【今日の1枚】Neuschwanstein/Battlement(バトルメント) | 古今東西プログレレビュー垂れ流し

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ロック(プログレ)を愛して止まない大バカ…もとい、音楽が日々の生活の糧となっているおっさんです。名盤からマニアックなアルバムまでチョイスして紹介!

Neuschwanstein/Battlement
ノイシュバンシュタイン/バトルメント
1979年リリース

クラシックの構築美を活かした
ロマンあふれるシンフォニックロック

 かつてバイエルンの狂気王ルートヴィヒⅡ世の居城として有名な城の名をグループ名にしたノイシュバンシュタインの唯一のアルバム。そのサウンドはクラシックの音楽教育を受けた2人のキーボーディストによるドラマティックなシンフォニックロックになっており、リック・ウェイクマンにも通じる大胆なシンセサイザーの導入やジェネシス風のシアトリカルな展開を持った楽曲になっている。わずか一作ながら、ジャーマンロック史上に燦然と輝く傑作として未だ高い人気を得ている。

 ノイシュバンシュタインが結成されたのは1971年の頃で、当時高校生だったトマス・ノイロート(キーボード)が、同じ高校生のクラウス・マイエル(フルート、シンセサイザー)との出会いがきっかけである。2人ともクラシックの音楽教育を受けており、またシンフォニックロックの愛好家でもあったため、もっとクラシックの叙情性や構築美を活かしたロックができないかと常日頃考えていたという。そんな2人はドイツで最もロマンティックな城にちなんだノイシュバンシュタインというグループ名でメンバーを集めようとする。やがて広告や口コミを経てウリ・リンペルト(ベース)、ウド・レドリッヒ(ギター)、トルステン・ラフロイル(ドラムス)、テオ・ブッシュ(ヴァイオリン)の4人が集まり、メンバー6人で活動を開始することになる。最初はリック・ウェイクマンのカヴァー曲を中心にブリティッシュロックの演奏を中心に行い、その合間にトマスとクラウスがオリジナルの楽曲を制作していたという。そんな中、ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」をテーマにした彼らにとって初のオリジナル曲を1974年にザールブリュッケンの劇場で行われたコンテストで披露している。そのシンフォニックでメロディアスな演奏に多くの観客が魅了し、彼らは見事1位に輝いている。この成功がきっかけとなり、グループは「不思議の国のアリス」を主体とするギグを遂行し、ライトや衣装など物語世界を視覚的に描くシアトリカルなライヴステージを行うことになる。この間にドラムスのトルステン・ラフロイルがハンス=ペーター・シュヴァルツ、ヴァイオリニストのテオ・ブッシュがメロトロン奏者のリタ・アルトマイヤーに交代し、グループはより幅広い音楽性に変化していくことになる。以後2年間、ドイツとフランスを中心にライヴを続け、ノイシュバンシュタインの知名度は少しずつ高まっていたが、ギタリストのウド・レドリッヒが脱退してしまう。彼らは代わりとなるギタリストを探していたが、ちょうどその頃にフランス人ギタリストのフレデリック・ジューとドイツ人ギタリストのロジャー・ヴァイレルがグループに接触。2人ともヴォーカルを兼ねることができ、これまでインストゥメンタルの楽曲が中心だった彼らにとってヴォーカルを加味した楽曲作りへと発展することになる。後にベーシストのウリ・リンペルトが脱退し、代わりにライナー・ジマーが加入した状態で新たなマテリアルを元にしたライヴを続行。ドイツではノヴァリスの前座を務め、1977年2月にはフランス東部のツアーを行っている。1978年頃にウリ・ライヒェルトがマネージャーとなった時に、彼らにとって初のアルバム収録のチャンスを得ることになる。ケルンに近いシュトンメルンのディーター・ディールクスのスタジオで1978年10月21日から10日間予約し、レコーディングが行われる。録音時にはスコーピオンズのドラマーであるヘルマン・ラレベルが参加するなど、レベルの高い充実なレコーディングが行われ、1979年に『バトルメント』と銘打ったアルバムがリリースされることになる。

★曲目★
01.Loafer Jack(怠け者ジャック)
02.Ice With Dwale(アイス・ウィズ・ドワール)
03.Intruders And The Punishment(侵入者と処罰)
04.Beyond The Buggle(ビヨンド・ザ・バグル)
05.Battlement(バトルメント)
06.Midsummer Day(ミッドサマー・デイ)※
07.Zarticher Abschied(優しい出発)
※ボーナストラック

