【今日の1枚】Colosseum/Daughter Of Time(ドーター・オブ・タイム) | 古今東西プログレレビュー垂れ流し

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Colosseum/Daughter Of Time

コロシアム/ドーター・オブ・タイム

1970年リリース

名ドラマー、ジョン・ハインズマン率いる

コロシアムのサードアルバム

 名ドラマーであるジョン・ハインズマン率いるコロシアムのサードアルバム。ブラスロック&ブルース色の強かった名盤『ヴァレンタイン組曲』を経て、本作ではクリス・ファーロウ(ヴォーカル)、マーク・クラーク(ベース)が加入し、アンサンブル重視のプログレッシヴなジャズロックとなった作品である。スタジオアルバムとしては最後となったが、ハインズマンの迫力あるドラムスとファーロウの哀愁のあるヴォーカルが冴えており、バランスのある楽曲群が占めた傑作となっている。

 コロシアムは1968年にリリースされたジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズのアルバム『ベア・ワイアーズ』に参加していたドラマーのジョン・ハインズマン、ベーシストのトニー・リーヴス、サックス奏者のディック・ヘクスト=スミスの3人を中心に、キーボード奏者のディヴ・グリーンスレイド、ヴォーカル兼ギタリストのジェイムズ・リザーランド、同じくギタリストのジム・ローチェを加えたジャズロックグループである。当初はジョン・ハインズマン・コロシアムというグループ名だったが、ジム・ローチェが脱退したため、コロシアムというグループ名になった経緯がある。本作はスタジオアルバムの3作目にあたり、よりプログレッシヴロックに近づいた名盤として評価されている。

 

 本アルバムはすでにトニー・リーヴスとジェイムズ・リザーランドがグループから離れており、ヴォーカルにクリス・ファーロウ、ヴォーカル兼ギターにディヴ・クレムソン、ベーシストのマーク・クラークが参加してレコーディングされている。当初は元ルネッサンスのルイス・セナモがベースを担当したが、セナモはレコーディングの途中で脱退しており、マーク・クラークが残りの曲でベースを弾いた経緯がある。大ヒットした前作のセカンドアルバム『ヴァレンシュタイン組曲』は、ブルース色の強いブラスロック的なニュアンスの楽曲から脱却して独自の路線を見い出したが、本作ではアンサンブルを重視し、ジャズやブルース要素は底辺にありつつも、ストリングス・セクションとブラス群のバランスがとれた作品になっている。とにかくクリス・ファーロウの哀愁のあるヴォーカルと、ディック・ヘクスト=スミスの独特ともいえるサックスがマッチしており、また、ハインズマンのツインバスのドラムスは相変わらずド迫力である。

 

★曲目★

01.Three Score and Ten, Amen(スリー・スコア・アンド・テン、アーメン)

02.Time Lament(タイム・ラメント)

03.Take Me Back to Doomsday(テイク・ミー・バック・トゥ・ドゥームスデイ)

04.The Daughter of Time(ザ・ドーター・オヴ・タイム)

05.Theme for an Imaginary Western(シーム・フロム・アン・イマジナリー・ウェスタン)

06.Bring Out Your Dead(ブリング・アウト・ユア・デッド)

07.Downhill and Shadows(ダウンヒル・アンド・シャドウズ)

08.The Time Machine(ザ・タイム・マシーン)

 

 1曲目の『スリー・スコア・アンド・テン、アーメン』は聖書にインスパイアされた曲であり、ファーロウの力強いヴォーカルが聴けるナンバー。2曲目の『タイム・ラメント』と4曲目の『ザ・ドーター・オヴ・タイム』は、アレンジで参加したニュー・ジャズ・オーケストラの音楽監督であるニール・アドレーのコラボレーションで、ディックのサックスを中心としたブラス群による複雑な構成で展開される。6曲目の『ブリング・アウト・ユア・デッド』は、ディヴ・グリーンスレイドの流麗なキーボードが堪能できるインストゥメンタルになっており、7曲目の『ダウンヒル・アンド・シャドウズ』は、彼らの音楽的バックボーンがブルースであることが良くわかる曲になっている。最後の曲『ザ・タイム・マシーン』は1970年7月に行われたロイヤル・アルバート・ホールでのライヴであり、とても1人で叩いているとは思えない驚愕のジョン・ハインズマンのドラムソロが堪能できる曲となっている。

 コロシアムは本アルバムをリリースした後のツアーを収めた2枚組のライヴアルバム『コロシアム・ライヴ』を最後に解散し、ジョン・ハインズマンはよりハードなジャズロックを求めて、後にテンペスト、そしてコロシアムⅡというグループを結成していくことになる。また、キーボーディストのディヴ・グリーンスレイドは自身のグループであるグリーンスレイドを結成して数々の傑作を世に送り出すことになる。やがて時代は変わり、かつての『コロシアム・ライヴ』に参加していたメンバーが1994年に集まって再結成され、3年後の1997年には27年ぶりとなるスタジオアルバム『Bread & Circuses』を発表する。2018年には惜しくもリーダーだったジョン・ハインズマンが脳腫瘍のため73歳で死去するが、現在でも残されたメンバーで活動している。

 

 皆さんこんにちはそしてこんばんわです。今回はジョン・ハインズマン率いるコロシアムのサードアルバム『ドーター・オブ・タイム』を紹介しました。セカンドアルバムの『ヴァレンシュタイン組曲』の方がかなり有名でこちらを紹介しようと思いましたが、本能の赴くままにサードアルバムも個人的に好きなのでこちらを先に紹介した次第です。ドラマーのジョン・ハインズマンを知ったのは、メタル、ハードロックを好んで聴いていた若気の至り…ではなく若い日に、北アイルランド出身の名ギタリストであるゲイリー・ムーア、キーボードのドン・エイリー、ベーシストのニール・マーレイといったメンバーで結成したコロシアムⅡです。このバンドは超絶なテクニックのサウンドを効かせたハードロックだったため、ジョン・ハインズマンがジャズ出身のドラマーだったなんて、プログレを聴いていなかったその頃は全く知らなかったのも無理のない話です。その後も遡るようにテンペスト、そしてコロシアムと行き着くわけですが、たぶん、コロシアムはコロシアムⅡと並んで今でもCDショップでメタル/ハードロックコーナーに普通に置いてあるのではないでしょうか。

 

 さて、このアルバムの聴きどころは、ニール・アドレーがアレンジをしたという『タイム・ラメント』と『ドーター・オブ・タイム』が、なかなか複雑な展開を魅せる楽曲になっており、プログレ的な印象を与えているところです。また、本アルバムから参加したクリス・ファーロウの素晴らしいヴォーカルも聴きどころではありますが、やはり、ラストの曲のロイヤル・アルバート・ホールのライヴで叩く、ジョン・ハインズマンのドラムソロは必聴です。上にも書きましたが、とても1人で叩いているとは思えないほど迫力があります。機会がありましたら、ぜひ聴いてほしいですね。

 

それではまたっ!