Cathedral/Stained Glass Stories
カテドラル/ステンド・グラス・ストーリーズ
1978年リリース
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ハモンドオルガンやメロトロンを駆使した
重厚なシンフォニックロックを奏でる
カテドラルの唯一のアルバム
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スティクスやジャーニー、ボストンといったアメリカンロックがスマッシュヒットしていた1978年に、突如として登場したカテドラルの唯一のアルバム。すでにカンサスやスターキャッスル、ファイアーバレーといったプログレッシヴロックグループは、アメリカらしい軽快さを加味したサウンドであった一方、カテドラルは驚嘆するほどのメロトロンやハモンドオルガンを駆使し、どちらかといえばヨーロッパ的ともいえる重厚なシンフォニックロックを披露した稀有なグループである。また、本アルバムのレコード原盤はスーパープレミアム化したことで、コアなマニアの間でも特に入手し難い幻のアイテムとして長年君臨してきたモンスターアルバムでもある。
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カテドラルは彗星のように現れて1枚のアルバムを残して消えたグループであるために資料が少ない。実はカテドラルが注目されたのは1980年代末の頃で、廃盤となった本アルバムがアメリカらしからぬ重厚なシンフォニックサウンドであることが分かり、ちょうど1970年代のプログレッシヴロックが発掘、CD化されつつあった時期に騒がれたのが発端である。本アルバムも発見された当初はリリースが1972年説、1978年説、1980年初頭説などが飛び交い、その後の追調査で最終的に1978年リリースに落ち着いたという経緯がある。グループの活動拠点はニューヨークだったらしく、ライヴやアルバムの録音もニューヨークで行われていたようであるが、他のローカルエリアから大都市であるニューヨークにのぼってきた可能性もある。メンバーはマーキュリー・キャロニア4世(ドラムス、パーカッション、ゴング)、フレッド・キャラン(ベース、ベースペダル、ヴォーカル)、ポール・シール(リードヴォーカル、パーカッション、ベースペダル)、トム・ドンコート(メロトロン、ハモンドオルガン、キーボード、チャイム)、ルディ・ペローネ(ギター、アコースティックギター、ヴォーカル)の5人編成である。グループの中心人物はトム・ドンコートらしく、彼が本アルバムの作曲をすべて行っている。また、それぞれが複数の楽器を使用する腕利きのミュージシャンであり、デビューアルバムとは思えないクオリティの高い作品に仕上がっている。
★曲目★
01.Introspect(自己反省)
02.Gong(ゴング)
03.The Crossing(交差点)
04.Days&Changes(デイズ・アンド・チェンジズ)
05.The Search(ザ・サーチ)
本アルバムの1曲目の『自己反省』は、グループ名であるカテドラル(大聖堂)とアルバム名のステンド・グラスから想起されるように聖歌隊のようなコーラスとメロトロンで始まる。初期のキング・クリムゾンやイエス、ジェネシスを思わせるようなキーボードワークやギターワークが特徴であり、突き抜けるような音は無いものの、押しと引きの表現力が絶妙なサウンドになっている。すでにこの1曲で彼らのヨーロッパ的な厳粛とした音楽性が垣間見える。2曲目の『ゴング』は、強引とも言えるリズムチェンジやパーカッション群が圧倒的なインストゥメンタルナンバー。効果的なパーカッション群の中で叙情的に奏でられるギターがあまりにも印象的である。3曲目の『交差点』は、崇高なコーラスから始まり、イエスのスティーヴ・ハウを思わせるギターと、リリカルなキーボードやメロトロンをバックにした壮大なシンフォニック曲になっている。4曲目の『デイズ・アンド・チェンジズ』は、ポールの伸びやかなヴォーカルソロから始まり、ファンタジックなルディのアコースティックギターとエレクトリックギターをはじめ、美しいハモンドオルガンがヨーロッパ的なリリシズムに満ちあふれた力作。5曲目の『ザ・サーチ』は、幻想的ともいえるギターと手数の多いリズムにおける静と動の対比が見事に表れたナンバー。11分に及ぶ曲でありながら、多彩な楽器によるコントラストが素晴らしく、アルバムのハイライトともいえる曲になっている。こうして聴いてみると、ヴォーカルをはじめとしたアメリカらしさは皆無に等しく、ヨーロッパ然とした叙情性や幻想美にあふれた作品であると言っても良い。先に初期のキング・クリムゾンやイエス、ジェネシスを思わせるサウンドと記したが、このグループにおいてはそんなオリジナリティの有無を考えさせる間も与えないほどの強烈な音楽性にある。それが非常に良い方向に作用しており、聴く者を終始圧倒させる実力が1曲1曲に込められている。
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カテドラルは本アルバムを発表後、アンダーグラウンドの多分に漏れず自然消滅という形でシーンから消え行くことになるが、メンバーのうちギタリストのルディ・ペローネはアコースティックギターを主体としたソロアーティストとして活躍することになる。彼の1981年にリリースしたアルバム『Oceans Of Art』は、かつてのカテドラルのメンバーがバックアップを務めており、チェロやメロトロンを使用したプログレッシヴな作品となっているという。その後、他のメンバーはしばらく音楽シーンから遠ざかっていたが、2000年代に入ってから動き始める。2003年にベーシストのフレッド・キャランがメンバーに声をかけて参集。新ギタリストにデヴィッド・ドーグを迎えて、2007年10月に29年ぶりにアルバム『ザ・ブリッジ』をリリースしている。このアルバムは当時のサウンドを受け継ぎ、さらに曲構成に磨きがかかった会心の作品となっている。復活後も現地アメリカで多数のフェスに出場したりと、現在でも精力的に活動していることから、やはり、実力あるグループは時代を越えるということだろう。それをカテドラルが身をもって証明している。
皆さんこんにちはそしてこんばんわです。今回はアメリカでは珍しいヨーロッパ然とした幻想的なサウンドが特徴のカテドラルの『ステンド・グラス・ストーリーズ』を紹介しました。このアルバムはイエッダ・ウルファと同時期にCDで入手したのですが、両方とも時代や地域に恵まれなかっただけで、これだけクオリティの高いアルバムが眠っていたというのは驚きです。イエッダ・ウルファは変態的なドラミングとハイテンションな演奏が素晴らしいグループで、カテドラル共々何度も聴いているアルバムです。アメリカってすごいな~広いな~と思いつつも、まだ埋もれているグループやアルバムがあるのではないかとついつい思っちゃいます。本アルバムを聴いたとき、パンク/ニューウェイヴが台頭していた当時のイギリスがプログレッシヴロックを淘汰していた一方で、ラジオやショップで頻繁に流れる音楽がチャートを賑わしていたアメリカでこのようなセールスに結びつくかどうか分からないアンダーグラウンドな音楽をリリースしていることを考えると、アメリカの懐の深さというか大きさを痛感してしまいます。
さて、本アルバムは上記にあるとおり、レコードの原盤は激レアどころか幻と言われるほど超プレミアムがついています。1990年にジャケットを改訂したシンフォニック社のLP盤が再プレスしましたが、皮肉にもオリジナル盤のレア度がさらに跳ね上がり、今では数万から数十万で取引されるアルバムになっているそうです。レアすぎるレコードやCDは手を出さないようにしていますが、レコードショップで数万もするレコードを見かけると、思わず立ち止まってじっと見てしまいますね。ええ…見るだけですよ。うん、目の保養です。さ~て、明日も仕事ガンバロ☆
それではまたっ!