水瀬川早紀の練習画。

アシモフのSF短編『われはロボット』の中の『堂々めぐり』を元にしたパロディストーリーです。

改造絵日記(5月19日)「水星開発用ネオサイボーグSPD13号」
 

改造絵日記(4月7日)「ロビイとグローリア」
改造絵日記(4月21日)「ロビイとグローリアⅡ」
 

宇宙開発に憧れる日本人女性水瀬川早紀は自ら志願して惑星開発支援用ネオサイボーグSPD13号になり、2名の人間の隊員(1人は彼女の元恋人)とともに水星へとやって来ました。第一次探検隊の失敗理由を調査するために。
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水星の太陽側に第一次探検隊が設置した断熱構造建造物の中で汗だくになりながら難しい顔をしている2人の男たち。
「さて、状況を整理してみようか?パウエル」
「別に異論はないよ、ドノバン」
「我々が第一次探検隊の放棄したこの建造物にやって来て調べたところ、まず気がついたのは、光電池バンクが完全に駄目になっていることだった。光電池バンクは最高500度に達する水星の昼間の灼熱から我々の生命を守ってくれる熱遮蔽スクリーンに必要不可欠なものだ。そういうわけで光電池バンクを修理するために、我々は――正確には君は、SPD13号に命じて、近くの貯蔵所にセレンを採りに行かせた。SPD13号の俊足なら1時間もあれば軽く往復できる距離だ。ここで質問…SPD13号が出かけてからどのくらいの時間がたった?」
「5時間くらいかな…」
「そうだ。残り時間はあと7時間しかない。彼女がそれまでにセレンを採ってきて光電池バンクを修理できなければ我々は完全におシャカってわけだ…一体何が起こってるんだと思う?」
「全くわからん。無線でSPD13号と連絡をとりたいところだが、君も良く知っているとおり、この水星の太陽面では疑似ミノフスキー現象によって通常の電磁波は何の役にも立たん。量子もつれを利用した量子通信システムなら電波妨害の影響を受けないが、設置にまだだいぶ手間取る状態だ…」
「やれやれ…君のジャジャ馬な彼女…失礼元カノか…の道草のおかげで、我々の命は風前の灯ってわけだ…」
「失礼なことを言うなよ。ジャジャ馬とか、道草とか…スピーディはそもそも道草なんか全然しない女だよ」
「スピーディ?」
「早紀の…いやSPD13号の素体の学生時代の愛称さ。何ごともスピード重視の合理主義からそう呼ばれるようになった。僕との馴れ初めも『あなたも宇宙開発者志望なの?素敵!さっそくあそこのホテルで体の相性を確かめましょう!』だったよ。はじめて出会って5分経つか経たずかぐらいでさ…」
「君の元カノについてののろけは我々が生き延びることができた後にじっくり聞くとして、あと1つだけ試してみたいことがある。重力波測定装置だ」
「重力波測定装置?」
「物体が加速度運動をする時には周りに微弱ながら重力波を発生させる。これを利用して物体の位置を探知するのが重力波測定装置だ。これなら疑似ミノフスキー現象の影響を受けずに彼女の現状を調べることができる。もっともじっと静止していたり同じ向きに等速度運動をしていたりすればお手上げだがね…」

『われはロボット(Wikipedia)』

『ロボット工学三原則(Wikipedia)』

【今回描いた絵】