【今日の1枚】Osanna/Palepoli(パレポリ) | 古今東西プログレレビュー垂れ流し

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Osanna/Palepoli
オザンナ/パレポリ
1973年リリース

エキセントリックな持ち味が発揮された
イタリアン・プログレッシヴロックの金字塔

 メンバー全員がテクニシャンでありながら、太古の儀式を思わせるような怪しい雰囲気の中で、奇抜ともいえるメイクや衣装、実験的なステージが特徴のオザンナのサードアルバム。本アルバムはローマ帝国以前にイタリア南部の土着/民族性に根差したという謎の都市“パレポリ”をモチーフとし、うねるようなフルートや重厚なメロトロン、攻撃的なギター、パワフルなサックスなど、エキセントリックでミステリアスな独自の世界を切り開いたサウンドになっている。その独特の陰影をはらんだイタリアの土着感と凄まじいほどのアクの強さから、今なおイタリアン・プログレッシヴロックの傑作として名高い1枚である。

 オザンナは1971年にイタリアのナポリで結成されたグループである。同じナポリで活躍していたチッタ・フロンターレのギタリストであるダニーロ・ルスティーチが、メジャーグループだったザ・ショウマンのウィンド奏者のエリオ・ダンナに新たなグループの結成を持ちかけたことがきっかけである。意気投合した2人は、チッタ・フロンターレに在籍していたヴォーカルのリノ・ヴァレッティ、ベーシストのレロ・ブランディ、ドラマーのマッシモ・グゥアリーノに声をかけている。当時のチッタ・フロンターレには後にイル・バレット・ディ・ブロンゾに加入するジャンニ・レオーネが在籍していたが、そのグループに引き抜かれる形で脱退してしまい、代わりにエリオ・ダンナが加入したことでオザンナというグループ名に変えている。彼らはサイケデリックロックやプログレッシヴロックをもっとイタリア的に消化し、ユニークでハードなロックを創造することを念頭に活動を開始する。早速彼らは同年にフォニット・チェトラからデビューアルバム『L' Uomo』をリリースする。アルバムはアコースティック色の強いサウンドだったが、すでにエキセントリックな一面をのぞかせたオザンナワールドを形成しており、変形ジャケットも相まってイタリア国内で固定ファンをつかんでいる。翌年の1972年にはフェルナンド・ディオレ監督の映画作品のサウンドトラックを依頼され、ルイス・エンリケス・バカロフのプロデュースのもとで『ミラノ・カリブロ9』をリリースしている。このアルバムはオーケストラをフィーチャーし、上質なクラシカルロックの名盤とされている。この前作のサントラにしてストリングスオーケストラとの競演を経て、ヘヴィなロックに根ざした土着性とシンフォニックな盛り上がりを加味したのが、1973年にリリースした本アルバムの『パレポリ』である。タイトルの『パレポリ』とは、ローマ帝国以前に栄えたという謎の古代都市であり、彼らの故郷であるナポリの地にあったと言われている。そんなはるか昔の神秘的な世界に思いを馳せた壮大なサウンド・タペストリーとなっており、異様ともいえる彼らのエキセントリックな持ち味が最大限に発揮された凄まじいトータルアルバムになっている。
 
★曲目★
01.a.Oro Caldo(熱いとき)
  b.Stanza Citta(スタンツァ・チッタ)
02.No Title(間奏曲)
03.Animale Senza Respiro(すばやい獣たち)

 アルバムは全4曲となっている。レコードでいうA面に『熱いとき』と『スタンツァ・チッタ』、B面に『すばやい獣たち』となっており、リマスター盤ではオリジナル盤には無かった旧AB面をつなぐ『間奏曲』が収録されている。ちなみに1曲目の『熱いとき』と『スタンツァ・チッタ』はつなぎ目の無いメドレー形式になっている。1曲目の前半の『熱いとき』は、人々のざわめきと打楽器で構成された楽曲から始まり、ミステリアスなフルートの伴奏も相まって呪術的な空間を演出している。後に軽快なリズムに乗せたアンサンブルがフェードインしてきて、やや古めのハードロックを聴かせてくれる。今度はテープの逆回転を思わせるギターから、リリカルなギターやサックス、メロトロンを駆使したメロディアスなフレーズに切り替わる。土着的な掛け声とともにドラムロールしていき、緊張感のあるブルージーなギターやフルートソロ、シンフォニックなメロトロンを経て、へヴィなギターリフと妖しいフルートを中心としたハードでドラマティックな展開になっていく。1曲目の後半の『スタンツァ・チッタ』は、土俗的なパーカッション上でチリンとした鈴の音とフルートやギターの音の上をテープの逆回転のようなサウンドを乗せたイントロから始まる。その逆回転のようなサウンドの中にはバロックを思わせるチェンバロ風の楽曲が聴き取れ、さらにその上を叙情的なヴォーカルをかぶせている。唸り声とともに3曲目の『すばやい獣たち』になり、変拍子パターンのリズムとギター、キーボードによるへヴィなリフに切り替わる。一旦ブレイクし、今度はメランコリックなギターとサックスによるジャジーな空間を演出している。メロトロンをバックにした情感的なヴォーカルを経て、独特なギターリフを刻んだハードロックになる。摩訶不思議なサックスの音色がミステリアスに拍車をかけており、初期のキング・クリムゾンを彷彿とさせる混沌としたサウンドを醸している。今度はアコースティックギターによるアルペジオをバックにしたヴォーカルになり、異空間にいるようなサウンドからメロトロンとフルート、繊細なギターリフを駆使したメロディアスな曲に展開する。後半はサックスを加えたジャジーなサウンドに変わり、熱いパッションのヴォーカルを聴かせてつつ、フィナーレに向かっていく。こうしてアルバムを通して聴いてみると、先の読めない展開に戸惑う部分もあると思うが、妖しいフルートのメロディをとっかかりにテーマに沿った構築美あふれるサウンドになっている。パレポリという神秘の世界を静と動というよりは、メロトロンやフルートによる神々しい静寂とギターによる荒々しい暴虐を描いているのだろう。変幻自在なサウンドは時に叙情的であり、聴き手を幻想的な世界に惹きこむイタリアならではの土着感とミステリアスな雰囲気が漂う、まさに独自のスタイルを持ったプログレッシヴロックといっても過言ではない傑作である。

