119期の一年を振り返る。〜前編 | "楽音楽"の日々

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音楽、映画を中心にしたエンタテインメント全般についての思い入れと、日々の雑感を綴っていきます。

京都橘高校吹奏楽部の定期演奏会のプログラムに、「1年間のあゆみスゴロク」というものがありました。

 

 

よ〜く見てみると、もの凄いスケジュール。

ファンなら知っている数々のイヴェントも多いけど、それ以外のメディア取材や来客対応の数が売れっ子芸能人並み。羨ましく思っているプロの方々もたくさんいらっしゃることでしょう。

 

ということで、このスゴロクを参考にしながら、私なりの視点で119期のこの一年を振り返ってみたいと思います。

 

 

まずは、5月8日に大阪の万博公園で開催された毎年恒例のイヴェント「ブラスエキスポ」です。関西圏の吹奏楽部が一堂に会する大規模なイヴェントですが、私にとっては京都橘のその年度のパレードのプログラムを知る重要な機会なのです。

メインのパレードに先立って、各地区がそれぞれのエリアに集合していろいろな催しを行います。京都府では、伝統的に交換コンサートを開いています。今回京都橘は2曲を披露したのですが、例年と比較しても完成度は高かったように思います。ただ、「Winter Games」から「Sing, Sing, Sing」に移る時に、ドラムスが交替したことに違和感を覚えたのでした。「今年度は、ドラマーが交替するシステムにするのか?」「メイン・ドラマーが、まだ決定していないのか?」非常に多くのイヴェントでパフォーマンスをした一年でしたが、メイン・ドラマーが不在であることは私にはどうしても納得できませんでした。

交替する様子がよくわかる動画をご覧ください。

 

 

そして、メインのパレードです。4月に入部したばかりの1年生にとって、パレード・デビューになります。演奏するプログラムの譜面を覚えるだけでも大変なのに、それまで経験したことのないヴァラエティに富んだ振り付けも覚えなきゃならないなんて・・・。新入生にとっては、最初の大きなハードルなんだと思います。

慶次郎前田さんの、素晴らしい撮影でご覧ください。

 

 

パレードのコースは2種類あるらしいのですが、こちらのコースの方が景色のヴァリエーションがあって楽しい気がします。

演奏も荒っぽいしステップも揃っていません。けれども、複雑な振り付けはほぼ完成されています。年間通して、振り付けは基本的に変わっていません。1年生にとっては大きなチャレンジですが特にサンバ・ステップが難関のようで、うまく出来ていない部員がたくさんいます。毎年のことですが、そのことで1年生だとわかります。とても微笑ましくて、応援しようという気持ちにさせてくれます。

私にとって一番衝撃的だったのが、ついに「ディズニー・メドレー」をやめたことでした。ファンの間で人気の高い「ディズニー・メドレー」は、私ももちろん好きです。既成の「ディズニー・メドレー」を使うのではなく様々な譜面を組み合わせて構成される京都橘オリジナルのメドレーは、毎年の楽しみでした。ただ、「ディズニー縛り」での選曲は新鮮さを出すのが大変だったんだろうなぁと想像できます。その枠を取っ払ってあらゆるジャンルから「橘らしさ」を発揮できる曲を選んだことで、表現の世界観が大きく広がったように感じます。私が最も意欲的だと思ったのが、「The Pink Panther Theme」でした。座奏ならともかく、パレードで使うなんて予想の斜め上を行ってます。また、マーチング・ステージでは得意にしている学校が多い「Copacabana」をサンバのナンバーに選んで橘にしかできないパフォーマンスに仕上げているのは、ライバル・チームに対しての挑戦状のようにも思えてなかなか痛快です。

 

 

5月28日には、小学生向けのオープン・キャンパス「ドリームスクール」が開催されました。入場者が限定的なので今回は動画はアップされないのかな?と思ってたところに、ファンの間ではお馴染みのDiablo de Orangeさんが投稿してくれました。

 

 

この方の長女が今年は悪魔の一員になるという情報もあって、こちらも楽しみです。

 

 

6月15日には、テレビ番組「ブカピ」の撮影が行われました。ネットには6月28日と7月5日にアップされています。

 

 

 

京都橘の練習の様子は随分昔にテレビなどで紹介されていますが、近年のものはこれまで表に出ることはありませんでした。現在の様子を知ることができる貴重な動画ですね。なえなのちゃん、オレンジのユニフォーム似合ってる。ワタクシ、密かに個性的な彼女のファンであります。

 

 

サッカーやバレーボールの強豪校として知られている京都橘。その応援で吹奏楽部が演奏している姿は、いくつも動画があります。野球部のない京都橘ならではの「友情応援」という形でその姿を見ることができたのが、7月23日に行われた京都大会での京都国際高校を応援する演奏でした。

 

 

戦況に応じて指示を出す先生。それを受けて瞬時に指示を出す学生指揮者。レアなキャップ姿も含めて、臨機応変な京都橘の反応を楽しめる動画になっています。

 

 

応援以外では、私の記憶する限り初めての東京でのパフォーマンス(2018年の「楽器フェア」は、千葉でしたねー。)は、7月31日の「とうきょう総文」での丸の内パレードでした。とても暑い日で大変だったはずですが、なかなか見事なパフォーマンスでした。背の高いビルと緑の街路樹は、橘の美しさを引き立ててくれます。

独自の動画で京都橘の魅力を発信してくれているMomoyama Orangeさんの動画は、公式配信の映像をミックスして見応えのあるものになっています。

 

 

時期的に、一ヶ月後のマーチング・コンテストを控えて、後半が完成していないのか?はたまた手の内を見せたくないのか?ここでは、前半の外周回りから定番の「Sing, Sing, Sing」へと繋いでいます。

 

 

東京遠征から一週間後の8月9日、吹奏楽コンクールの京都大会(座奏ですね。)に参加して、見事金賞を獲得しています。いったい、いつ練習したの?

