【今日の1枚】Fruupp/Seven Secrets(フループ/七不思議) | 古今東西プログレレビュー垂れ流し

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Fruupp/Seven Secrets

フループ/七不思議

1974年リリース

叙情派シンフォニックロックの代表格である

フループのセカンドアルバム

 フループは北アイルランドのベルファスト出身のメンバーで構成されたグループで、伝統的なフォークのメロディをベースにした叙情派シンフォニックロックの代表格となっている。本アルバムは1974年にリリースされたセカンドアルバムであり、4枚リリースされている彼らのアルバムの中でもっともアコースティック色が強く、美しいメロディで綴られた作品として人気の高い1枚である。

 フループの結成の経緯は、1969年からギタリストのヴィンセント・マッカスカーを中心としたブルース・バイ・ファイヴというグループに遡る。当初は北アイルランドのベルファストのパブ回りを中心にブルースのカヴァーなどを演奏していたが、新たにメンバーに加わったキーボード奏者のステファン・ヒューストンがユース・オーケストラ出身ということも相まって、飛躍的にプログレッシヴな音楽性に目覚めていくことになる。しかし、地元ではあまり受け入れられなかったため、本土であるイングランドに遠征しつつ、2年近くほぼ連日のようにライヴ活動を行っている。ジェネシスやクイーン、キング・クリムゾンの前座を務めるなど、次第にイングランドでも評判を呼ぶようになったが、彼らの活動ベースが北アイルランドだったため、なかなかレコード会社の目に留まることはなかったと言う。そんな中、当時ジョーン・ジーやクレイヴィ・トレイン、ヘロンといった新進気鋭のプログレッシヴロックグループを世に送り出したドーン・レーベルと契約を交わし、1973年10月にデビューアルバム『Future Legends(知られざる伝説)』をリリースすることになる。本作の『Seven Secrets(七不思議)』はデビューアルバムから半年後にリリースされていることから、レーベルがフループをどれだけ高く評価し、力を入れていたのかがよく分かる。

 

 本アルバムのメンバーは、ギタリストのヴィンセント・マッカスカーの他に、ベースとリードヴォーカリストのピーター・ファレリー、キーボードとオーボエのステファン・ヒューストン、ドラムスのマーティン・フォイの4人で、プロデュースにはデヴィッド・ルイスが担当している。このプロデュースに関してはフループの4枚のアルバムそれぞれ違っており、4枚目のアルバムには元キング・クリムゾンのイアン・マクドナルドが担当しているなど、プロデュースする担当者の違いによってアルバムの特徴が大きく変わっている。本アルバムはアコースティック志向の強いシンフォニックサウンドが特徴で、インストゥメンタルのパートが多いながらも、どの楽器もまったく主張しないアンサンブルを重視した演奏がポイントになっている。アルバムタイトルの『Seven Secrets(七不思議)』とあるように7つの曲で構成されており、それぞれプロテスタントやカトリックの両方の教会が多い北アイルランドならではの美しく味わい深い楽曲が並んでいる。

 

★曲目★

01.Faced With Shekinah(フェイスド・ウィズ・シェキーナー)
02.Wise As Wisdom(ワイズ・アス・ウィズダム)
03.White Eyes(ホワイト・アイズ)
04.Garden Lady(ゴールデン・レディ)
05.Three Spires(スリー・スパイアーズ)
06.Elizabeth(エリザベス)
07.The Seventh Secret(七不思議)


 アルバムの1曲目を飾る『フェイスド・ウィズ・シェキーナー』は、ステファン・ヒューストンのオーボエとストリングを中心に、変拍子ながらブルージーなヴィンセント・マッカスカーのギターが冴える曲になっている。2曲目の『ワイズ・アス・ウィズダム』は、フォーク風のメロディの中でハモンドオルガンとアコースティックギターのアンサンブルが美しい曲であり、3曲目の『ホワイト・アイズ』は、どこかノスタルジックでありながらどの楽器も主張を抑えた優しいメロディが全編に広がる曲になっている。4曲目の『ゴールデン・レディ』は、ブルースとクラシックの両面が混在した曲であり、ヴィンセント・マッカスカーの味のあるギターソロが聴けるナンバー。5曲目の『スリー・スパイアーズ』は、フループらしい叙情的メロディにのせたヴォーカルとアコースティックギターがセンチメンタルな気持ちにさせてくれる美しい楽曲であり、6曲目の『エリザベス』は、聖母マリアの従姉妹の聖エリザベートを曲にしたものであり、どこか宗教的でありながら荘厳な雰囲気に包まれたクラシカルな曲になっている。7曲目『七不思議』は、アコースティックギター上で語りのある曲で、アルバムの最後を締めくくっている。

 サウンドそのものはプログレッシヴロックでありがちなシャープさやインパクトには欠けるものの、前作の『Future Legends(知られざる伝説)』よりも確実にメンバーの成長が伺える内容になっている。ハモンドオルガンを導入したことで曲に厚みが増すと同時に、宗教性を感じさせるテイストが強くなっているのは、キーボード奏者のステファン・ヒューストンの影響が大きい。『フェイスド・ウィズ・シェキーナー』と『エリザベス』の2曲をステファンが作曲しているが、フループの通常のロックのリズム様式とは違う音楽性に合わせた素朴なサウンドは、他のシンフォニックプログレには無いフループ独特の味わいと個性になっている。3枚目のアルバム『太陽の王子』でステファン・ヒューストンは脱退してしまうが、キーボード奏者のジョン・メイソンに代わり、最高傑作と呼ばれている4枚目のアルバム『モダン・マスカレイズ』でも、その個性ともいえる音楽性は失われずに至っている。フループは解散までにリリースされた4枚のアルバムは、1973年~1975年の2年あまりの短い期間だったが、急進的に発展するプログレッシヴロックの中でも埋もれない確かな魅力にあふれたサウンドがここにある。

 

 皆さんこんにちはそしてこんばんわです。今回は北アイルランド出身のプレグレッシヴロックグループ、フループの『Seven Secrets(七不思議)』を紹介しました。フループといえばやはり彼らの最高傑作と言われている『Modan Masquerades(当世仮面舞踏会)』が人気が高いですね。でも、私としては同じフループだとしてもステファン・ヒューストンのいた初期3アルバムと分けています。本アルバムは、そんなヒューストンがマッカスカーとともにソングライティングをした素晴らしいアルバムでもあります。

 

 さて、アルバムは聴いてもらえば分かるとおり、フォークをベースにしているため非常に温かみのあるサウンドになっています。シンフォニックなプログレッシヴのクラシックなアプローチと、ややキャメル風の中世のフォークのような感じと言ったところでしょうか。プログレにありがちな超絶技巧とか、変幻なリズムとか、荘厳なオーケストレイションとかを期待したわけではありませんが、誰もが最初の印象は地味だなと感じるかもしれません。しかし、何度か聴いているとこれがアンサンブルの妙かと思うような味わいが出てきて、得がたい魅力に変わっていきます。ブルージーなギター、素朴なハモンドオルガンやストリングス、音質的に軽いけど手数の多いドラム、牧歌的なヴォーカルなど聴きどころが多いですが、やはり、伝統的な英国フォークを基調としたハーモニーとメロディの美しさに尽きます。フループが叙情的シンフォニックロックと言われる理由が、そんな彼らの微妙な風合いのサウンドにあると思っています。

 

 本アルバムはそんな彼らの素直な楽曲がもたらした温もりのあるシンフォニックロックになっています。ぜひ、興味のある人は聴いてほしい1枚です。

 

それではまたっ!