【今日の1枚】Gentle Giant/Octopus(オクトパス) | 古今東西プログレレビュー垂れ流し

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ロック(プログレ)を愛して止まない大バカ…もとい、音楽が日々の生活の糧となっているおっさんです。名盤からマニアックなアルバムまでチョイスして紹介!

Gentle Giant/Octopus

ジェントル・ジャイアント/オクトパス

1972年リリース

摩訶不思議な音楽性と複雑な構成が全編にあふれた

完成度の高い4枚目のアルバム

 ほとんどのメンバーが複数の楽器を巧みに使い分け、変拍子の嵐と複雑な構成と楽曲、緻密なアンサンブルとハーモニーが妙と評されたジェントル・ジャイアント。他のプログレッシヴロックとは一線を画した卓越した演奏力と独特の表現力が高い人気を誇っているグループである。本アルバムは衝撃のデビューアルバムから4枚目にあたり、ますますサウンドに磨きがかかり、本国のイギリスよりもカナダやアメリカに注目され、彼らの人気を不動のものにした傑作である。

 ジェントル・ジャイアントは元々、サイモン・デュプリー&ザ・ビッグ・サウンドをやっていたフィル、デレク、レイの3人のシャルマン兄弟によって結成されたグループである。彼らはスコットランドのグラスゴー出身で、最初はハウリン・ウルフズというグループを組んでR&B色の強い演奏を行っている。その後、ロード・ランナーズと名を変えて、1967年にサイモン・デュプリー&ザ・ビッグ・サウンドというグループ名でバーロフォン・レコードと契約を結び、『Kites』という曲が全英9位のヒットとなる活躍をしている。しかし、レコード会社の要請もあって、だんだんコマーシャル的な方向に向かうことに疑問を持ったシャルマン兄弟は、グループを解散させて自分たちの理想的な音楽を共に追求できるメンバーを探すことになる。そしてキーボーディストにケリー・ミネア、ギタリストにゲイリー・グリーン、ドラムスにマーティン・スミスをメンバーに迎えてジェントル・ジャイアントというグループ名で活動を開始する。3人のシャルマン兄弟は元より、それぞれが高い水準の演奏力とキャリアの持ち主ということもあり、彼らの登場はかなり注目されたらしい。すぐにフィリップス傘下で誕生していたヴァーティゴレーベルと契約し、1970年にファーストアルバム『ジェントル・ジャイアント』をリリースする。そのアルバムは高度で複雑なプレイがリスナーに高く評価され、一躍グループの名が知られるようになる。

 

 4枚目のアルバムとなる『オクトパス』は、ファーストアルバムから培ってきた演奏技術はそのままに、さらにサウンドが研ぎ澄まされたと言ってよい。変拍子やポリリズムの中で多彩なジャンルの楽器が入り乱れているものの、アンサンブルやコーラスワークがきちんと1本の芯となって直線的に響いている。その音楽性と芸術性から初期のジェントル・ジャイアントの作品の中でも特に人気の高い傑作とされている。メンバーはデレク・シャルマン(ヴォーカル)、レイ・シャルマン(ヴォーカル、ベース、ヴァイオリン)、フィル・シャルマン(ヴォーカル、サックス、トランペット)、ケリー・ミネア(キーボード)、ゲイリー・グリーン(ギター)、ジョン・ウェザース(ドラムス)の6人となっており、ドラムスだけ初期のメンバーから変わっている。ドラムスのジョン・ウェザースは元ビッグ・スリープというグループにいたドラマーで、超絶プレイで有名なアーティストである。本アルバムではドラム以外に木琴やシロフォンも演奏している。

 

★曲目★

01.The Advent of Panurge(パナージの到来)

02.Raconteur Troubadour(おしゃべりな吟遊詩人)

03.A Cry for Everyone(クライ・フォー・エヴリワン)

04.Knots(ノッツ)

05.The Boys in the Band(ボーイズ・イン・ザ・バンド)

06.Dog's Life(ドッグズ・ライフ)

07.Think of Me with Kindness(シンク・オブ・ミー・ウィズ・カインドネス)

08.River(リヴァー)

 

