Progres 2/Dialog S Vesmírem
プログレス2/宇宙との対話
1980年リリース
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宇宙的なスケール感で演出する
テクニカルシンフォの名盤
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1968年結成のプログレス・オーガニゼーション、バルノダイを経て改名してリリースされた、旧チェコスロバキアのプログレッシヴロックグループ、プログレス2の事実上のサードアルバム。そのアルバムはイエスの『危機』を彷彿とさせる演奏に、壮大なシンセサイザーによる宇宙的なスケール感で演出したテクニカル・シンフォニックロックの名盤となっている。元々はチェコスロバキア初のロックオペラとなる大規模なオーディオビジュアル作品である『Dialog S Vesmírem』の制作のために集まったプロジェクト的なグループだったが、その後もロックオペラをメインに制作を続け、2000年代まで活動を続けたチェコを代表する国民的なロックグループでもある。
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プログレス2は、現チェコ共和国の南モラヴィア地方にある都市ブルノ出身のメンバーによって結成されたアートロックグループであり、元々は1968年に結成したプログレス・オーガニゼーションに遡る。当時のメンバーはズデニェク・クルカ(ドラムス)、パヴェル・ヴァーニェ(ギター)、ヤン・ソホル(キーボード)、そしてギリシャ人のエマヌエル・シデリディス(ベース)の4人である。彼らは主にザ・ビートルズやクリーム、ヴァニラ・ファッジ、ピンク・フロイドなどのグループから影響を受けた演奏をしていたという。 彼らは1969年6月にはブルノのクラーロヴォ・ポーレ屋内のアリーナでビーチ・ボーイズの前座を務め、1970年には3曲入りEP『Klíč K Poznání(知識への鍵)』をリリースする人気ぶりだったが、1969年にチェコスロバキアのプラハの春改革以前の状態への回復と、その後の新たな現状維持による「正常化」という社会主義国家の圧力のため、グループは解散することになる。しかし、1971年に再度メンバーが集結し、フルアルバム『Barnodaj(バルノダイ)』をリリースしている。その後、クルカとソホル、シデリディスの3人は、ポップデュオのマルタ&テナのバックバンドであるアレシュ・シグムンド・グループで演奏し、ギタリストのヴァーニェはスロバキアのプログレッシヴロックグループのコレギウム・ムジクムとアトランティスで短期間演奏したという。ヴァーニェは1972年にアレシュ・シグムンド・グループに加入したが、その頃にはクルカとソホルは脱退しており、シデリディスに至っては最終的に祖国のギリシャに帰国したとされている。クルカとソホルの2人は1972年にヤン・ソホル・グループを結成し、シンガーソングライターのボブ・フリドルのバックバンドを務めたという。そして2年後の1974年にベーシストのパヴェル・ペルツが加入し、いくつかのグループを渡り歩いていたギタリストのパヴェル・ヴァーニェもグループに復帰。彼らは1977年に再び作曲を始め、1978年にバルノダイという名義でアルバム『Mauglí(モーグリ)』をリリースしている。
アルバム『Mauglí(モーグリ)』のレコーディング中に、クルカとヴァーニェ、ペルツはキーボード奏者のカレル・ホルキーとギター奏者のミロシュ・モラヴェクをメンバーに加え、プログレス2という名義でロックオペラ 『Dialog S Vesmírem(宇宙との対話)』の制作に取り掛かっている。当時バルノダイという名で活動していた彼らは、コンサートで映像や様々な事前録画されたシーケンスを投影するオーディオビジュアルプロジェクトを推進していたという。その時、彼らのマネージャーであるオスカー・マンは、SF文学の愛好家であり、地球上の物質主義社会から自分を解放しようとし、そして無限の宇宙に逃避を求める男の物語を創作。彼らはこの物語に同意し、メンバーは物語に合わせて曲を書き、オスカー・マンがそれに独自の歌詞を加えたという。彼らはグループ名をプログレス2に改名し、チェコスロバキア初のロックオペラを演奏するプロジェクトグループとして認知されるようになる。このロックオペラは1978年2月27日にブルノ展示場劇場で初演され、チェコスロバキア全土で1980年までに350回の再演を企画していたが、キーボード奏者のカレル・ホルキーは大学で学ぶために1979年に脱退。コンサートでの重要なキーボードパートは、ベーシストのペルツが引き継いだが、1979年から始まったアルバム用のスタジオレコーディングには参加している。こうしてレコーディングはコンサートの合間に行われて時間がかかったものの、最終的に1980年にリリースされる。そのアルバムはイエスの『危機』を彷彿とさせる演奏に、壮大なシンセサイザーによる宇宙的なスケール感で演出したテクニカル・シンフォニックロックの傑作となっており、東欧プログレ屈指の1枚となっている。