 本アルバムはイタリアのファンから絶大な支持を受け、オザンナの人気を決定付けた作品となったという。グループはこの作品を引っ下げて大々的にライヴを行っている。大掛かりなステージセットと多数のアクターを同行させたそのシアトリカルなライヴは、観客の度肝を抜く凄まじいポテンシャルを有した内容であり大きな話題となったという。しかし、この年のイタリアはオイルショックが訪れたことで、レコードは贅沢品と言われ、右翼であるキリスト教民主党に政権交代したことで、ロックコンサートの妨害や禁止が起こってしまう。グループ活動の維持が困難となってしまい、ダニーロ・ルスティーチとエリオ・ダンナはイギリスに渡ってUNOというユニットでレコーディングを行っている。1974年には4枚目のアルバム『ランドスケープ・オブ・ライフ~人生の風景~』を発表。そのアルバムはUNOのアイデアを基にインターナショナルな方向性で作られたものだが、商業的に失敗に終わっている。この状況にグループは耐えられなくなり、なし崩し的に解散することになる。後にメンバーのリノ・ヴァレッティとマッシモ・グゥアリーノは再度チッタ・フロンターレを編成し、ダニーロ・ルスティーチとエリオ・ダンナは、ニューグループのNOVAを結成する分裂を招いている。1978年に一時的にメンバーが集まり、『スッダンス/南の踊り』をリリースするが再度解散している。それぞれ新たなグループで活動を経て21世紀となり、ダニーロ・ルスティーチとリノ・ヴァレッティによってオザンナが再結成される。ヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレイターのデヴィッド・ジャクソンを迎えて、2001年に『Taka Boom(祭典の瞬間)』がリリースされる。現代的にアレンジされつつも持ち味の荒々しさを随所に有した内容になっており、ファンを大いに喜ばせている。2010年には初の来日公演が実現。精力的なライヴ活動を行い、2016年には本アルバムの続編にあたる『パレポリターナ』をリリースしている。


 

 皆さんこんにちはそしてこんばんわです。今回はイタリアン・ダーク・プログレの傑作と誉れ高いオザンナの『パレポリ』を紹介しました。実はオザンナのシリーズで最初に買ったアルバムが『ミラノ・カリブロ9』だったため、このアルバムを聴いたとき、あのシンフォニックなサウンドは何処へ? と戸惑い、つかみどころの無いグループだな~と思ったことがありました。ファーストアルバムを聴いてみたら、なるほど『ミラノ・カリブロ9』が異例だった作品だったのかと、シンフォ好きな私にとってはちょっと複雑な気持ちになったのも遠い昔の話です。このアルバムは数年後にたまたまデスクワークで作業していたときに改めて聴いたのですが、その妖しさ全開なサウンドといい、全く先が読めない展開にワクワク感が止まらず、一気にハマッてしまいました。呪術的なフルートや荒々しいギターでハードロックを演出し、サックスがさらに拍車をかける混沌としたサウンドであるにも関わらず、時折降り注ぐメロトロンの神々しさに惹かれてしまいました。現在でもカルト的な人気を博しているという理由が、今では何となく分かります。

 さて、オザンナといえば奇抜ともいえるライヴが有名ですが、あのKISSが真似たのではないかと思うほど、顔に白黒のメイクを施していて、足先まである長めの衣装を着ているのが特徴です。曲の合間にステージの中央で輪になって踊ったり、とにかく暗黒的というか呪術的なパフォーマンスがあったそうです。本アルバムの後に何人ものアクターを引き連れた大掛かりなステージを行ったそうですが、一体どんなステージだったのか凄く気になります。

 攻撃的なギターやパワフルなサックス、そして神々しいメロトロンといった渾然一体となったサウンドが魅力のオザンナの傑作です。イル・バレット・ディ・ブロンゾなどのダークなイタリアンロックが好きな方はもちろん、アクの強い音楽を聴きたい方にぜひオススメです。

それではまたっ!