【今日の1枚】Atila/Reviure "Revivir"(アッティラ/復活) | 古今東西プログレレビュー垂れ流し

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Atila/Reviure "Revivir"
アッティラ/復活
1977年リリース

痛快なシンセサイザーの導入で
技巧性と抒情性を極めた彼らの最高傑作

 数あるスペインのプログレッシヴロックグループの中でもカルト的な人気を誇る、アッティラのサードアルバム。前作の延長線上にあるサウンドから圧倒的ともいえるシンセサイザーを多用した大作指向となっており、ギターとキーボード、リズムセクションによる密度の高いサイケデリック性の強いスペイシーなプログレッシヴロックとなっている。その奔放ともいえるプレイの中に高度な技巧性と抒情性が込められており、セカンドアルバム『インテンシオン』と並ぶ傑作と評されたアルバムでもある。

 アッティラはスペインのカタルーニャ地方のジローナで、1973年に結成されたグループである。オリジナルメンバーはエドゥアルド・アルバレス・ニエプラ(ギター)、フランシスコ・パコ・オルテガ(キーボード)、ホアン・プンジェト(ドラム)のベース不在のトリオ編成で、主に英国のエマーソン・レイク&パーマーを意識した演奏をしていたという。彼らは自分たちで曲のアイデアを出し合い、もっぱらスタジオに籠ってリハーサルを繰り返しており、そのため小さなバーで演奏する以外、ライヴの活動はほとんど行っていない。リハーサルを重ねるうちにアルバムのレコーディングを考えるようになり、1975年にデモテープを録音したが、自分たちの音楽がレーベルの関心を寄せるものではないと悟り、自主制作に踏み切っている。バルセロナのゲマ2スタジオに入った彼らは、ファーストアルバムをスタジオライヴ形式で録音し、プレス枚数がわずか1,000枚というファーストアルバム『El Principio Del Fin(終焉の兆し)』をリリースする。そのアルバムはバッハを思わせるチャーチオルガンやスリリングなリズムセクション、饒舌なギターによる壮絶なインプロヴィゼーションを散りばめた内容になっており、これがスタジオライヴであることを証明するために、わざと友人を招いて実際にライヴを見学させて拍手音なども録音している。アルバムリリース後にスペインのプログレッシヴ・フェスティバルに出演。さらにフランスにもツアー遠征し、パリで行われたゴルフ・ドルオ・フェスティバルでは賞を獲得している。この時にメンバーチェンジがあり、ベーシストのミゲル・アンヘル・ブラスコが加入。また、脱退したキーボード奏者のフランシスコ・パコ・オルテガの代わりにベネト・ノグエが加入している。

 カルテットとなったアッティラは、様々なフェスティバルに参加し、マドリードで行われたパティ・スミスやジョン・ケイル、グラナダなどが参加したビスタ・アレグレの9時間に及ぶコンサートにも出演している。このような成果から1976年に、アッティラはドイツの大手BASFレーベルからセカンドアルバムの打診があり、彼らにとって初めてのスタジオレコーディングが行われる。1976年にリリースしたセカンドアルバム『インテンシオン』は、オルテガのクラシック指向が強かった前作とは趣が変わり、効果的なジャズを使用したインタープレイを中心に、エマーソン・レイク&パーマー、トレースを思わせるようなサイケデリック風オルガンハードロックとなっている。彼らはアルバムリリース後に大規模なヨーロッパツアー、フェスティバルに積極的に参加し、CANを含む様々なグループとの共演を果たしている。その年の10月にはギタリストのエドゥアルド・アルバレス・ニエプラが一時的に兵役のためにグループから離れ、ベーシストのミゲル・アンヘル・ブラスコがギターを担当。新たなベーシストにはホセ・マヌエルが参加するメンバーチェンジがあったものの、年末にはスペインのベスト・ライヴ・バンドに選ばれる快挙を成し遂げている。彼らは1977年2月にバルセロナにあるEMIオデオンと契約し、より良い環境と予算のもとで次のアルバムのレコーディングに入っている。しかし、4月にベーシストのホセ・マヌエルが脱退し、元カナリオスのギタリストだったジャン=ピエール・ゴメスが急遽ベーシストとして参加している。こうしてレコーディングエンジニアにフランシスコ・ロペス・セルバンテスが担当したサードアルバム『復活』が、1977年にリリースされることになる。そのアルバムは前作以上にシンセサイザーの使用頻度を上げた大作指向となっており、ハードでありながらサイケデリック性やコズミック性を加味した極めて技巧性の高い作品となっている。