 

 

さらに、東京遠征から半月も経たないうちに、今度は長崎遠征です。

8月13日には、「長崎国際音楽フェスティバル2022」に参加します。これは非公開のイヴェントですが、事前に演奏曲のリストが公開されました。これまで聴いたことのないラインナップだったので、これは聴いてみたいと思ったのでした。それらについては、翌日のハウステンボスでほとんどの曲がお披露目されたのでした。

で、翌日8月14日、気温33度の中で開催されたのが「ハウステンボス ブラスバンドフェスティバル」です。

st.taketoさん撮影のパレードの様子をご覧ください。

 

 

暑さのせいで演奏の精度は高くありませんが、重要なのはそのロケーションです。京都橘のパフォーマンスは毎年恒例の「ブルーメの丘」でもわかるように、橘に似合うロケーションがあると更にその魅力を増幅します。日本とは思えないハウステンボスの街並みは、京都橘にぴったりです。洋風の建物や運河、そこに架かるアーチ状の橋。今までの橘のパフォーマンスにはなかった風景が、とても心地良いです。

そして、レトロな雰囲気満点の広場でのマーチングステージです。この年度初めてのマーチング・ドリルです。初めて聴く曲も結構あって、20分弱のステージでも存分に楽しめました。残念ながら、高温のせいで音が目立つ木琴や鉄琴の音程が下がってしまっていて、全体の音に大きく影響を与えていました。パーカッション・メインの別動画を見ると、その様子がよくわかります。ここでは、見応えのある慶次郎前田さんの動画をどうぞ。

 

 

マーチング・ステージとしては、今年度初の舞台。初めましての曲もあって、とても楽しめました。

まずは、22年の定期演奏会で聞いて以来私のお気に入りの「Hey Pachuco!」です。これは、Royal Crown Revueというバンドの曲で、1994年公開のJim Carrey主演の映画「マスク」の中で、ヒロインCameron Diazとのダンス・シーンで使われました。

 

 

キャバレー音楽のようなムードは、京都橘が得意とするところですね。橘の演奏で、イントロでのトランペット・ソロのダーティーな音は、「フラッター」や「グロウル」と呼ばれるジャズで多く使われる特殊奏法です。巻き舌を使うことと喉を使うことの奏法の違いはありますが、出てくる音はほぼ同じ感じになります。中高生の吹奏楽ではほとんど聞いたことはありませんが、京都橘では昔から「Sing, Sing, Sing」の中で頻繁に使っています。橘の伝統のひとつですね。

私が驚いたのが、ジャズのスタンダード・ナンバー「Round Midnight」です。吹奏楽の譜面があるなんて全く知らなかったので、嬉しい驚きでした。これは、顧問の選曲なのでしょうか?ジャズ独特のハーモニーの美しさを部員に理解させるには、絶好の曲だと思います。調べてみると、真島俊夫氏の編曲でした。実に美しくドラマティックなアレンジになっています。

 

 

今回の橘の演奏は、この譜面の半分ほどしか使っていません。ただ、やはり高校生にとってはハードルが高いようで、残念ながら今年度中に「完成」というレベルにはならなかった気がします。

 

もうひとつ、このステージの動画で書いておきたいことは、バナー(KYOTO TACHIBANAの名前が書いてある旗ですね。)担当のメンバーです。京都橘では、毎年1年生がこのバナーを担当することになっているようです。パレードにおける「京都橘の顔」として毎年素敵なプレゼンテーションをしてくれるのですが、今年度の担当は特に素晴らしいです。二人の身長差がかなりあるんですが、背の高い方の部員がちゃんと高さを調整しています。観客への笑顔とアピールも文句なし。ステージのプログラムが終わって、パレードで退出する時の様子を見返してみてください。観客へ手を振ったり、コーチとの談笑の場面でも良好な関係性が見て取れます。この二人は、新年度からバンドの中で重要な役割を担うことになるのでしょう。期待したいですね。

 

台湾遠征の予定がアナウンスされたのは、このイヴェントの後でした。なるほど、台湾での公演のプログラム作りのために、いろいろな曲を試している時期だったんですね。マーチング・コンテストを控えているこの時期にこんなことまでやってるなんて、本当に頭が下がります。

 

 

さて、京都府マーチング・コンテストで金賞を獲得した翌日、9月12日にはローズパレードの会長の訪問を受けます。会長は、ひょっとしたらコンテストもご覧になったのかもしれません。

その時の動画は、119期の一年の動画の中で、私個人的に最も美しいものだと思っています。

 

 

オレンジのユニフォームもなく、素晴らしいフォーメーションを見せるでもなく、演奏のみで涙させるという現在の京都橘の実力を感じさせる動画だと思います。2025年に出場予定のローズパレードでは会長は交代しているはず(1年任期らしいです。)ですが、主催者からの期待も高まると思います。

 

 

ということで、今回はここまで。怒涛の後半は、また次回に。