィトカーが嘘を吐けば航空会社の倒産を防げる。「自分が汚れる」ことで遺族への賠償金の支払いは消滅し、航空会社に勤める従業員の解雇を防げる。「航空会社の恨みを買わず自分の身を守れる」。また6人を死亡させたが96人の命を救ったことで、ウィトカーは「英雄」になれる。



だがその「代償」は結婚を考えてた恋人を「自分の身代わりの犯人」にする「悪人」になる。たとえ「英雄」となっても、「いつ嘘がバレるか?」という恐怖に死ぬまで怯えて生きる。トリーナを含む6人の幽霊を見るかもしれない。80歳まで生きるこの先の人生で「恋人を犯人にでっち上げた」「罪」を「生涯」背負って生きねばならない。気が狂うかもしれない。

[正直に告白する「苦しみ」]



ウィトカーが正直に告白すれば航空会社は倒産。「自分がきれいになる」ことで遺族への賠償金の支払いが確定し、航空会社に勤める従業員は解雇される。「航空会社の恨みを買い殺される危険性がある」。また96人の命を救ったことも疑われ、6人を死亡させた「殺人犯」になる。



だがその「代償」は「死刑」の覚悟と6人への謝罪を決断した「善人」となる。たとえ「殺人犯」となっても、「死んだ恋人を本当に愛した証拠」と、「死」を覚悟しても「自分の間違いを認める」=「罪を償う」=「失敗を補う」正しい行動から、「反省」と「勇気」を世に証明できる。「いつ嘘がバレるか?」という恐怖に怯えて生きずに済む。

だが「殺人犯」となれば懲役何年なのか? 「死刑」かもしれない。生涯好きなものも食べれなければセックスもできない。また「罪は消えない」のでトリーナを含む6人の幽霊も消えない。さらに怨みを持つ失業者達に殺される危険性もある。やはり気が狂うかもしれない。

[「もし自分がウィトカー機長だったら?」]



「もし自分がウィトカー機長だったら?」 「自殺」を考えるだろう。「自殺」を考えたことが「死刑」の覚悟かもしれない。



「もう自分に生きる資格はない」までの覚悟に見えた。航空会社の従業員を解雇させた「罪」の自覚。英雄となって、「いつ嘘がバレるか?」という恐怖に死ぬまで耐え切れるほど僕の精神力も強くない。だが自分が「悪人」となって気が狂うことで、従業員の解雇を防ぐことも考えた。だが「嘘を吐く」なら絶対「自殺」は許されない。「自殺」した時点で嘘がバレ、結局解雇は防げない。また「自殺」以前に気が狂って違う事故を起こすかもしれない。「平然と仕事を続ける」嘘を吐き通せる自信はない。おしっこ垂れ流し状態まで追い込まれた。

[「自由になった」]



■「自由になった」

ウィトカー機長の「判決」は描かれない。「死刑」か「無期懲役」か。“ねじジャッキ” 故障の証拠と、「シミュレーター」で一人も成功できなかった奇跡の操縦「96人の命を救った行動」が考慮され「懲役」で済んだのかもしれない。だが「飛行免許」取り消し。「再就職」の可能性の有無。現実ならたとえ「懲役」でもまた「自殺」を考えるしかないほどの「苦しみ」しかない。だがウィトカーは自分が「自由になった」と言う。

この世の全ての人間が、絶対失敗することを避けられない運命を背負ってる。「人間の評価」は失敗をした後、何をもってその失敗を補うかで決まる。ウィトカーの「恐怖」を消したのは「死」を覚悟した「自分の間違いを認める」=「罪を償う」=「失敗を補う」正しい行動だった。「いつ嘘がバレるか?」という恐怖から「自由になった」のだ。『フライト』は「嘘を吐く」「苦しみ」を思い知らせた。




画像 2016年 1月