「3000人の吹奏楽」ファイナルの開催直前に、こっそりとこんな動画がアップされました。
2017年の「3000人の吹奏楽」の本番前、リハーサルの動画です。「ぎんとろ」さん撮影です。
過去に遡ってもリハーサルの動画は見たことがありません。非常にレアな動画ですね。京都橘のメンバーは、何の問題もなく出来上がっています。ここでは、現場スタッフの段取りと、コーチによる細かな立ち位置の調整があるくらいです。パフォーマンスの終わりに歓声が上がるのが痛快ですね。観客はほとんどいないので、他の参加団体からの歓声だと思われます。
さて、京都橘を卒業したメンバーが中心になって発足されたO-vils.には、ここでパフォーマンスしているメンバーがたくさん参加しています。パーカッション・パートの、この3人もメンバーです。
京都橘の部員については、ニックネームを含めて名前を特定しないように心掛けています。けれども、この3人は現在一応「プロ」として活動していますので、登録名で記述したいと思います。メイン・ドラムの「こまれ」にマルチタムの「ちっぴ」。右側でバスドラムを引っ叩いているのが「ルイ」。「ルイ」は、「Sing,Sing,Sing」でのバスドラムのカッコ良さに憧れて京都橘に入ったという変わり種です。
3人が所属している114期は、その上の113期にパーカッションがいなかった為に、2年生の時から「橘グルーヴ」の中心として重責を担っていました。
で、今回の記事は、「こまれ」と「ちっぴ」のコンビに焦点を当てて書いていきます。
まずは、彼女たちが2年生の時。1、2年生だけのパーカッション・パートがバンド全体をしっかり支えているのが良くわかる動画です。「大江山酒呑童子祭り2016」から、後方映像にこまれのドラムをインサートした動画を撮影・編集したのは、Schneider883さんです。
「こまれ」のドラムの音が一番大きく収録されていて、この時点での彼女のスキルを知るには絶好の動画です。パワフルさには欠けるものの、既にリズム・キープにおいては歴代でもトップクラスであることがわかります。ここから、更にグレードアップしていく姿を見ていくことができるのは、ファンとしては幸せです。「ちっぴ」とのコンビネーションも既に出来上がっていますね。
そして3年生になった彼女たちは、京都橘の「伝説」のひとつになっていくのです。その第一歩とも言えるイヴェントが、奈良公園で開催された「ムジーク・プラッツ2017」でした。Marschtanz63さん撮影の動画をどうぞ。
会場の都合だと思うのですが、高い場所からの動画がないので美しいステップを見ることが難しいです。それだけが残念ですねー。
京都橘らしい華麗なパフォーマンスを期待する観客への1曲目は、肩透かしを狙ったような「It's A Small World」です。イントロではリズム楽器が入りません。パーカッション・セクションでは、鉄琴がメロディを奏でているだけです。「こまれ」の控えめなスネアのリズムと撫でるような大太鼓でワンコーラスを終えます。この間、一発目のシンバルを叩きたくてウズウズしている「ちっぴ」の様子には、思わず笑ってしまいます。待ってる間も笑顔でリズムを取っていて、全身で音楽を楽しんでいる様子が伝わります。そして待ちに待ったシンバルのフォルティッシモ。走り出すリズムは、彼女の個性です。先を急ぎがちな「ちっぴ」は自分のことをよくわかっているようで、「こまれ」の正確なリズム・キープに合わせて早る気持ちを抑えているようです。この二人のリズムのノリの違いが、絶妙なグルーヴを生み出す原動力になっていると思うのです。
また、ここで注目してもらいたいのは、たった二人しかいないスーザフォンです。音もクリアに聞こえるし、パーカッション・パートと共にしっかりリズムを支えています。私が京都橘のスーザ隊から耳も目も離せないのは、こんな風に陰ながらちゃんと自己主張をしているところなのです。実に魅力的です。
続く「Mambo Jambo」では、タイトなリズムの中で「ちっぴ」の派手なティンバレスのフィルインを楽しめます。彼女はラテン楽器の専門家ではないと思うんですが、実に効果的に聞かせてくれます。まるで「ティンバレスは、こうでなくっちゃ!」というのを身体でわかっているかのようなプレイです。
