【今日の1枚】Emerson Lake&Palmer(エマーソン・レイク&パーマー) | 古今東西プログレレビュー垂れ流し

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Emerson,Lake&Palmer/Emerson,Lake&Palmer

エマーソン・レイク&パーマー/ファースト

1970年リリース

スーパーロックトリオ、

エマーソン・レイク&パーマーのデビュー作

 元ザ・ナイスのキース・エマーソン、元キング・クリムゾンのグレッグ・レイク、元アトミック・ルースターのカール・パーマーという名グループに在籍していた3人が、後に『タルカス』、『展覧会の絵』、『恐怖の頭脳改革』など、数々の名盤を世に送り出していく、エマーソン・レイク&パーマーの記念すべきデビューアルバム。怪演ともいえるキース・エマーソンのオルガンを筆頭に、3人が火花を散らすようなトリオとは思えないダイナミックなプレイを聴かせる衝撃作でもある。後の完成されたアルバムと比べて見劣りされがちだが、彼らのデビューにふさわしい圧倒的なプレイが堪能できるアルバムとして、初期の名盤として誉れ高い1枚である。

 エマーソン・レイク&パーマーの結成の経緯はグレッグとキースの2人が1969年にアメリカ、サンフランシスコで出会ったのがきっかけである。かつてプレイしていたザ・ナイスを上回るグループを作りたかったキース・エマーソンと、アメリカでキング・クリムゾンよりもウケるグループを作りたかったグレッグ・レイクの思惑が一致し、その時点で活動していたグループを辞めて新しいグループを作る計画を練ったところから始まっている。当初は天才ギタリスト、ジミ・ヘンドリックスと彼のグループにいたドラマーのミッチー・ミッチェルを加えて4人のグループを組む予定だったらしい。しかし、ジミの賛同を得られなかったため、アトミック・ルースターで当時19歳と若いながらも緻密でダイナミックなドラムに高い評価を得ていたカール・パーマーを招いて、1970年6月にグループ結成を公表する。当初、グループ名を「トライトン(Triton)」というアイデアもあったが、結局、3人のファミリーネームを並べた「エマーソン・レイク&パーマー」というグループ名に落ち着いている。3人ともすでに高い知名度と人気を博していたため、デビュー当時はマスコミやレコード会社から、“スーパーグループ”と呼ばれて大きな話題となる。

 

 グループ名を公表後は、同年8月29日にワイト島で開催された「第3回ワイト島ポップ・フェスティバル」が、実質的なステージデビューとされている。彼らはライヴを行うかたわらアルバム制作を並行して行い、11月にアイランドレコードと契約してデビューアルバムを発表。アルバムはプロデューサーにグレッグ・レイク、エンジニアにイエスでおなじみのエディ・オフォードが起用されている。アルバムはスーパーグループにふさわしい彼らの技量をふんだんに見せ付けた、高いテンションにあふれた作品になっている。

 

★曲目★

01.The Barbarian(未開人)

02.Take A Pebble(石をとれ)

03.Knife Edge(ナイフ・エッジ)

04.The Three Fates(運命の3人の女神)

 a.Clotho(クローソー)

 b.Lachisis(ラキシス)

 c.Atropos(アトロポス)

05.Tank(タンク)

06.Lucky Man(ラッキー・マン)

 

 アルバム1曲目の『未開人』は、奔放で力強く、繊細なキース・エマーソンのキーボードと、ダイナミックなカール・パーマーのドラミングが聴きどころで、2曲目の『石をとれ』は、グレッグ・レイクが作曲を担当し、アコースティック・ギターとピアノがリリカルに展開する12分に及ぶ大曲。ジャズ的な即興性あふれるピアノ、ベース、そして抑えたパーカッションや叙情的なグレッグの叙情的なギターとヴォーカルは、他のプログレには無い彼らのパフォーマンスを見せている。3曲目の『ナイフ・エッジ』は、彼らの持ち味がもっとも演奏に中に納められたナンバーで、グレッグの強いヴォーカルとキースのハモンドオルガンが強引に畳み掛ける攻撃的な内容になっている。4曲目の『運命の3人の女神』は、キースが作曲を担当し、3つのパートに分かれた彼の独特ともいえるピアノを中心とした演奏テクニックとグループのアンサンブルが楽しめる。最初の荘厳なチャーチオルガンから始まり、途中からピアノに変わるなど、キースのキーボーディストとしての腕前が堪能できる曲になっている。さらに5曲目の『タンク』は、キースとカールの2人が共作し、クラシックでいうバロック調あふれる演奏が展開されるが、カール・パーマーのドラムパフォーマンスが存分に堪能できる曲になっている。ラストナンバーである『ラッキー・マン』はグレッグが作曲し、牧歌的なアコースティックギターとグレッグのヴォーカルが魅力的な曲で彼らの代表作にもなっている。こうして聴いてみると、トリオとは到底思えない力強い演奏を繰り広げていることはもとより、彼らのこれから「開拓者」となるべく姿勢が随所に表れているのが聴き取れる。

 先にイエス、キング・クリムゾンといった衝撃的なグループが次々と誕生するロック界で、エマーソン・レイク&パーマーの登場は計り知れない新たな音楽の可能性を秘めたものだっただろうと思われる。それだけ完成度が高く、彼らの圧倒的なパフォーマンスは、イギリス国内にとどまらず世界的に注目されることになる。これから怒涛ともいうべき活動や傑作アルバムを制作していくことになるのだが、その原石となった本アルバムはあまりにも眩しく光り輝いている。その姿はまさに暗雲の中を光を放ちながら羽ばたくジャケットの鳥ようである。

 

 皆さんこんにちはそしてこんばんわです。1970年代のスーパーグループ、エマーソン・レイク&パーマーの登場です。先に述べたように後の『タルカス』や『展覧界の絵』、『恐怖の頭脳改革』といった名盤がクローズアップされがちな中、あえてデビューアルバムを紹介しました。個人的に好きなアルバムの1枚ですが、もっと評価されても良いと思います。本アルバムではグレッグ・レイクがキース・エマーソンに薦めたというモーグ・シンセサイザーが5曲目の『タンク』と6曲目の『ラッキー・マン』の最後に使われています。モーグ・シンセサイザーは、後に彼らの音楽の最大の特徴となります。とはいえ、このアルバムでのキース・エマーソンが当時のキーボードやハモンドオルガンを最大限に引き出してパフォーマンスしていて、改めて凄まじいアーティストだな~とつくづく思います。

 

 さて、シンセサイザーを使いこなすキースも良いのですが、実は時折聴かせてくれる彼のピアノソロが大好きで、柔らかくかつ流麗な鍵盤さばきはいつ聴いても惚れてしまいます。また、伸びやかなヴォーカルを聴かせてくれるグレッグ・レイクも、彼がベースとアコースティックギターを弾きこなすマルチプレイヤーであると知ったのもこのアルバムです。とにかくグレッグのベースラインの美しさを意識したのもこのアルバムからです。

 

 エマーソン・レイク&パーマーはかれこれCDを購入してからずいぶん長いあいだ手元にあり、自分の音楽ライフの良き相棒になっています。他の作品についてはどこかでまた紹介できればと思っています。

 

それではまたっ!