【今日の1枚】Fields/Fields(フィールズ) | 古今東西プログレレビュー垂れ流し

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Fields/Fields

フィールズ/フィールズ

1971年リリース

アグレッシヴなオルガンサウンドが炸裂する

フィールズの唯一のアルバム

 元ツインキーボードで一世風靡したレア・バードを脱退したグラハム・フィールドが結成したフィールズの唯一のアルバム。そのサウンドは重厚なオルガンやメロトロンを駆使したキーボードプレイが魅力的となっており、典型的ともいえる英国然としたメロディアスなサウンドになっている。プロコル・ハルムをやや意識したようなレア・バードの音楽性を引き継ぎ、その独特ともいえるアグレッシヴなサウンドはプログレッシヴ・ロックの傑作としていまだに人気が高い。

 フィールズは1971年に元レア・バードの創設メンバーだったグラハム・フィールドを中心に結成したグループである。レア・バードの内紛で脱退したグラハムは、音楽を辞めてかつて目指していた教師の道に進もうかと悩んでいたいう。そんな悩みを親交のあるキング・クリムゾンのロバート・フリップに相談したところ、「もう一度やってみては?」と言われて、彼はロバートからグループに立ち上げから運営方法、メンバーの相談までしている。グラハムはCBSから3年間のアルバムの契約を結ぶことに成功し、さらにロバート・フリップから自身のアルバムに参加していたドラマーのアンドリュー・マカロックを紹介している。彼はキング・クリムゾンのアルバム『リザード』に参加していたドラマーであり、『リザード』収録後のライブリハーサル中に、ゴードン・ハスケルがロバート・フリップと険悪となったことで脱退。予定されていたライブ活動が中止となり、マカロックも同時にグループから離脱した経緯を持っている。さらにマカロックは過去にルームシェアをしていた音楽仲間で、ギターとベースのダブルネックプレイヤーであるアラン・バリーをグラハムに紹介。彼は1960年代からThe Dowlandsのバックバンドを経て、サイケデリックグループであるThe Actressを結成。さらにShy Limbsで演奏してきた凄腕のアーティストである。グラハムはマルチプレイヤーだったアランを説得して、ベースに専念させて、トリオグループであるフィールズが結成されることになる。メンバーと楽器編成は、グラハム・フィールド(オルガン、エレクトリックピアノ、ピアノ)、アンドリュー・マカロック(ドラム、トーキングドラム)、アラン・バリー(ヴォーカル、ギター、アコースティックギター、ベース、メロトロン)である。グラハムを含めたフィールズのメンバーが、キング・クリムゾンと同郷のイングランド南西部のドーセット州出身だったこともあり、ドーセット州のコネクションを得て結成されたフィールズは、当初キング・クリムゾンとレア・バードを結ぶスーパーグループとして話題になったという。こうして彼らは早速スタジオに入り、リハーサルを開始。数ヵ月をかけてレコーディングを行い、結成した同年の1971年にデビューアルバムとなる『フィールズ』がリリースされる。アルバムはマカロックの軽快なリズムに乗せたグラハム・フィールドの重厚でアグレッシヴなオルガンが冴えており、ファンキーでありながらクラシカルな要素を押さえたメロディアスな作品となっている。

★曲目★
01.A Friend Of Mine(ぼくの友だち)
02.While The Sun Still Shines(太陽のある限り)
03.Not So Good(ノット・ソー・グッド)
04.Three Minstrels(3人の詩人)
05.Slow Susan(スロー・スーザン)
06.Over And Over Again(何度も何度も)
07.Feeling Free(フィーリング・フリー)
08.Fair-Haired Lady(金髪の女)
09.A Place To Lay My Head(頭を休める場所)
10.The Eagle(イーグル)

 アルバムの1曲目の『ぼくの友だち』は、1973年にシングルカットされ、クラシカルなオルガンが豪快に鳴り響くフィールズの代表曲。軽快なリズムに乗せたバッハ風のメロディが幾重にも重ねられており、プロコル・ハルムを彷彿するような佳曲となっている。2曲目の『太陽のある限り』は、アラン・バリーが手掛けたオルガンとギターによるハードロック調の楽曲。パーカッシヴなオルガンとアラン・バリーのブルージーがギターのインタープレイが聴きどころである。3曲目の『ノット・ソー・グッド』は、プロコル・ハルムらしいメロディとアランのヴォーカルが印象的な曲になっており、4曲目の『3人の詩人』は、独特のリズム上で奏でられる曲調がなかなか面白いナンバー。5曲目の『スロー・スーザン』は、スローテンポのオルガンを中心としたインストゥメンタル曲。静寂な雰囲気の中でゆったりとしたオルガンが、後を引くような余韻を残している。6曲目の『何度も何度も』は、一転してヘヴィーなオルガンと重いベースを中心としたプログレッシヴハード調の楽曲。跳ねるようなドラミングとアグレッシヴなオルガンが一体となるところはエマーソン・レイク&パーマーを彷彿とさせ、1曲目よりもこちらを好むファンが多い。7曲目の『フィーリング・フリー』は、オルガンとピアノをバックにアランのヴォーカルが冴えた英国らしい牧歌的な楽曲。短いながらも非常に端正なキーボードロックを聴かせてくれる。8曲目の『金髪の女』は、アランのアコースティックギターの弾き語りとなったフォーク調の楽曲。クラリネットが伴奏しているのが、いかにも英国風である。9曲目の『頭を休める場所』は、アランが作曲したもので、ややブルース調のオルガンロックとなった楽曲。アランのエレクトリックギターがしっかりとフィーチャーされており、後半のオルガンとギターによるアンサンブルはアメリカンを意識した内容になっている。最後を飾る曲『イーグル』は、アランとグラハムの共作でパッヘルベルの『カノン』を挿入したクラシカルな曲。メロトロンを大きく取り入れたドラマティックな展開が聴きどころの力作になっている。こうしてアルバムを聴いてみると、グラハムのオルガンがアグレッシヴでありながら非常に端正であり、聴きやすいフレーズが散りばめられている好印象である。また、アランのベーシストだけではないギタリストとしての才能が見受けられ、3人それぞれが持ち前の腕前で真摯に演奏をしていることが分かる。

