Flamen Dialis/Symptome-Dei
フラメン・ディアリス/シンプトム・ダイ
1979年リリース
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メロトロンを大胆にフィーチャーした
アヴァン系電子プログレッシヴロックの逸品
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キーボード奏者兼ドラマーのディディエ・ル・ガリックによって結成されたフランスのプログレッシヴロックグループ、フラメン・ディアリスが1979年に発表した唯一作。そのアルバムはクラウトロックに影響を受けた反復的なメロディの中にメロトロンと弦楽器をフィーチャーしたシリアスでダークなシンフォニックロックとなっており、電子音を用いたアヴァンギャルド・ロックの即興演奏における重要な作品とされている。25年後の2004年にCD化を果たしているが、プログレファンからはメロトロンを多用したスペイシーなマグマと呼ばれており、現在高く評価されている。
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フラメン・ディアリスはマルチ楽器奏者のディディエ・ル・ガリックによって、1976年にフランスのブルターニュで結成されたグループである。ディディエ・ル・ガリックは1971年に英国に渡り、イェクタ・プラス・バンドというグループに所属し、ドラマーとして演奏していたという。しかし、シングルをリリースしたものの成功することなく、彼は1975年にフランスに帰国。ガリックは翌年の1976年にL・ル・クレック(ヴォーカル、ハーモニカ)とB・B・レルグアック(ヴォーカル)、ティエリー・タンギー(ピアノ)と共に、古代ローマの神ユピテル(ジュピター)に仕える最高位の祭司の名をグループ名にしたフラメン・ディアリスを結成する。この時、彼の脳裏には電子音楽の原理に基づきながらもフォークの要素を取り入れ、実験的でスペイシーなプログレッシヴロックを目指そうと考えたという。このカルテットは1978年にアイリススタジオで録音したシングル『Découverte(発見)』をリリースしている。このシングル曲で手応えを感じた彼はラインナップを拡大し、弟のイヴ・ル・ガリック(キーボード、ヴォーカル)、A・エルヌーフ(フルート、ヴォーカル)、M・ル・ソート(ギター)、ジャン=ジャック・クレン(ヴォーカル)も参加。アルバムの楽曲はガリック兄弟が作曲し、イヴ・ル・ガリックはレコーディングプロデューサーも請け負ったという。こうしてFLVM(自主レーベル)から、1979年にデビューアルバム『シンプトム・ダイ』がリリースされる。そのアルバムはアナログシンセサイザーに加えてメロトロンを多用し、さらに、アコースティックギターとフルートの存在によって、シンセサイザーのスペーシーさと古風な管楽器によるノスタルジックさが融合した独特のサウンドとなっている。
★曲目★
01.Dernière Croisade(最期の十字軍)
02.La Sanctuaire D'argile(粘土の聖書)
03.Dédale Vert Du Retour(帰還への緑の迷宮)
04.Illusion(錯覚)
05.Méandres Envoutés(まわりくどい呪文)
06.Eclosion(孵化)
07.Labyrinthe Pourpre De La Connaissance(認識への紫の迷宮)
08.Arc En Lumière(光のアーチ)
09.Renaissance(再生)
10.Le Village Du Dimanche Matin(日曜日の朝の村)
11.Eclats(破片)
アルバムの1曲目の『最期の十字軍』は、奇妙な電子音上でアラビアの影響を受けた素晴らしいアコースティックギターの音色とメロトロンが鳴り響いた楽曲。ギターという弦楽器が加わっている点で、クラウトロックにある機械的な電子音で渦巻くようなサウンドではないことが分かる。2曲目の『粘土の聖書』は、最初の2分間に不気味なチャントが入っており、キーボードによる古代の儀式ともいえるサウンドになっている。神秘的なギターの音色と南国的なパーカッションが異国情緒を誘う。3曲目の『帰還への緑の迷宮』は、フルートとアコースティックギターによる牧歌的なサウンドスケープが広がる楽曲。単調なメロディだが、妙な没入感のあるサウンドである。4曲目の『錯覚』は、まるで古楽器を利用した不協和音のようなサウンドになっており、不気味な世界観を創生している。5曲目の『まわりくどい呪文』は、風のような効果音の中で様々なシンセボイスを組み合わせた楽曲。ムーディーでありながらやや暗く、非常に内省的な曲である。6曲目の『孵化』は、荘厳なメロトロンとキーボードによるサウンドスケープとなっている。7曲目の『認識への紫の迷宮』は、重苦しいベース音と沈むようなフルートの音色が印象的である。後半ではドラムソロと反復的なベース、会話形式のシンセボイスが堪能できる。