年末といえば、年間ベストである。各メディアが発表しがちなそれを見ることが、実は音楽を聴くこと自体よりも好きなのではないかという気もする、音楽ファンとしての純粋さにいちじるしく欠けている私ではあるので、もちろん自分自身でもやっている。それにしても、2020年はコロナ禍とはいえ個人的にはほとんど変わらずずっと仕事をしていたのだが、音楽を聴ける時間は例年よりもずっと多かった。これは年末にたぶん決めるであろう年間ベストの候補だろうな、というものを1月の段階からすでにiPhoneのメモに記録しているのだが、そのタイトル数もひじょうに多く、それでもベスト50という数にはなんとなく思い入れがあるので、わりと好きだったのだが選べなかったものもあった。
とはいえ、個人的に特に好きな特定のアーティストと、後は流行っているものしか基本的にほとんど聴いていないため、真剣な音楽ファンやマニアの方々が選んでいるような通好みのものは一切ランクインしていないともいえる。という訳で、それでは早速やっていきたい。
50. On Sunset/Paul Weller
ポール・ウェラーのソロ通算15作目らしい。ザ・ジャムやザ・スタイル・カウンシル時代から数えるともっとあるのだが、つまり超大ベテランということになる。それだけの年輪を感じさせる音楽ではあるのだが、いまだに実験的なことをやったりもしている。コンテンポラリーなメインストリームのポップスとはほぼ接点が感じられないものの、現役感はバリバリという印象である。全英アルバム・チャートで1位にも輝いた。
49. おいしいパスタがあると聞いて/あいみょん
フォーク/ニューミュージックや「渋谷系」に影響を受けたという1995年生まれのシンガー・ソングライター、あいみょんの最新アルバムである。若者を中心に圧倒的な支持を得るメジャーなJ-POPのアーティストだが、メロディーメイカーとしての才能がすごいのに加え、現在を生きる若者のリアリティーというか、経済と性愛という重要なテーマをいまどきなりにシリアスに取り扱っているところは、バブル景気の頃でいう岡村靖幸にも近いのではないか、と思ったりもする。「裸の心」は「M-1グランプリ2020」準決勝戦のためのネタ合わせで入ったカラオケボックスで、おいでやす小田も歌ってグッときた超名曲である。
48. Letter To You/Bruce Springsteen
超ベテランのロック・アーティストでいまだに現役感バリバリといえば、ブルース・スプリングスティーンである。まさにスプリングスティーン節とでもいうべき記名性で、今日におけるリアリティーを歌っているところがかなりすごい。Eストリート・バンドと一発録りでレコーディングされたという、勢いが感じられる。
47. R.Y.C./Mura Masa
一年のわりと初めの方にリリースされた作品は年末の年間ベストを決めるような時期には印象が薄くなっている場合もあるのだが、このアルバムは当時から評価が微妙だったような気もする。前作ではもっとダンス・ミュージック寄りだったのだが、よりパンク/ニュー・ウェイヴに接近したともいわれていて、それが中途半端なのではないだろうか、というような意見が少なくなかったような気もする。だから、そこが良いんじゃない、というのが個人的な感想である。「オレたちひょうきん族」のサラリーマンコントで、たけし軍団の芹沢名人がいう「次回に期待しましょう」というようなフレーズが聞こえてきそうである。しかし、意欲作であり、そこも含めてかなり好きである。
46. Petals For Armor/Hayley Williams
パラモアのボーカリストによる、ソロ・アルバムである。バンド自体もよりポップス寄りのアプローチになっていたので、その延長線上にあるのかなと思っていたところ、もっと実験色が濃いような印章もあたえるタイプの音楽になっていた。それでもポップでキャッチーな本質が軸としてしっかりあるため、難解になりすぎることはなく、そこがとても良い感じである。
45. Man Alive!/King Krule
これも年のわりと初めの方にリリースされていたので、わりと忘れられかけている印象があるのだが、かなり気に入っていたし、久しぶりに聴いてもやっぱり良かった。ニュー・ウェイヴでジャズっぽいところもある。本当にこれはかなり良いと思う。
44. Miss Anthropocene/Grimes
グライムはずっと好きなのだが、このアルバムについては意欲作ではある、ちょっと悲観的すぎるのではないか、というような印象も持っていた。しかし、一年を振り返ってみるにあたり、もちろん聴き返したりもしてみるのだが、やはりこのポップ感覚はかなりレベルが高いものだぞ、という印象になったのであった。正直、コンセプトそのものには個人的にあまりハマれずに、それもあってそれほど積極的に頻繁には聴かなかったのだが、アーティスト自身の才能には卓越したものがあり、これを経てどうなっていくのかという期待感もいだかせてくれる。たとえ、世界がディストピア的だったとしてもだ。
43. What Could Possibly Go Wrong/Dominic Fike
パブリシティにかなり力が注がれていた印象があったわりには、それほど大きなうねりには繫がらなかったかな、というような気がしてはいるのである。とはいえ、この時代にちょっとしたタイミング次第ではわりとウケそう、という感覚もあり、こういうのは本当に難しいな、と思わされるのである。とはいえ、コンテンポラリーなポップ・ミュージックとしての強度には間違いがないと思える。
42. Saint Cloud/Waxahatchee
卓越した才能を持つシンガー・ソングライターによる、良質なアルバム。と言ってしまえばそれまでなのだが、楽曲のクオリティーはひじょうに高く、他にも同系統のアーティストもいて、もしかすると地道にトレンド化しているのかもしれない90年代のインディー・ポップ的な印象もひじょうに強い。後に実は超名盤だったというような類いの再評価がされたとしても、まったく違和感はない。
41.Róisín Machine/Róisín Murphy
実力派シンガー、ロイシン・マーフィーの最新アルバム。往年のディスコ・ポップ全盛期の感覚を現在に甦らせたというかアップデートしたかのような内容で、こういったご時世にはより尊いもののように思えなくもない。