 アルバムの1曲目『パナージの到来』は、ヴォーカルとリズムが巧みに絡みつき、トランペットやキーボード、ギターが繊細に展開していく独特な曲になっている。2曲目の『おしゃべりな吟遊詩人』は、クラシカルでありながらジプシー的な味わいがあり、複雑な展開の中で美しいメロディが際立った曲になっており、3曲目の『クライ・フォー・エヴリワン』は、一転してハードなギターとオルガンがもつれ合うように深化していく。4曲目の『ノッツ』は、複雑なコーラスワークと現代音楽的なアプローチがあり、イエスにも通じる構築美が聴けるナンバーとなっている。5曲目の『ボーイズ・イン・ザ・バンド』は、早いテンポの中でくるくると変わるアクセントが、変拍子好きにはたまらないインストゥメンタル曲になっている。6曲目の『ドッグズ・ライフ』はアコースティックギターとヴォーカルをベースとした牧歌的なサウンドであり、7曲目の『シンク・オブ・ミー・ウィズ・カインドネス』は、ピアノとヴォーカルをベースにしており、時折バックで流れるシンセサイザーとサックスがより叙情的なサウンドに仕上げている。8曲目の『リヴァー』は、空間的なシンセサイザーの中でヴォーカルとギターが冴えわたっており、アルバムの中でも一番ロックっぽいサウンドになっている。とりわけ、本アルバムの特徴としてドラマーのジョン・ウェザースの加入が大きい。彼の独特ともいえるドラミングがジェントル・ジャイアントのサウンドをより先鋭化させ、複雑な展開の中でもクラシカルな面やハードな面を作り出せたことで完成度の高い作品となっている。

 数あるプログレッシヴロックのグループの中で、ジェントル・ジャイアントほど人気と評価の分かれるグループは少ないだろう。メンバーの変遷ごとにサウンドが変化したのも理由だが、他のジャズやクラシック、民族音楽といった音楽的アプローチのあるプログレッシヴロックと違い、ひとつのイメージに収まりにくいからだろうと思われる。あまりにもバラエティに富んだ豊か過ぎる表現力は、かえって特異な存在となり、一歩間違えると敬遠されてしまうことがある。しかし、その奥深いサウンドの魅力に気がつくと、なかなか抜け出せない世界を持っているのがこのジェントル・ジャイアントである。グループはこの4枚目のアルバム『オクトパス』でセールス的に上向き、とくにアメリカやカナダで高く評価されたという。様々なジャンルと取り込んだテクニカルバンドとして、1980年の解散まで11枚のアルバムをリリースしている。

 

 皆さんこんにちはそしてこんばんわです。今回は人気の高いジェントル・ジャイアントの4枚目のアルバム『オクトパス』を紹介しました。ジェントル・ジャイアントはプログレを聴き始めた初期の段階で入手していますが、ほとんどそのサウンドを理解することができずに、長い間CD棚で埃をかぶっていたものですが、2009年頃にシャルマン兄弟を抜いた元メンバーで再結成したのを聞いて、改めて聴いたのがこの『オクトパス』でした。年を重ねて気持ちに余裕が出たからでしょうねぇ~、変拍子が今でもたまらないアルバムとして大事にしています。ファーストアルバムを評価する方も多いと思いますが、私としては多彩な楽器と変拍子の中でもちゃんとメロディのある本アルバムを高く評価しています。

 

 ジェントル・ジャイアントは本国イギリスであまり評価が得られず、商業的には成功したグループとは言えませんが、遠く離れたイタリアやカナダ、アメリカで特に人気が高かったといわれています。とくにカナダのエト・セトラというプログレグループは、英国のジェントル・ジャイアントから影響されたと公言しています。本国以外で注目されているというのは面白いところですが、それだけ特異なグループだったことがよく分かります。無論、日本でも紹介されましたが、地味なイメージが災いしてかヘヴィなプログレファン以外は、なかなか注目されなかったと聞いています。しかし、私がCDで初めて聴いた90年代初期の頃より、確実に聞き手が増えている気がします。紙ジャケになったのも大きいですが、やっぱりサウンド自体が時代を先取りしすぎたんでしょうね。プログレというのは時代を超えるといいますが、ジェントル・ジャイアントはまさに今聴いても新鮮です。ぜひ、この機会に聴いてみてはいかがでしょうか? 虜になることは間違いなしです。

 

それではまたっ!