★曲目★
01.Reviure "Revivir"(復活)
02.Somni "Sueño"(夢)
03.Atila(アッティラ)
04.Al Matí "En La Mañana"(朝の印象)

 アルバムの1曲目の『復活』は、シンセサイザーのノイズ音とベース音による不気味なオープニングから、手数の多いドラミングと疾走感のあるギターがアクセントとなったスペイシーな楽曲。中間ではギターやシンセサイザー、ベースのユニゾンを活かしたメカニカルな演奏となり、語り口調だが熱いノグエのヴォーカルが入ってくる。その後はシャッフルビートに乗せたシンセサイザーソロが展開し、だんだんスピーディーになっていくところは痛快である。2曲目の『夢』は、クラウトロックを思わせる電子音から始まり、アコースティックギターとピアノによる牧歌的な雰囲気と夢想的なシンセサイザーが絡んだスペイシーなロック。ファズベースとギターのカッティングをバックに転がるように弾くシンセサイザーが印象的である。後半にはピッチが上がり、吐き出すようなヴォーカルと疾走するギターが入るが、最後まで安定したリズムセクションが曲を引き締めている。3曲目の『アッティラ』は、12分に及ぶ大曲。咳き込む人を交えた会話音から入り、煌びやかなシンセサイザー音とヘヴィでソリッドなギターを絡めたハードロック。後にタイトなリズムとシンセサイザー、ギターが熱気をはらんで疾走し、さらにハードさが増していくが、突然曲調が変わり、チャーチオルガンや分厚いシンセサイザーによるシンフォニックな展開となる。その後は鮮やかなリズムワークと共に複雑なアレンジによるテクニカルな演奏となり、サイケデリックなシンセサイザーやギターによるインタープレイに変化していく。最後はドラムソロを経て重厚なベース音を下支えとしたグルーヴィーな演奏となって締めている。4曲目の『朝の印象』は、シンセサイザーによる風の金切り音からテクニカルな演奏を経て、美しいピアノとアコースティックギターをバックにしたいかにもスペインらしい熱のこもったヴォーカルが印象的な楽曲。洗練されたキーボードワークがメロディアスであり、途中からピッチの速いフラメンコ調のギターソロがあるなど変化に富んだ内容になっている。最後は重厚なシンセサイザーと疾走するギター、存在感のあるベース、そして手数の多いドラミングによる圧巻のアンサンブルが展開される。こうしてアルバムを通して聴いてみると、従来以上の技巧的な演奏に終始しており、シンセサイザーの使用頻度が高くなっているためか、全体的にサイケデリック性のあるスペイシーな楽曲が多くなっている。曲調がめぐるめく変わる中でスペインらしい疾走感のあるギターやオルガンやピアノを含む自由自在なキーボードとの絡みが曲を創生しているが、そこには的確に刻むホアン・プンジェトのドラミングと素晴らしいジャン=ピエール・ゴメスのベースの存在があってこそ成し得たものだろう。