 アルバムは1曲をライナー・ジマー、その他すべての曲をフレデリック・ジューがヴォーカルを担当している。作曲は各メンバーがテーマを用意し、これをリハーサルの中でアレンジしたものを採用している。1曲目の『怠け者ジャック』は、アコースティックギターとシンセサイザーが朗々たる響きから始まるシンフォニックロックである。ジェネシス風の楽曲でありながらクラシカルなフルートやオーケストレイションがあり、ドイツらしいクラシカルなアレンジの効いた楽曲になっている。2曲目の『アイス・ウィズ・ドワール』は、フルートとピアノ、アコースティックギターのアルペジオによる哀愁が漂うアンサンブルになっている。流麗なピアノとアコースティックギター上で情感的に響かせるフルートがロマンティックであり、ピーター・ガブリエル風のヴォーカルがより叙情性を高めている。3曲目の『侵入者と処罰』は、ジェネシス得意の7/8拍子のオープニングから、大胆なシンセサイザーを駆使した楽曲。シアトリカルなヴォーカルを経て、キーボードを主体とした複雑な展開のある緊迫のアンサンブル、最後に優しいフルートで締めるというセンスにあふれた内容になっている。4曲目の『ビヨンド・ザ・バグル』は、牧歌的なストリングスとフルート、アコースティックギターによるスローテンポの楽曲になっており、フレデリックのヴォーカルを大きくクローズアップされている。途中からアップテンポになっていき、細かなベースとドラミング上で様々に奏でられるシンセサイザーが印象的である。5曲目の『バトルメント』は、砲撃音をバックにしたドラマティックなオープニングから、リリカルなエレクトリックピアノを中心としたキーボードが効果的な楽曲。ヴォーカルはライナー・ジマーが担当している。6曲目の『ミッドサマー・デイ』は、もともとプロモーション用のシングルとして用意されたもので、柔らかなギターアンサンブルを効かせたヴォーカル曲になっている。コマーシャル的な内容になっているかと思いきや、ヴォーカルやフルートが情感的であり、途中からアップテンポになったりするなど、緩急を活かした素晴らしい楽曲になっている。7曲目の『優しい出発』は、哀愁たっぷりのアコースティックギターとフルートのイントロからキーボードを加えた美しいアンサンブルに昇華していくインストゥメンタル曲。その牧歌的で軽快ともいえるギターカッティングは初期のジェネシスやキャメルを彷彿とさせる内容である。こうしてアルバムを通して聴いてみると、ヴォーカルはピーター・ガブリエル、ギターはスティーヴ・ハケット風であり、キーボードはリック・ウェイクマンを意識したような演奏があり、ジェネシスのシアトリカルな内容にクラシックの奏法や構築美をふんだんにあしらったような楽曲になっていると思える。何よりもブリティッシュロックにありがちな陰の部分がほとんどなく、比較的に軽快で明るい感じになっているのは、ロマンティズムを好むドイツならではの土壌にあるのだろう。

 ノイシュバンシュタインはドイツでもそれなりに名の通ったグループだったが、アルバムは6,000枚ほどしか売れず、商業的に失敗に終わっている。これはよく言われるパンク/ニューウェイヴの台頭によって、ドイツでもプログレッシヴなロックが追いやられる風潮が高まっていた時期だったためである。アルバムリリース前にヴォーカルのフレデリック・ジューとベーシストのライナー・ジマーが脱退。グループも新たな方向性を考えるようになり、ヴォーカルにミヒャエル・キースリングとベーシストにヴォルフガング・ボーデが加入して以来、ソフトな音楽スタイルへと変化していくようになる。それでもドイツでは依然人気であり、ライヴではノヴァリスやルシファーズ・フレンドの前座を務めるなど奮起するが、メンバー間で広がった失望感が高まり、1980年秋にグループは解散。以後、それぞれのメンバーは職業的なキャリアを追求していくことになる。しばらく音沙汰がないまま時が過ぎ、2016年にキーボード奏者のトマス・ノイロートを中心に再結成している。ニューアルバムの『Fine Act』は、ドイツらしい叙情性を活かしたアクティヴなシンフォニックサウンドを継承しつつ、より現代的なハードでクラシカルな音楽性に進化している。35年以上経ったとはいえ、本アルバムにもあった曲の要所にフルートやアコースティックギターが使われており、ロマンティズム溢れるアンサンブルは今なお健在である。


 

 皆さんこんにちはそしてこんばんわです。今回はドイツのシンフォニックロックグループであるノイシュバンシュタインの唯一のアルバム『バトルメント』を紹介しました。過去に1992年にマネージャーだったウリ・ライヒェルトとギタリストだったロジャー・ヴァイレルによってリミックス化されたCDを持っていましたが、後に紙ジャケリマスター化されたのを機に買いなおしました。アコースティックギターの音色が良くなっていますね。1曲目の朗々としたシンセサイザーとアコースティックギターのアンサンブルは、心が躍るような気持ちを高めてくれて、こういったメロディアスな曲は改めて良いなと思います。フルートを含めて非常にアコースティカルな部分を大事にしていて、ロックのダイナミズムよりもクラシックの構築美を最大限に活かしているのがこのグループの特徴だと思っています。パンク/ニューウェイヴといった時代の流れとはいえ、これだけ高い演奏力を持っているにも関わらず、たった1枚のアルバムを残して消えてしまったというのは非常に残念ですが、良い音楽というものは時代を越えるものです。最新アルバムの『Fine Act』は、より洗練されたハードなシンフォニックサウンドになっていますが、メロディセンスは当時のままになっています。

 さて、上記にもありましたノイシュバンシュタインが、1974年にザールブリュッケンの劇場で行われたコンテストで披露したという『不思議の国のアリス』の未発表曲が、2008年にCDでリリースされているそうです。非常にファンタジックな内容になっているらしく、ジャーマン・シンフォニックロックの王道とまで言われている楽曲だそうです。そう言いつつも私自身まだ未聴で、現在でもそのCDを探している途中なのですが、これがなかなか…。やっぱり、手っ取り早くオンラインで購入しようかな~、でも直に見つけて買ったほうが思い入れが~とか1人悩んでいます。バカですね。でも気になっていることは間違いないので、どんな形であれ手に入れたいと思っています。

 本アルバムはリック・ウェイクマンにも通じる大胆なシンセサイザーの導入やジェネシス風のシアトリカルな展開を持ったドラマティックなシンフォニックロックです。ぜひ、機会があれば聴いてみてくださいな。

それではまたっ!