★曲目★
01.V Zajetí Počítačů(コンピューターの束縛)
02.Země 2555(地球 2555年)
03.Píseň O Jablku(リンゴの歌)
04.Odlet(出発)
05.Planeta Hieronyma Bosche I(惑星ヒエロニムス・ボスⅠ)
06.Planeta Hieronyma Bosche II(惑星ヒエロニムス・ボスⅡ)
07.Tisíce Mých Očí(数千の眼)
08.Hymna Robotů(聖歌を歌うロボット)
アルバム1曲目の『コンピューターの束縛』は、パヴェル・ヴァーニェの華麗なる高速ギタープレイから始まり、的確に刻んだベースとドラムス、そして大胆ともいえるキーボードが印象的な楽曲。イエスやジェントル・ジャイアントの影響を受けたと思われる仕掛けや変拍子の多いプログレ的な表現が盛り込まれている。2曲目の『地球 2555年』は、チェコ語で歌うパヴェル・ペルツのヴォーカルとパヴェル・ヴァーニェのヘヴィなギターから始まる楽曲。癖のあるブルージーなギターとヴォーカルだが、意外とキャッチーな曲になっており、ここでも非常に太いベースが印象的である。3曲目の『リンゴの歌』は9分を越える大曲になっており、シンセサイザーによるスペーシーなイントロから始まる楽曲。最もスペースオペラな雰囲気のあるサウンドになっており、穏やかなギターやヴォーカル、そしてベースが際立っている。3分30秒からのフルートやストリングス、ミニモーグによる美しいアンサンブルがあり、これまでのサイケデリックな要素と多くのクラシック音楽のインスピレーションを巧みに加味してアレンジしている。6分以降のうなるベースやギターソロ、そしてチェンバロ風キーボードによるジャズロック的な演奏は聴き応え十分である。4曲目の『出発』は、シンセサイザーによる壮大なイントロから始まり、キャッチーなメロディによるアップテンポな内容に変化する楽曲。スペイシーなキーボードやコーラスの効いたヴォーカル、そして何よりも後半のミニモーグやギターによるパワフルでダイナミックな展開に驚いてしまう。5曲目の『惑星ヒエロニムス・ボスⅠ』は、マハヴィシュヌ・オーケストラを思わせるようなイントロから始まる楽曲。ヘヴィなギターや荘厳なシンセサイザーが印象的だが、2分過ぎからヴォーカルが加わるとキャッチーなロックサウンドとなる。6曲目の『惑星ヒエロニムス・ボスⅡ』は6分を越える曲であり、降り注ぐようなシンセサイザーの響きから地響きのようなベースが加わったハードロック的なサウンドとなる楽曲。3分過ぎのヴァーニェのギターソロは必聴である。7曲目の『数千の眼』は、重厚なベースと荘厳なシンセサイザーをバックにしたヘヴィな楽曲となっており、穏やかなヴォーカルパートとの対比となっている。後半の飲み込まれるようなキーボード音とうなるベース、力強いドラミングによるアンサンブルが素晴らしい。8曲目の『聖歌を歌うロボット』は、エコーのかかったドラムソロから始まり、独創的なベース音、囁くようなヴォーカルによるサイケデリックな楽曲。コミカルなイメージがあるものの、ダイナミックなギタープレイが終始展開している。
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元々ロックオペラの『Dialog S Vesmírem(宇宙との対話)』は、17の楽曲で構成されていたが、アルバム用に8曲に絞っており、アルバムは「ロックオペラの断面図」と評されたという。最初の6曲はプロジェクトの連続したオープニング部分を形成し、残りの2曲は元々ロックオペラの後半部分となっている。また、歌詞の一部は薬物やキリスト教をテーマにしたものがあり、当時の体制にとって問題だった歌詞の一部を修正しているという。同年にはアルバムを補完するSPとEPがリリースされたが、コンサートパフォーマンスからの曲の一部は全くリリースされなかったとされている。プログレス2は今後のプロジェクトについて意見の相違を経験し、最終的にヴァーニェが脱退することになり、彼はブロンズというグループを結成することになる。その後、キーボード奏者のロマン・ドラグーンが加わり、次のロックオペラの制作を開始している。この『Třetí Kniha Džunglí (英題:ザ・サード・ブック・オヴ・ジャングル)』というタイトルのロックオペラは1981年に初演され、1982年にアルバムとしてリリースしている。1983年になるとモラヴェクとドラグーンは、Futurumというグループを結成するために脱退。代わりにギタリストのアレシュ・バイガーとピーター・ペタライがメンバーとなり、このラインナップでソ連の作家であるアナトリー・ドニプロフの短編小説を基にしたロックオペラ『Mozek(脳)』の制作を開始している。1985年にはギタリストのピーター・ペテライが脱退し、キーボード奏者のミラン・ニトラが後任として加入。1987年にアルバム『Změna!』