 本アルバムは各地でのフェスティバルやフランスツアーでの成功を経て制作されたものだが、前作以上の期待に応えられず、一部の批評家からは酷評などもあったという。それは歌詞の中にカタルーニャのナショナリストに関する宣言が含まれていたからである。彼らは失意を覚えたが、1977年の夏にイセベルグと共にスペイン国内を回るツアーを行っている。年末にはベーシストとして参加したジャン=ピエール・ゴメスが脱退し、ハウメ・リペラが加入。その後、兵役から戻ってきたギタリストのエドゥアルド・アルバレス・ニエプラが復帰したものの、今度は音楽的な方向性の違いでギターを担当していたミゲル・アンヘル・ブラスコとキーボード奏者のベネト・ノグエ、ベーシストのハウメ・リペラが相次いで脱退してしまう。さらに夏にはドラマーのホアン・プンジェトが兵役でグループから離れ、サルバドール・ニエプラと交代している。彼らはメンバーが流動的であっても何度もギグを重ねるなどグループの維持を図ったが、最終的に1978年末に解散することになる。解散後、ニエプラは映画やTVのサントラの制作に携わり、ベネトとブラスコはACRAというグループを結成し、プンジェトは学校でドラムを教える教師となっている。アッティラは解散後にフランスを中心に欧州で熱狂的なファンが多く残り、ファーストを含むオリジナルアルバムは高値で取引されるようになったという。しばらく音沙汰なく10年以上が経過した1993年に、ロスト・ヴァイナル・レーベルが本アルバムを含むアッティラのアルバムをCDで再発してから、プログレッシヴロックの評論家から高く評価されるようになる。この風向きから1999年11月にドラマーのホアン・プンジェトとキーボード奏者のベネト・ノグエが、イグナシ・ボッシュ(ギター)、ペレ・マルティネス(ベース)、ホアン・カルドネール(ギター)を加えたリユニオン・コンサートを開催。この模様は1999年に『インテンシオン+Reviure』としてリリースされている。


 

 皆さんこんにちはそしてこんばんわです。今回は母国スペインよりもイタリアやフランスで高い人気を誇ったプログレッシヴロックグループ、アッティラのサードアルバム『復活』を紹介しました。ジャケットデザインが、同じスペインの画家であるサルバドール・ダリの「茹でた隠元豆のある柔らかい構造(内乱の予感)」の絵を彷彿するような迫力のデザインがいいですね。スペインのロックシーンはフランコの独裁政権下にあっても、ゴング=ムーヴィープレイといったレーベルから、グラナダやトリアーナ、ゴティックといった高名なグループを輩出していますが、マイナーレーベルからリリースされたアッティラは知名度は劣るものの熱狂的なファンが存在し、3枚のオリジナルアルバムはどれも高値で取引されるレア盤として有名です。ちなみにアッティラのCD化に至っては1993年にロスト・ヴァイナル・レーベルから再発していますが、本アルバムに至ってはなかなかEMIの許可が下りず、公式にCD化されたのは2017年です。これまで非公式の質の悪いCDが出回っていたらしく、プログレファンからしたらやっとちゃんとした音で本アルバムが聴けるようになったということです。

 さて、前回にセカンドアルバム『インテンシオン』を先に紹介していますが、本作も前作に劣らない圧巻の演奏を繰り広げています。前作から大きく変わったのはシンセサイザーの使用頻度の高さです。そのため彼ら特有の技巧的な演奏にスペイシーなサウンドが加味され、SF映画さながらの視覚的な音世界を作り出しています。衝撃的な一曲目の序章はマハヴィシュヌ・オーケストラの一作目のオープニングを彷彿とさせる不気味なシンセサイザー音からはじまり、疾走感のあるギターや手数の多いドラミングなど、相変わらず複雑なアレンジが随所にみられる技巧的な演奏に圧倒されます。雄弁なギターとシンセサイザーによるサイケ色の強いハードなシンフォニックロックともいえますが、アコースティックギターやピアノによる牧歌的な演奏もあって、きっちり聴かせるところは聴かせる懐の広さもあります。アルバムの最後は速弾きのギターとパワフルなリズムセクション、そしてピッチベンドを効果的に使用したシンセサイザーが一体となっていくシーンは、彼らがどれだけこのアルバムに魂を込めていたかがよく分かる迫力の演奏になっています。当時は時代の変化もあって、本アルバムはあまり評価が得られなかったそうですが、間違いなく彼らの最高傑作と言っても良いアルバムだと思っています。

それではまたっ!