【今日の1枚】Greenslade/Bedside Manners Are Extra | 古今東西プログレレビュー垂れ流し

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Greenslade/Bedside Manners Are Extra
グリーンスレイド/ベッドサイド・マナー・アー・エクストラ
1973年リリース

より洗練されたツインキーボードによる

アンサンブルが魅力となった傑作アルバム

 元コロシアムの中核メンバーとして活躍してきたキーボード奏者ディヴ・グリーンスレイドが中心となって結成されたグリーンスレイドのセカンドアルバム。ファーストアルバムではジャズとブルース、そしてプログレッシヴロックが見事に溶け合ったドラマティックなアンサンブルを披露したが、本アルバムではさらに洗練された重層なツインキーボードの演奏とメロディアスな楽曲が全編にあふれており、彼らの最高傑作との呼び声の高い1枚となっている。ファーストに続いてロジャー・ディーンの描いた幻想的なジャケットイラストも相まって、現在でもプログレファンから根強い人気を誇っている。

 グループの中心的存在であるディヴ・グリーンスレイドは、1943年1月18日にイギリスのサリー州のウォーキングで生まれている。彼はクラシックピアノを習う家庭で育ち、1968年に学生時代にジョン・ハインズマン(ドラムス)、トニー・リーヴス(ベース)らと共にジャズを演奏するアマチュアグループを結成。その流れでサックス奏者のディック・ヘクトール=スミスやヴォーカル兼ギタリストのジェイムス・リザーランドを加えて結成したコロシアムというグループで、キーボーディストとしてめざましい活躍をしていくことになる。しかし、1971年になるとライヴアルバムの名盤として名高い『コロシアム・ライヴ』を発表して、人気絶頂のまま解散する。その後、コロシアムの中心メンバーであったジョン・ハインズマンは、天才ギタリストのアラン・ホールズワースを擁したテンペスト、同じくギタリストのゲイリー・ムーアを擁したコロシアムⅡといったハードロック寄りの超絶技巧のグループを結成して活躍していくことになる。一方のディヴ・グリーンスレイドは、モダンジャズグループであるイフに参加したが、もっとキーボードを主体としたグループを作りたいと考えてすぐに脱退。元コロシアムのメンバーだったトニー・リーヴスと相談したところ、グループの結成に大いに賛成したという。メンバーには他に元キング・クリムゾン、フィールズのドラマーだったアンドリュー・マカロック、元ウェヴやサムライで活躍してきたキーボード奏者のディヴ・ローソンを迎えて、ディヴ・グリーンスレイドの名を冠にしたグリーンスレイドというグループを結成する。ワーナーと契約した彼らは、1973年にデビューアルバム『グリーンスレイド』を発表。煌びやかなツインキーボードを中心とした本格的なシンフォニックロックとなっており、何よりもイエスのカヴァーデザインで著名なアーティストとなっていたロジャー・ディーンのジャケットアートが注目されたという。同年には早くもセカンドアルバム『ベッドサイド・マナーズ・アー・エクストラ』を発表。ファーストアルバムではディヴ・グリーンスレイドとトニー・リーヴスの2人がアルバムのプロデュースを行っていたが、本作では全員がプロデュースを行っており、メンバーの結束がより感じられる完成度の高い作品に仕上がっている。

 

★曲目★

01. Bedside Manners Are Extra(ベッドサイド・マナーズ・アー・エクストラ)
02. Pilgrims Progress(ピルグリム・プログレス)
03. Time to Dream(タイム・トゥ・ドリーム)
04. Drum Folk(ドルム・フォーク)
05. Sun Kissed You're Not(サン・キスイド・ヨア・ノット)
06. Chalk Hill(チョーク・ヒル)


