【今日の1枚】Dice/The Four Riders Of The Apocalypse | 古今東西プログレレビュー垂れ流し

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Dice/The Four Riders Of The Apocalypse
ダイス/黙示録の4人の御使い達
1992年リリース(1977年録音)

40分を越える4つのテーマの組曲をメインとした
ダイスの幻のマテリアルアルバム

 デビューアルバムの『北欧の夢』と同時期にレコーディングされつつも、長らくリリースされることがなかった40分を越える組曲『黙示録の4人の御使い達』を収録したマテリアルアルバム。『War(戦い)』、『Discase(疾患)』、『Greed(貪欲)』、『Death(死)』の4つのテーマからなる組曲で、彼らの目指していた壮大なシンフォニックロックとなっている。今回、メンバーによってマスターテープが発見されたことにより、ベル・アンティークよりリリースされ、改めてダイスの超絶技巧の演奏とたくましい想像力を知らしめたプログレファン必携のアイテムとなっている。

 ダイスは元々、ストックホルムの進学校で出会ったギタリストのオルヤン・ストランドベルクとキーボーディストのレイフ・ラールソンの2人によって、1972年に結成されたものである。2人は他のグループにセッションミュージシャンとして参加しつつ、主に作詞作曲を常に行っていたという。1曲はデビューアルバムに収録している組曲『フォーリーズ』であり、もう1曲が本アルバムに収録している組曲『黙示録の4人の御使い達』である。この『黙示録の4人の御使い達』は、アルブレヒト・デューラーの絵画「The Horsemen Of The Apocalypse(ヨハネの黙示録の四騎士)」の版画をモチーフにしており、この絵に出会った2人はそこに描かれている『War(戦い)』、『Discase(疾患)、『Greed(貪欲)』、『Death(死)』という4人のシンボリックなライダーを見たとき、彼らの目指す音楽のテーマにぴったりのイメージだと気づいて、これをテーマにしたオール・インストゥメンタルな組曲を創作し始めたという。後にドラマーのペル・アンデルソン、ベーシストのフレデリック・ヴィルドが加わったことで本格的なツアーとライヴ活動を始め、手応えを感じた彼らは1977年にメンバーの共同出資によってスタジオを設立し、レコーディングを開始する。そのレコーディングでは本アルバムの組曲『黙示録の4人の御使い達』と組曲『フォーリーズ』、そして小曲など含めたアルバム2枚分に相当するレコーディングを行い、デビューアルバム『北欧の夢』には組曲『フォーリーズ』と小曲でまとめられた内容になっているのは承知の通りである。残された組曲『黙示録の4人の御使い達』はセカンドアルバムに収録されるはずだったが、リリースできなかった理由は定かではない。メンバーが他のグループのレコーディングの手伝いやライヴ活動を手伝ったりするなどでグループの活動がままならない状態が続いていたという話がある一方、録音したマスターテープが行方不明になったという話しさえある。10数年の月日が流れ、本アルバムがこうして表舞台に出たことは奇跡的であり、また彼らが本来目指していたイギリスのプログレに比肩するインストゥメンタルなシンフォニックロックが垣間見える作品として、1992年にCD化されたとたんプログレファンから注目されたことは言うまでもない。

★曲目★
01.War~1st Impression~(戦い~ファースト・インプレッション~)
 a.Ouverture(序曲)
 b.Fronts(前線)
 c.Battle(戦い)
 d.Deserted Battleground(見捨てられた戦場)
02.Disease~2nd impession~(疾患~セカンド・インプレッション~)
03.Greed~3rd Impression~(貪欲~サード・インプレッション~)
04.Death~4th Impression~(死~フォース・インプレッション~)
 a.Requiem(鎮魂歌)
 b.Dance Of The Death(悪魔達の舞踏)
 c.Transition(変遷)
 d.Heaven(天国)
★ボーナストラック★
05.Young Man's Delight(ヤング・マンズ・ディライト)

