こんにちは。行政書士の名倉武之です。
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代執行
昨今、代執行という言葉は、「空き家の解体」、「沖縄の辺野古基地問題」などで、お聞きになったことがある方は多いのではないでしょうか。この代執行に関する法律(行政代執行法第2条)は、以下のように書かれています。
法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。
「空き家問題」の場合、
- 義務者は「空き家の所有者」
- 義務者のなすべき行為とは、「空き家の処分(解体など)」
- 費用を徴収とは、「財産差押え等」
以下、代執行について、空き家問題を例にご説明いたします。通常、空き家になった状態で、すぐさま「代執行」されることはありません。空き家の管理状態によります。管理状態は大きく三段階に分かれます。
※イラストは「国土交通省 空き家対策特設サイト」より抜粋
【管理不完全空家」、【特定空家】では、行政庁による行政指導等が発生します。
管理不完全空家指導⇒勧告
壁や窓の一部が腐食・破損、雑草が生い茂っている、敷地内にゴミが散乱・放置されている等、明らかにこのままの状態で時が経過すれば「著しく危険な状態」になる一歩手前の状態
特定空家指導⇒勧告⇒命令⇒代執行
行政庁としては、著しく危険な状態(倒壊寸前など)を放置することはできないため、命令にも応じない場合には、強制的に空き家を解体する等のアクションを起こします。これが「代執行」です。
代執行は「所有者の有無」により対処方法が異なります。所有者がいない(不明、相続放棄を含)場合に行う代執行を、
『略式代執行』
と言います。
所有者のいる一般的な代執行では、
・解体等の費用は全て所有者が負担
になりますが、略式代執行では、
・解体等の費用は財産管理制度により補填され、補填されてない部分は税金で負担
となります。
財産管理制度とは、
「市町村長が、裁判所に対して、財産管理人の選出を申請し、財産管理人を通じて、不動産の処分を行わせる制度」
そして、行政庁による「勧告」※を受けると、
住宅用地の特例措置が解除され、
固定資産税・都市計画税の軽減
が受けられなくなります。
(地方税法第349条の3の2)
つまり、住宅用地の特定として、
固定資産税は、
200㎡の部分「1/6に減額」
200㎡を超える分「1/3に減額」
されている特例措置が解除となり、
固定資産税が6倍
になる恐れがあります。
※勧告とは、行政指導の一つで、
強さは「助言→指導→勧告」の順
行政庁が「〇〇しない!」
と促すことを意味します
次に、国土交通省の公表値を基に、行政代執行(所有者がいる)と略式代執行(所有者がいない)の年度別推移をグラフ化しました。令和5年度(単年度)において、略式代執行の件数は行政代執行の約2.9倍です(累計平均では約2.4倍)。
累計:行政代執行=213件、略式代執行=510件
《追加情報:2024年7月16日》
※2024年7月16日、NHK NEWS WEB(NHK和歌山放送局)にて、上記の報道(動画)がありましたので、サイト情報を追加します。ご覧ください。
以前は、相続による不動産登記(名義変更など)が義務化されておらず、「相続人が誰かわからない(不明)」ものが存在しておりました。そこで、所有者不明問題の解消を目的に、令和6年4月1日「相続登記の義務化」の制度がスタートしました。
一方で、
少子化、高齢化、核家族化
の問題は益々深刻化し、「相続放棄」や「相続人不存在」の状態が増えることが推察されます。その結果、所有者がいない「略式代執行」が増加する可能性があります。
今後、ご高齢者の単独世帯、ご夫婦のみの世帯が増えると、相続人不存在となる恐れが高くなることが推察されます。
- ご先祖から代々引き継がれている
- ご自身又は配偶者と一緒に築き上げた
など、所有する建物には「想い出」が刻まれているのであれば、どのような形で幕を下ろすのか、一度ご検討されるのもよろしいかと思います。
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