 タイトルになっている1曲目の『ベッドサイド・マナーズ・アー・エクストラ』は、メロトロンとディヴ・ローソンのヴォーカルが優しく奏でられる牧歌的な美しいポップ曲で、2曲目の『ピルグリム・プログレス』は、カラフルで流麗なツインキーボードとタイトなリズムセクションを前面に押し出した高揚感のあるインストゥメンタルナンバーとなっており、彼らの代表曲になっている。3曲目の『タイム・トゥ・ドリーム』は、トニー・リーヴスのベースが冴えわたる曲になっており、キーボードとのアンサンブルが素晴らしい内容になっている。4曲目の『ドルム・フォーク』は、アンドリュー・マカロックのドラムソロをメインした曲であり、静と動が交錯する曲調の中で強力なドラムとメロディアスなキーボードが聴き応えのあるナンバー。5曲目の『サン・キスイド・ヨア・ノット』は、ディヴ・ローソンのヴォーカルをメインとした曲で、ポップでありながらジャズっぽいモダンさを兼ね備えた演奏が魅力であり、最後の『チョーク・ヒル』の曲は、2曲目の『ピルグリム・プログレス』を彷彿させるようなメンバー全員のアンサンブルが堪能できるインストゥメンタルになっている。こうしてアルバムを通して聴いてみると、数あるプログレッシヴロックグループの中でも異色の編成でありながらも、カラフルなツインキーボードをメインにした秀逸なメロディが散りばめられた楽曲が多い。メンバーの経歴から分かるように演奏の実力は申し分なく、彼らの持ち味を存分に発揮した傑作であることは間違いはない。

 グリーンスレイドは1972年にリリースされたファーストアルバムから、メンバーを代えながらも4枚のアルバムをリリースしている。しかし、サードアルバムでトニー・リーヴスが脱退し、4枚目のアルバムではディヴ・ローソンが脱退するなど、当初の音楽性が失われてしまう流れに歯止めが掛からず、1976年1月に解散してしまう。しかし、ディヴ・グリーンスレイドが1994年にコロシアムの再編に伴う活動の中、ファンの一押しもあって盟友のトニー・リーヴスと再結成し、2000年にアルバム『ラージ・アフタヌーン』をリリースしている。

 

 皆さんこんにちはそしてこんばんわです。ファーストに続いてロジャー・ディーンの描いた幻想的なジャケットイラストに惹かれまくりなグリーンスレイドのセカンドアルバムを紹介しました。アート派のジャケットを集めているガチのコレクターほどではありませんが、これはこれで手にして満足するものがあります。ジャケットに描かれている6本腕の魔人は、後にグリーンスレイドのライヴステージのバックにも掲げられるほどのシンボルマークになります。ツインキーボードを標榜するグループは数多くありますが、クラシカルな中で技巧と変拍子を繰り返す演奏ばかりで(※個人的にこれはこれで大好物ですが…)、グリーンスレイドほどメロディが頭に残る作品はあまりない気がします。きっとそれは彼らの今まで経験してきた確かな演奏技術に基づいた素直な曲作りにあるからだと思います。とくにこの本アルバムの2曲目の『ピルグリム・プログレス』は、何度聴いてもため息が漏れるくらい素晴らしいツインキーボードのアンサンブルになっています。


 さて、ディヴ・グリーンスレイドは1994年から全盛期のメンバーによる再結成したコロシアムの活動をしていたことを先に述べましたが、コロシアムのツアー中で『グリーンスレイド』のアルバムを手にしたファンがディヴにサインを求めて尋ねたことが再結成の大きな契機になったと言われています。「コロシアムが再結成できたのなら、グリーンスレイドも再結成してよ~!!」とか言われたんでしょうね。やはりファンの力は絶大です。再結成して作られたアルバムには、ジョン・ウェットンや元マリリオンのシンガーだったフィッシュ、さらにはボニー・タイラーやスコーピオンのメンバーなど、なかなかのメジャーアーティストが参加しています。新曲を加えて当時の代表曲も演奏されているので、ぜひこちらも機会があったら聴いてみてくださいな。

それではまたっ