【今日の1枚】Focus/Focus At The Rainbow | 古今東西プログレレビュー垂れ流し

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Focus/Focus At The Rainbow

フォーカス/フォーカス・アット・ザ・レインボー

1973年リリース

フォーカスの圧倒的なパフォーマンスに

魅了された伝説のライヴアルバム

 1973年5月4日、5日のイギリスのロンドンの名門コンサートホール、レインボー・シアターで行われたフォーカス初のライヴアルバム。全英ツアーの最初のライヴであり、両日ともライヴ・レコーディングされ、BBCのTV番組用の映像も収録されたというそのライヴアルバムは、その2日間のレコーディングから選曲され、ミックスされたものである。前作の『ムーヴィング・ウェイブス(フォーカスⅡ)』、『フォーカスⅢ』と立て続けにアルバムが大ヒットした後のライヴだったこともあり、曲目はその2つのアルバムを中心に収録されている。アナログ盤の収録時間の問題で数曲は見送られているものの、その曲構成は素晴らしく、ベスト・オブ・フォーカス的な仕上がりになっているのが大きな特徴である。また、フォーカスのベストメンバーによる4人のパフォーマンスが収録された最後のアルバムであり、その圧倒的な演奏テクニック、構成美、録音といった高い充実度は、数あるロックのライヴアルバムの中でも上位に君臨するほどの伝説のアルバムとなっている。

 

【曲目】

1.FocusⅢ(フォーカスⅢ)

2.Answers? Questions! Questions? Answers!

 (アンサーズ?クエッションズ!クエッションズ?アンサーズ!)

3.FocusⅡ(フォーカスⅡ)

4.Eruption [Excerpt](イラプション)[抜粋]

 a.Orfeus(オルフェス)

 b.Answer(アンサー)

 c.Orfeus(オルフェス)

 d.Answer(アンサー)

 e.Pupilla(パピラ)

 f.Tommy(トミー)

 g.Pupilla(パピラ)

5.Hocus Pocus(悪魔の呪文)

6.Sylvia(シルヴィア)

7.Hocus Pocus(Reprise)(悪魔の呪文)[リピート]

 

 アルバム1曲目の『フォーカスⅢ』は、タイス・ヴァン・レアの静粛な中からの荘厳で美しいクラシカルなオルガンから始まり、ヤン・アッカーマンのリリカルなギターが加わり、次第にアンサンブルとなって盛り上がっていく流れだが、フォーカスの世界観に誘うような臨場感あふれるこの曲を最初に持ってきたのは、ある意味成功だと思われる。タイス・ヴァン・レアのオルガンが「静」を担うのに対して、ヤン・アッカーマンのギターが「動」を担うのを表したのが2曲目の『アンサーズ?クエッションズ!クエッションズ?アンサーズ!』だろう。原曲よりもオルガンとギターの対比が凄まじく、聴き手を翻弄するような緩急を交えた展開は、彼らのずば抜けた演奏テクニックによるものが大きい。3曲目の『フォーカスⅡ』は、タイス・ヴァン・レアのオルガンを中心にしたメロディアスな楽曲だが、繊細でありながら巧みなピッキングを披露するヤン・アッカーマンのギターは息を呑むほど美しく、タイス・ヴァン・レアのオルガンをはじめとしたリズム隊がしっかり支えているのが良く分かる。4曲目の『イラプション』は、タイス・ヴァン・レアのオルガン上でヴァイオリンのように弾くヤン・アッカーマンのギターに、思わず戦慄さえ覚えてしまうほど、「静」と「動」の演奏が際立った楽曲となっている。5曲目の『悪魔の呪文』はライヴの中でも最大の聴きどころであり、エッジの効いたヤン・アッカーマンのギターとタイス・ヴァン・レアのヨーデル風のスキャットが冴えわたっており、スピーディーに交互に展開される。原曲よりもとにかく早いテンポで行われているハードな内容なのにも関わらず、まったくブレのない演奏であるのは驚愕である。6曲目の『シルヴィア』は、ハードな『悪魔の呪文』から一転して、ヤン・アッカーマンの美しいギターの旋律とタイス・ヴァン・レアの柔らかなオルガンが全編にあふれた美しい内容になっており、最後の『悪魔の呪文』のリピートで幕を下ろしている。こうして聴いてみると、最初から最後まで息をつかせぬほど、4人のパフォーマンスは素晴らしく、最後の曲を聴き終えた後の余韻すら心地いいものになっている。42分という収録時間が短く感じられるほど完成度は高く、彼らの力量が遺憾なく発揮されたライヴアルバムの傑作であることは間違いないだろう。