をリリースしたが、バジャーとペルツが脱退を表明し、オリジナルメンバーとして残ったのはドラマーのズデニェク・クルカだけとなる。これを機にギタリストのミレク・ソヴァ、ベーシストのダリボル・ドゥノフスキー、そしてヴォーカリストのパヴラ・ドヴォラチコヴァを加え、プログレス・ポクロクと改名。彼らは「オトラヴァ・クルヴェ」というタイトルの新プロジェクトに取り組み始め、1988年から1989年までStBの監督下で演奏している。1990年に同名のアルバムをリリースしたが、その後、グループは活動を停止することになる。1992年にはクルカ、ヴァーニェ、ペルツに加え、新ギタリストのイヴァン・マノロフとキーボード奏者のボレク・ネドロストを加えた新生プログレス2を再結成し、カムバックコンサートを開催。1993年にはチェコのロック音楽に多大な貢献をしたアーティストに選ばれる「Beatová Síň Slávy」への参加にもノミネートされている。その後の彼らの活動は散発的だったが、2008年10月にプログレス・オーガニゼーション結成から40周年を記念して、『プログレス・ストーリー 1968–2008』と題した2回のコンサートを開催。このコンサートはブルノのセミラッソ文化センターで開催され、グループのメンバーであったほぼすべてのミュージシャンが出演したという。2018年にはジャック・ロンドンの1915年のSF小説『星の放浪者』を原作としたニューアルバム『Tulák po hvězdách』をレコーディングし、同年後半にリリースしている。これはグループ結成50周年記念と重なり、チェコテレビによってドキュメンタリー映画として制作されたという。2021年7月には長年ベーシストを務めたパヴェル・ペルツが、残念ながら71歳で死去している。
皆さんこんにちはそしてこんばんわです。今回は旧チェコスロバキア初のロックオペラと呼ばれているプログレス2のスタジオアルバム『宇宙との対話』を紹介しました。彼らは1968年に結成したプログレス・オーガニゼーション、バルノダイ、プログレス2とグループの名を変えており、本アルバムは事実上の3枚目にあたる作品となります。これまでの作品と大きく違うのは、コンサートで映像や様々な事前録画されたシーケンスを投影するオーディオビジュアルプロジェクトの一環とする壮大なロックオペラとなっていることです。そのロックオペラの物語のベースは、何と彼らのマネージャーでSF文学の愛好家でもあるオスカー・マンが制作したものであり、旧チェコスロバキア初のロックオペラでもあるそうです。国内で多くのコンサートが企画され、2年間で350回も公演が行われたようで、後にリリースされたアルバム『宇宙との対話』は、好セールスを記録したと言います。しかし、ロックオペラ『宇宙との対話』のライヴパフォーマンスは、実際は17に及ぶ楽曲によって構成されており、本アルバムではわずか8曲に抑えられています。2枚組のレコードにすればよかったのでは?と脳裏によぎったのですが、社会主義国家だった当時のチェコスロバキアの音楽シーンを鑑みれば、なかなか難しかったのかもしれないと今では思っています。完全版とは言い切れませんが、2010年にFT Recordsから再発された『Dialog S Vesmírem/Studio & Live』というCD2枚組のコンピレーション作品が、スタジオ録音と17曲構成のライヴバージョンの両方を収録しているとのことです。私はまだ手に入れていませんが、機会があったらぜひ聴いてみたいです。
さて、そんなプログレス2名義でリリースされた本アルバムですが、スペースロックとプログレッシヴロックの領域を探求し、ストリングスやミニモーグ、シンセサイザーの使用によるスタイルを支配し、これまでのサイケデリックな要素と多くのクラシック音楽のインスピレーションだけではなく、重厚なテクスチャを加味しています。彼らはピンク・フロイド、SBB、エロイ、そして旧ソ連のホリゾントのようなグループの音楽に近づきつつも、SF的な歌詞や宇宙的なサウンドスケープ、そしてエッジの効いたギターと風変わりなシンセサイザーのミックスによって独自のロックオペラを提供しています。本アルバムで最も輝かしいのはキーボード奏者のカレル・ホルキーであり、彼は現代的なキーボードを独自の方法で新しいサウンドを生み出しています。懐古主義を避けつつ、時代遅れとされている1980年代初頭の多くのシンセサイザー作品から巧く回避しています。また、パヴェル・ヴァーニェとミロシュ・モラヴェクのヘヴィなギターは、まるでプログレッシヴロックを演奏するジミ・ヘンドリックスのようです。でも、個人的にはパヴェル・ペルツの重厚なベースこそ、アルバム全体をダイナミックにそして浮遊感を与えていると思っています。
本アルバムは旧チェコスロバキア初のロックオペラのスタジオアルバムであり、東欧プログレの傑作の1枚です。ぜひ、この機会に一度聴いてみてください。
それではまたっ!































