8曲目の『光のアーチ』は、メロトロンとビブラフォンを中心とした楽曲。反復的でありながらメロディアスであり、陶酔的な雰囲気を創生している。9曲目の『再生』はベースと2つのメロトロンを中心としたゆったりとした楽曲に、早いテンポのリズムセクションが加味されている。10曲目の『日曜日の朝の村』は、メロトロンを使ったアップテンポな楽曲。非常に短い曲ながらポップなメロディに満ち溢れている。11曲目の『破片』は様々な楽器が渦巻いており、不協和音と混沌に満ちた楽曲。ピアノやドラミングを中心とした即興性のある内容になっている。こうしてアルバムを通して聴いてみると、古代ローマやエジプトの時代にタイムスリップしたかのような抽象的で心に残るサウンドスケープを基調とした、実験的なエレクトロニック・プログレッシヴロックである。そこにアコースティックギターとフルートによって牧歌的な雰囲気に強化され、シンセサイザーのスペーシーな動きと古風な管楽器のノスタルジックなサウンドが見事に融合している。
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アルバムは1979年というプログレッシヴな音楽が淘汰されつつあった年であり、また、自主レーベルであったこともあってプレスした枚数も少なく、すぐに廃盤となったという。元々、フラメン・ディアリスはディディエ・ル・ガリックにとってプロジェクト的な意味合いの強いグループだったこともあり、アルバムリリース後にグループは解散。メンバーはそれぞれ自分の音楽の道に進んだと思われる。ディディエ・ル・ガリックはその後、マルチミュージシャン兼スタジオプロデューサーとして活躍し、表舞台に姿を見せなくなったという。彼らが再度脚光を浴びることになるのは、埋もれたプログレッシヴミュージックのリリースに特化したイスラエルのMIOレコードと日本のマーキー・インコーポレイティドから、2004年にCD再発盤がリリースされたことだろう。そんな2000年代のプログレグループへの関心が再び高まる中、何と2009年にディディエ・ル・ガリックによってフラメン・ディアリスが再結成。2012年にセカンドアルバムにあたる『トランスフォーメーション』がリリースされる。そのアルバムはル・ガリック1人で作詞作曲、演奏を行っており、本作と同じように催眠的なポストロック風の反復と対位法的な要素を巧みに組み合わせた手法を用いながらも多様な展開を見せている。また、ル・ガリックは2017年にもサードアルバム『ドキトー・ラスベガス』を発表しており、現在でも陶酔感あふれる曲作りに邁進しているという。
皆さんこんにちはそしてこんばんわです。今回はマルチミュージシャンであるディディエ・ル・ガリックを中心に結成されたフランスのプログレッシヴロックグループ、フラメン・ディアリスのデビューアルバム『シンプトム・ダイ』を紹介しました。グループ名のフラメン・ディアリスとは、古代ローマの神ユピテル(ジュピター)に仕えていた最高位の祭司であり、彼は金属に触れることや馬に乗ること、そして死体を見ることなど、様々なことを禁じられた非常に制約の多い人物として知られています。そのため、フラメン・ディアリスは絶対的な純粋さと自由という属性を持った雷と王権を操る天上の神に仕えていることを示したとされています。この「ジュピターの司祭の交響曲」とも呼ばれる本アルバムは、先進的なサウンドと古代の儀式を融合させた実験的な作品になっています。それは、ル・ガリックが当時述べたように「音符は時代を超越し、最終的に色とりどりの泡が音の混沌の中で融合」するアヴァンギャルドなエレクトロニック・プログレッシヴ・ミュージックだそうです。これがフラメン・ディアリスがメロトロンを多用したスペイシーなマグマと呼ばれる所以になっています。
さて、本アルバムはフルートやヴィブラフォン、メロトロンがアルバム全体にささやくように響き渡りますが、とうの昔に忘れ去った時代のリズム、動きといった古代からインスピレーションを得た作品になっています。プログレッシヴロックを出発点とし、どこかアマチュア的な雰囲気を漂わせつつ、奇妙なサイケデリックな世界観を創り出しながらサウンドの重厚さを際立たせています。それは映画的でありながらも生々しく、反復的な要素は1970年代初頭のドイツのクラウトロックシーンの実験精神を彷彿とさせます。この驚くほどユニークなアルバムは急遽集められたミュージシャンたちとわずか2日間でグループを結成し、テープ操作やその他のスタジオ技術を駆使してサウンドと構成を作り上げながらアルバム全曲をレコーディングしています。たった1枚のアルバムで解散してしまいますが、ディディエ・ル・ガリックが表現した音世界は、当時理解されにくかったとしか言いようがありません。クラウス・シュルツェの宇宙的な世界観、もしくはユニヴェル・ゼロの不気味な陰鬱さと破滅感、マグマのようなリズミカルな推進力が好きな人にオススメの作品です。
それではまたっ!






























































