初!ラロ・シフリン「燃えよドラゴン」 | "楽音楽"の日々

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音楽、映画を中心にしたエンタテインメント全般についての思い入れと、日々の雑感を綴っていきます。

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私が映画に興味を持ち出した中一の頃、「ゴッドファーザー」と共に世間を賑わせた作品が「燃えよドラゴン(Enter The Dragon)」でした。
(とっても!)まじめだった私は、「ゴッドファーザー」は劇場に観に行きましたが、ちょっと不良っぽいと思えた「燃えよドラゴン」はロードショーで観ることはありませんでした。

けれども、リバイバルなのかテレビ放映なのか全く覚えていませんが、中三の頃までにはちゃんと観て、ほとんどの同級生と同じようにブルース・リー(Bruce Lee)の世界にはまっていました。
私の「はまり具合」は、ブルースへの憧れから「静かなる強さ」を目指して少林寺拳法をやろうと思ったのでした。ブルースが始めた「截拳道」という武道のもとになったのが少林寺拳法でした。
道場も近くになかったので(本当は、通う勇気もなかった・・・!)、一冊の本を買いました。
それは、日本の少林寺拳法の代表である宗道臣という人が書いた拳法の入門書でした。自宅でそれを熟読しながら、懸命に練習するニキビ面の少年がそこにいたのでした。

えっと、映画そのものは、大したことはありません。
二流、三流というレベルで、演出にも全く冴えがありません。
ただ、そんなハンディを補って余りあるのがリーのアクションの気迫だったのです。その気迫が、異常ともいえる緊迫感を映画全編にわたって支配しているのでした。
そして、それを増幅してくれたのがラロ・シフリン(Lalo Schifrin)の音楽でした。
私にとってラロ・シフリンとの最初の出会いでした。

アドレナリンがどっと溢れ出てくるようなスリリングな音楽は映像と共に記憶されて、私の中に「ラロ・シフリン」という名前は刺青のように永久に刻まれたのでした。

なんと言ってもテーマ曲のインパクトが強烈でした。
ブルース・リーの「怪鳥音(当時はこう表現されていました。)」と呼ばれる雄叫びと共にスリルあふれる曲は、映画に全く興味のない人にも届くほどにヒットしたのでした。

もちろん、ビデオなんかない時代ですから、サウンドトラック盤を手に入れて貪るように聴いたものです。ブルースの「怪鳥音」に熱くなって・・・!

で、時は流れて1998年のことです。
「燃えよドラゴン」のビデオが「特別編」ということで発売されました。
普通だったら見逃してしまうんですが、そのビデオに付属しているのがリマスタリングされたサウンドトラックの完全版だったのです!
これには、すぐに飛びついてしまいました。
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通常版のサウンドトラックCDは、10曲入りで28分ほどのものなのですが、完全版は17曲入りで57分!しかも、ブルース・リーの「怪鳥音」が入っていない純粋な音楽のみのCDなのです。

詳しいレコーディング・クレジットなどは入ってないんですが、ネットで参加ミュージシャンが判明しました。
ロスを中心に活動しているスタジオ・ミュージシャンが大挙して参加しているんですが、なかでもポイントになるのがクルセイダーズ(The Crusaders)のメンバーです。
ジョー・サンプル(Joe Sample)、スティックス・フーパー(Stix Hooper)、ラリー・カールトン(Larry Carlton)、マックス・ベネット(Max Bennett)の4人が軸になっているようです。
1973年というとクルセイダーズは「The 2nd Crusade」を出した次の年で、名作ライヴ「Scratch」の前年にあたります。このサントラに参加しているのは、その「Scratch」のメンバー4人なんですね。

そんなことを頭において曲を聴いてみると、とても面白いです。
ドラムスとベースは、ひとりずつしかクレジットされていないので、スティックスとマックスのコンビが全面的にリズムを支えているのでしょう。
有名なテーマ曲のブレイクでバタバタとタムを叩いているのは、いかにもスティックスらしいなぁ、とひとり納得してしまいます。

完全版にしか収録されていない「Headset Jazz」は、いかにもクルセイダーズらしい曲で、ジョー・サンプルの短いアドリブも聴けます。

「The Gentle Softness」は、シフリンらしいリリカルなスロー・ナンバーです。
インストゥルメンタル曲をやっているクール・アンド・ザ・ギャング(Cool And The Gang)のメロウなナンバーを連想してしまいました。

他は、アクション映画ですから、パーカッションが活躍する変拍子を多用した曲が多いのですが、「The Big Battle」はハード・フュージョンとも取れるスリリングな曲です。

香港が舞台ですから、東洋風のメロディが随所に出て来ます。そういうものが苦手な人には、CDを一枚通して聴くのはちょっとつらいかもしれませんね。

このサントラを愛聴してシフリンの名前を胸に刻んだ私は、1976年にシフリンのソロ・アルバムがリリースされることを知って、即購入したのでした。
それがCTIレーベルから発売された「Black Widow」でした。まさにそこから私のフュージョン・ライフが始まったのでした。耳に馴染んでいた「スパイ大作戦」のテーマがシフリンの代表作なんてことは、その時にはまだ知りませんでした。

ということで、万人におすすめではありませんが、チャンスがあれば是非聴いてみて下さい。

映画本編で、ブルース・リーが弟子に言うセリフがあります。

「Don't Think. Feeeeeeel!」

私は、音楽に対する姿勢ととらえて肝に命じていましたが、人生全てのことにあてはまりそうな言葉ですね。