ギターで「歌う」ということ。 | "楽音楽"の日々

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音楽、映画を中心にしたエンタテインメント全般についての思い入れと、日々の雑感を綴っていきます。

Jeff Beckが、10日に突然亡くなりました。

 

昨年もライヴの様子が動画サイトに上がっていたので、「相変わらず、元気だなぁ。」と思っていたのです。ですから、本当に驚きました。自分でも驚くほど、ショックを受けています。

 

 

私は過去にギターを弾いていましたが、もっぱらフォーク・ギターでコードをストロークする程度でした。エレクトリック・ギターでソロを弾いたこともなく、テクニックについて語るべき言葉を持っていません。それでも聴くことは大好きで、お気に入りのギタリストはたくさんいます。

クロスオーヴァー・フュージョンの最初期のギター・ヒーローであるLee RitenourやLarry Carltonに夢中になってる頃、おすすめされたのがJeff Beckでした。当時、ロックのギタリストとして名前は知っていましたが、あまり関心がありませんでした。

おすすめされたのは、1975年にリリースされた「Blow By Blow」です。

 

 

私にとっては、変拍子の「ハード・フュージョン」といった雰囲気で、なかなかカッコ良いなぁ、という印象でした。でも、しっかり聴いてみると繊細で微妙な表現が随所にあって、徐々に愛聴盤になっていったのです。

 

とは言うものの、至って不真面目なファンです。

今、手元にあるアルバムは、こんなもんです。

 
 

もちろん買いたいと思ってる作品はたくさんあるんですが、ついつい後回しになってる状況です。

彼のロック・スターとしての確立期である60年代後半から70年あたりまでの作品は、ギター・フリークだった弟から勧められてひと通り聴きました。好きな曲もありましたが、夢中になるというところまでは至りませんでした。

 

そんな状況が変わってきたのが、1980年代に入ってきてからでした。特に85年リリースの「Flash」は、私にとってのJeffのギター・サウンドの象徴として、今でも思い入れがある作品です。Nile RodgersやArthor Bakerという当時最先端の音を作り出すプロデューサーを迎えて制作されてヒットした作品です。中でも、盟友Rod Stewartをゲストに迎えた「People Get Ready」は、MVとの相乗効果もあって大ヒットしました。

 

 

ヒット・プロデューサーが作り出すサウンドや曲ごとに入るゲスト・ヴォーカリストのお陰で、ヒットする要素満載なのです。けれども、私にとっては、Jeffのギター・サウンドがそれまでとは全く違っているように感じていたのでした。その理由は、随分後になって知ることになります。実は、80年代になってから、Jeffはフィンガー・ピッキングを中心にすることにしていたのです。このことを知った時、思わず納得してしまいました。ピックを使って演奏していて、自分の思いを十分に表現できていないと思って、よりエモーショナルに表現できるフィンガー・ピッキングに転換していたのでした。それが、私の心をギュッと掴んだのでした。

非常にダイナミックで繊細な表現は、数多のギタリスト達とは全く違った世界を作り出しています。

 

「ギターで歌う」とは、ギターを演奏する上でよく言われることですが、人が歌うことのさらにその上を行く表現ができていると、私は感じたのでした。ですから、私は彼の80年代以降のギターが好きなんです。様々なところでゲストとして参加していても、彼の最初の一音でJeffだとわかってしまう個性。特にインターネットのおかげで様々な動画を簡単に観ることができる現在、彼が演奏している姿はどれも「神」です。どれも、見入ってしまいます。

 

 

 

彼の影響を受けているギタリストは全世界に無数にいます。けれども、彼が表現したいと思ってることの後継者はいないんじゃないでしょうか?まぁ、御大が存命中にそれをやると「コピー」だと言われてしまったんでしょうけど・・・。後継者、求むっ!!

 

最も有名な動画、Ronnie Scott'sでの2007年のライヴから、「Cause We're Ended As Lovers」を最後に見てください。

 

 

 

ギターの世界で「神」と呼ばれた男は、天に召されて本当の「神」になりました。

Jeff、沢山の素晴らしい音楽をありがとう。