 フォーカスは元々、ジャズに強く影響されたミュージシャンであり、スタジオアルバムで表現しきれないインプロヴィゼーション(即興)の部分をライヴというパフォーマンス下で表現しているに過ぎない。ソロパフォーマンスやインタープレイの見事な演奏テクニックは、各メンバーが音楽紙の楽器別人気投票で入賞を果たしているのが証明しているといえる。とくにギタリストのヤン・アッカーマンが、当時イギリスで名高いエリック・クラプトンやジミー・ペイジ、ジェフ・ベック、スティーヴ・ハウといった実力あるギタリストを押さえて1位に輝いたことを見ても、本アルバムのアッカーマンのオリジナリティにあふれたギターソロやセンスは圧巻である。アルバムは1973年10月にレインボー・シアターをあしらった観音開きのジャケットでリリースされ、全英アルバムチャートで5週連続でチャートインして最高位23位、全米アルバムチャート132位、母国オランダでは初登場10位となり、翌週で9位を記録している。グループにとって次のアルバムに向けての繋ぎの意味合いが強い内容だったが、世界的に成功したフォーカスの集大成がここにあるといっても過言ではないだろう。

 

 皆さんこんにちはそしてこんばんわです。今回はフォーカスの初のライヴアルバム『フォーカス・アット・ザ・レインボー』を紹介しました。前回の『フォーカスⅢ』に続いてフォーカスのアルバムの連投になります。このアルバムは初めて聴いたフォーカスのアルバムでして、一発で虜になった思い入れが強いアルバムでもあります。「ロックのライヴアルバムの中で、どれが一番好きですか?」と質問されたら、間違いなく本アルバムを挙げます。それほど演奏パフォーマンス、曲構成、録音にいたる全ての内容が素晴らしいと考えています。フォーカスはタイス・ヴァン・レアのオルガンとヤン・アッカーマンのギターをはじめとした各メンバーの演奏とセンスの高さに定評のあるグループですが、ライヴでさらに昇華した感があります。息を呑む演奏とはこういうことなんだと実感したライヴアルバムだと今でも思っています。その後にフォーカスのスタジオアルバムを聴いたのですが、ライヴ盤のほうがピッチが速く、それでいて緊迫感が半端ないです。完璧に演奏しきったフォーカスのパフォーマンスを見た英国の人たちはどう感じたのでしょうね。きっと度肝を抜かれたのではないかと思っています。

 

 アルバムに関しては様々な評価があり、ベン・デイヴィーズはオールミュージックにおいて5点満点中3点を付け、アルバム全体に関しては「パフォーマンスはとにかく驚くしかない、『悪魔の呪文』に関してはスタジオ版の何倍も速く、スタジオ版しか知らない人々は、間違いなく衝撃を受けるだろう」と評しており、別の音楽紙では「それぞれの演奏パートが素晴らしく、まるでクラシックコンサートのようにじっくり聴くことができる唯一無二のロックのライヴアルバム」と言われているそうです。私もライヴアルバムに限らず、フォーカスを知ってもらうには本アルバムを一番に推します。それだけ『アット・ザ・レインボー』が彼らの代表作に留まらず、オランダというロックミュージックにおけるローカルエリアから登場し、世界的に登りつめた作品でもあるからです。

 

 あれから40年に近い月日が流れても、彼らの圧倒的な演奏パフォーマンスには驚かされるばかりです。フォーカスが当時、第一級のグループであったことがよく表れた最高のライヴアルバムです。ぜひじっくり聴いて堪能してほしいです。

 

それではまたっ!