 フィールズはアルバムをリリースした後、積極的にヨーロッパを中心にフェスティバルやライブツアーを行って成功を収めている。しかし、アラン・バリーが脱退してソロ活動することになり、代わりに元スーパートランプのフランク・ファレル(ヴォーカル、ギター、アコースティックギター、ベース)が加入。2枚目のアルバムをレコーディングして、8割完成していた矢先にCBSのロンドンのA&Rのスタッフが突然解雇され、アメリカから新たなスタッフが派遣される。そのスタッフはザ・バーズのようなフォークロックサウンドを求めていたらしく、プログレッシヴロックというものをあまり理解せず、さらに本国イギリスでは商業的な成果を上げることができていないフィールズにレコード会社であるCBSは一切サポートをしないことを宣言される。グラハムはレコード会社に自分たちの音楽性を否定された仕打ちに嫌気を差してグループを解散し、ロックビジネスから離れてクラシックの世界に転向することになる。一方、ドラマーであるアンドリュー・マカロックは、ディヴ・グリーンスレイドが結成したグループ、グリーンスレイドのメンバーとなって活躍。その後はしばらくセッションミュージシャンとして活動をするが、音楽シーンから離れて現在では英国王立のヨット協会の指導者となっている。また、脱退したアラン・バリーはソロ活動後、1977年にKing Harryというグループを結成することになる。グラハムは一時期音楽ビジネスから身を引いたが、テレビ番組のサウンドトラックの作曲やアレンジを行い、その後地元であるドーセットに戻り、プール・アーツ・センター(現在のライトハウス)で音楽プログラミングの仕事を28年行ったという。2010年に退職後は弦楽四重奏団やオラトリオ、オペラ向けの作曲を行い、ウェセックス・コンソートという合唱隊のための音楽に専念し、2枚のアルバムを録音している。2015年には未発表に終わったセカンドアルバム『Contrasts:Urban To Country Peace』が、グラハム監修の下でリリースされ、ファンを大いに喜ばせている。

 

 皆さんこんにちはそしてこんばんわです。今回は元レア・バードのグラハム・フィールドを中心としたトリオグループ、フィールズのデビューアルバムを紹介しました。フィールズは紙ジャケで7、8年前に手に入れましたが、その前はレコードやCDがなかなか高価で、ショップで見かけても指をくわえて見ているだけだった記憶があります。初めてCDとして購入できたのは中古で1991年にエピック・ソニーからリイシューされたものです。オルガンロックとひと言で片づけてしまうには惜しいほどの記憶に残るメロディが素晴らしく、かなり長く愛聴していました。今では2019年のリマスター盤の『スロー・スーザン』と『頭を休める場所』のオルタナティヴ・バージョンが収録されているものを現在購入できており、個人的に重宝しています。フィールズは日本ではあまり知名度がないですが、イギリス以外のヨーロッパでは人気が高く、アルバムは当時ヨーロッパ各国をはじめ、中東イスラエルやニュージーランド、カナダにまでリリースされています。彼らのプログレッシヴな感性をレコード会社が気づいていれば、もしかしたらプロコル・ハルムと並ぶグループになり得たかも知れません。

  さて、当時はレア・バードはまだ聴いておらず、その音楽性がどういうものか興味津々でした。実際に聴いてみると、グラハムのクラシカルでありながら独特なアプローチのオルガンが素晴らしく、彼が意識していたというプロコル・ハルムとはまた違った聴きやすいサウンドとメロディーが心地よく、個人的にとても気に入っています。最後の曲『The Eagle』のメロトロンをフィーチャーしたクラシカルな展開なんて、まさにプログレッシヴロックそのものだと思います。彼らの作り出すサウンドには余裕が感じられ、次こそはキング・クリムゾンを彷彿するようなプログレッシヴな楽曲ができるだろうと感じられていたものの、その一端が見えたところで解散なんて残念で仕方がありません。

 そんな8割完成していたというセカンドアルバムですが、先述の通り、レコード会社であるCBSに棚上げされたことはお伝えしました。長らくお蔵入りにされてしまいましたが、2015年にグラハム・フィールドの協力を得て42年ぶりにリマスター化されています。その内容はオルガンやピアノはもとよりヴァイオリンをフィーチャーしているなど、より洗練されたクラシカルなアルバムになっています。ぜひ、機会があったら聴いてみてくださいな。

それではまたっ!