その後も「ちっぴ」はヴィブラフォンからスタンド・シンバルと、その曲の肝になる楽器を担当します。彼女が人気になるのは、こうした派手な活躍のせいもあると思います。笑顔を含めて全身で楽しさを表現できるのは、天性のものかもしれません。
「こまれ」はプレイ中は常に微笑みを絶やさずに、リズム・キープに徹しています。「ちっぴ」を先頭に各プレイヤーが自由に表現できるように支えている、「菩薩」のような立場にあるように思えます。そんな彼女と「ちっぴ」の絆を感じるのは、ラストの「Sing,Sing,Sing」です。ドラムとマルチタムのシンクロ具合は、奇跡的な美しさです。二人がプレイ中に視線を交わすことはほとんどありません。その必要がないくらいに綿密な練習とリハーサルを繰り返して、信頼関係を築き上げているのだと思います。
そういえば、このイヴェントのリハーサルにおいて「ちっぴ」による「スティックヘシ折り」事件がありましたね。もはや「伝説」になっていますが、その動画も紹介しておきましょう。「うつみこ」さん撮影です。「その」瞬間からご覧ください。
「ちっぴ」は、一瞬フリーズ。気を取り直して、右手の一本で叩き続けます。2年生がスペアを用意して、何事もなかったかのように演奏を終えます。彼女を囲むメンバーは、笑ってはいるものの全く慌てていません。きっと「あ〜、またやったのね。」ぐらいのレベルなんでしょうね。
一般のファンが見ることができないところで「こまれ」と「ちっぴ」がどれだけ練習を積み重ねているかを、結果で見ることができる動画があります。
それが、「ジョイント・コンサートシリーズ」です。
「ジョイント・コンサートシリーズ」は、かなり昔から開催されていたようですが、正確なところはわかりません。動画で見ることができるのは、2013年からです。このシリーズは、土日の練習で京都橘のフェスティバル・ホールを利用できることになったことから、近隣の中学校を招待して各校それぞれの演奏や共演を楽しむことになった企画です。これは、多くの本番をこなすことが最高の練習だという当時の顧問の信念を実現した上に、新入部員獲得のキッカケにもなった企画でした。中でも、2016年と2017年には数多くの動画が撮影されています。その中から、「Sing,Sing,Sing」のフィルインの変化を、2017年の「慶次郎前田」さんの動画で比較して見ましょう。
まずは、5月4日の演奏です。ポイントになるところからです。
実に美しく揃っています。
ただ、より良いものにしていこうという思いで、二人で試行錯誤したのでしょう。大きく変化した様子は2ヶ月後の7月の動画で見ることができますが、より分かり易い10月1日の動画をご覧ください。同じポイントからです。
シンコペーションの位置も変化して、大きく印象が変わっています。これはアドリブではなく、二人で綿密に作り上げた結果です。
京都橘では、歴代個性的で素晴らしいドラマーが何人も存在しています。けれども、コンビネーションで強烈なグルーヴを作り出したケースは、「こまれ」と「ちっぴ」が初めてでしょう。現在のドラマーが曲毎に入れ替わるやり方では、こんな濃密なグルーヴが出来上がるのは望むべくもありません。残念です。
さて、ドラム以外の全てのパーカッションをこなしていた「ちっぴ」が、メインのドラムを叩いている唯一の動画が「ジョイント・コンサートシリーズ」には存在します。「こまれ」がお休みだったためのピンチヒッターだったと思われますが、最初からトラブルでした。Marschtanz63さん撮影です。
ドラムのセッティングがまだ完了していないのに、演奏がスタートします。
ここでは、大太鼓の「ルイ」が献身的なサポートを見せてくれます。彼女自身もドラムを演奏できるからこその的確なサポートです。京都橘の得意技「なんとかする」の、ひとつの例としても貴重な動画です。「こまれ」と「ちっぴ」のプレイ・スタイルの違いも楽しめます。
「Sing,Sing,Sing」で大太鼓を引っ叩いていた「ルイ」の別の顔を見ることができる動画をご覧ください。yasuky mark3さん撮影の「ジョイント・コンサートシリーズ」の座奏から、「メリーゴーランド」です。