 本アルバムは40分を越える『War(戦い)』、『Discase(疾患)』、『Greed(貪欲)』、『Death(死)』という4つのテーマからなる組曲形式になったインストゥメンタルである。1つめのテーマの『War(戦い)』は、幕開けにふさわしい力強いアンサンブルから始まる1曲目の『序曲』から、4曲目の高らかな鐘の音で終わる『見捨てられた戦場』までの11分に及ぶ内容になっている。メインは2曲目の『前線』と3曲目の『戦い』だろう。まさにこれから戦場に向かって突き進む行進曲(マーチ)のような曲調が多く、3曲目の『戦い』は彼らの変拍子を中心とした変幻自在な演奏がより一層、混迷する戦いを物語っているようにも感じる。2つ目のテーマである『Discase(疾患)』は、戦いによって傷つき倒れた者たち、または病気による飢饉である。全体的にクラシカル調で演奏され、優しいメロトロンと激しいリフによるギターの絡みが特徴だが、4分25秒過ぎの圧巻のアンサンブルがあるなど聴き所が多いナンバーである。3つ目のテーマである『Greed(貪欲)』は、病気や飢饉によって生じた欲深き者たちのことであり、ギターによるジャズフレーズを加味したクラシカル調であり、手数の多いドラムを中心としたリズム隊が強調されたナンバーである。4分40秒からのピアノソロからコミカルな演奏に変わるあたり、まるで貪欲のむなしさや悲しさが演奏で表しているようだ。4つ目のテーマである『Death(死)』は、『鎮魂歌』らしく荘厳なオルガンから始まり、重々しいアンサンブルが続き、『悪魔達の舞踏』ではギターをメインにしたハードロック調の激しい演奏になっている。『変遷』ではハードロック調の演奏が止み、静けさを取り戻したようなオルガンとギターによるアンサンブルが流れ、最後の『天国』では、メロトロンを中心とした美しい曲にまとめられ幕を下ろしている。

 たった1枚のアルブレヒト・デューラーの「The Horsemen Of The Apocalypse(ヨハネの黙示録の四騎士)」の版画から、40分を越える組曲を創作するのは並大抵のことではなく、どれだけ彼らが作曲に時間をかけて想像力を膨らませたのか筆舌に尽くしがたい。まぎれもなく本アルバムは1970年代後期にレコーディングされたとはいえ、プログレッシヴロックの真髄といっても過言ではないほどの実力とセンスを兼ねそろえた怪作である。彼らがこの組曲を作曲してから何度もアレンジを加えてレコーディングに望んだということから、相当この組曲を大事にしていたということだろう。結果としてアルバムとして世に出るのは10数年後ということになるが、決して色褪せることはなく、逆に1990年代に次々とCD化されるプログレの名盤の中の1枚として象徴されるようになっている。契約寸前までいって、マスターテープが見つからないというハプニングで長らく延期をしていた本アルバムのCD化が、何度もメンバーと連絡を取り合いつつ実現したベル・アンティークに感謝の気持ちでいっぱいである。


 

 皆さんこんにちはそしてこんばんわです。今回は前回に紹介したダイスのデビューアルバム『北欧の夢』に続いてマテリアルアルバムとしてリリースされた『黙示録の4人の御使い達』を紹介しました。このアルバムは『北欧の夢』と同時期に購入したものです。本アルバムはデビューアルバムの『北欧の夢』の音楽性をそのままに、テーマ性が加味されたぶん、アルバムの整合性やクオリティの高さはデビューアルバムよりも上であると思っています。私としてはプログレッシヴロックの醍醐味が遺憾なく発揮している本アルバムのほうが好きです。

 さて、本アルバムのテーマとなっている組曲は、アルブレヒト・デューラーの黙示録の作品群の1つ「The Horsemen Of The Apocalypse(ヨハネの黙示録の四騎士)」の版画をモチーフとしています。ヨハネの黙示録の四騎士とは、キリストが7つの封印が解かれたときに現れる騎士のことで、第1の封印が解かれたときに「勝利」の騎士が現れ、続いてそれぞれ封印が解かれるたびに「戦争」、「飢饉」、「死」が現れるといいます。この第4の騎士はペイルライダーと呼ばれており、1985年の主演監督を務めたクリント・イーストウッドの西部劇の映画タイトルにもなっています。また、アルバムには魅力的なジャケットイラストが描かれていますが、実はギタリストのオルヤン・ストランドベルクが描いたというから驚きです。これほどインパクトのある魅力的な絵画が彼に描けるのかと思いましたが、ジャケット見開きにあるアルブレヒト・デューラーの同タイトルの作品を下絵にしたそうです。でも、単に模倣しただけでなくイメージと構図を拝借して新しい絵にしているので、オルヤン・ストランドベルクの絵画の才能も素晴らしいものです。

 ボーナストラックになっている『ヤング・マンズ・ディライト』は、1979年にレコーディング・セッションした7曲のデモのうちの1曲です。この曲は1993年にベル・アンティークからリリースされたライヴアルバム(現在は廃盤)に収録できなかった曲で、今回ボーナストラックとして初めて陽の目を見ることになったそうです。本アルバムのリリースに協力してくれたオルヤン自身がとても気に入っている曲だそうです。

それではまたっ!