10. Interstellar Love (feat. Leon Bridges)/The Avalanches
アヴァランチーズの最新アルバム「ウィ・ウィル・オールウェイス・ラヴ・ユー」が、年の瀬も押し迫ったこの時期になってリリースされた。前作から約4年ぶりだが、その前は16年空いていた。アルバムにはウィーザーのリヴァーズ・クオモ、ジョニー・マー、MGMT、ネナ・チェリー、カレンOにコーネリアスと、豪華ゲストも多数参加している。相変わらずユニークなエレクトロ・ポップで楽しませてくれるが、レオン・ブリッジズをフィーチャーしたこの曲ではアラン・パーソンズ・プロジェクト「アイ・イン・ザ・スカイ」をサンプリングするなど、80年代ポップスファンにも親しみやすい内容になっている。
9. cotton candy/Yungblud
ヤングブラッドの最新アルバム「ウィヤードゥ」はユニークなポップ・アルバムだとは思ったものの、まさか全英アルバム・チャートで初登場1位を記録してしまうとは。いまどきっぽいジャンルレスなポップ感覚が魅力なのだが、中でもこの曲はキャッチーでとても良い。
8. 朝になれ/加納エミリ
明けない夜はない、というようなことがごく当たり前のように言われているような気がして、つまり朝は必ず来るということなのだろう。いわゆるコロナ禍の現状において、これについてかつて無いぐらいに考えさせられたりもする。個人的な失恋の後遺症的なものについて歌われていると思われるこの曲も、ポップ・ミュージックとして世に放たれることによって、(少なくとも私にとっては)より広い意味を持ち、祈りにも似た気分で過ごす日々に相応しい楽曲になっている。
7. Therefore I Am/Billie Eilish
いわゆるティーンエイジ・センセーション的な存在であり、アクティビスト的な側面は時代を象徴するものである。ポップ・ミュージックのそういった側面にも、というか、どちらかというとそれ自体というよりはそっちの方にこそ興味や関心があるのかもしれず、ゆえにビリー・アイリッシュというアーティストの存在はとても重要である。ダークなトーンのシンセ・ポップにのせて、デカルトの「我思う、ゆえに我あり」の英訳から取ったと思われるタイトルの曲を「あなたは私の友達ではない」などと歌いながら、無人のショッピングモールを自由に走り回るビリー・アイリッシュは最高にポップだと思うのである。
6. Green Eyes/Arlo Parks
洗練されていて聴きやすくもあるのだが、マルチカルチュラルな音楽的な奥深さも感じられる。来年の1月にデビュー・アルバムのリリースが予定されているアーロ・パークスはいま最も注目されている新しいアーティストの一人らしく、幅広い層の音楽ファンにアピールもするのではないかという気がする。
5. 堕教師/大森靖子
大森靖子がつい先日にリリースした最新アルバム「kintsugi」に収録された曲で、個人的に親交があり、かつてミュージック・ビデオにも出演していた女優の橋本愛をフィーチャーしている。このボーカルがパンキッシュであり、ファンなだけあって楽曲の解釈も素晴らしく感じられる。単純にまとめることはできないのだが、明らかに現在の社会においてとても重要な問題に言及し、メッセージを発していることは伝わってくる。サウンドプロダクションが整理され、とても聴きやすくなっていることによって、シンガー・ソングライターとしての魅力がダイレクトに伝わってくる。個人的にはメジャー移籍後の最高傑作ではないかと思っているのだが、まだある程度、把握しているとすらまったく思えないほど情報量と感情にあたえる影響が大きすぎる。
4. Prisoner (feat. Dua Lipa)/Miley Cyrus
この曲を収録したアルバム「プラステック・ハーツ」にはスティーヴィー・ニックスが参加した曲や、デジタル・エディションには先行シングル「ミッドナイト・スカイ」と「エッジ・オブ・セブンティーン」のマッシュアップ的な曲がボーナストラックのような扱いで収録されていたりもする。そして、「フューチャー・ノスタルジア」のデュア・リパをフィーチャーしたこの曲にはオリヴィア・ニュートン・ジョン「フィジカル」を思わせるようなところもある。ディズニー・チャンネルのアイドルとして世に広く知られることになったマイリー・サイラスは、80年代の女性ロッカー的イメージをより主体的な存在としてアップデートしているように思える。
3. 34+35/Ariana Grande
アリアナ・グランデの最新アルバム「ポジションズ」やその収録曲は、各メディアが発表する年間ベスト的なリストにはほとんど挙がっていないような印象を受けるが、とてもヒットしてはいる。音楽批評的にはあまり引っ掛からないのだが、大衆音楽としては成功しているということだろうか。ラヴ&セックスのムードに溢れたこの作品を、当初は物足りなくも感じたのだが、やはりコンテンポラリーなポップ・ミュージックとして優れているし、「34+35」の計算式が「69」という回答を導き出すようなラヴ&セックスのムードは、必然的に正しく選ばれたものであるかのようにも思える。
2. Body/Megan Thee Stallion
TikTokに頻繁に使用されたことをきっかけにヒットした「サヴィッジ」は、憧れでの存在でもあったビヨンセをフィーチャーしたリミックス・バージョンが全米シングル・チャートで初の1位を記録、夏にはカーディ・Bとの共演曲「WAP」がこれもまた全米シングル・チャートで1位に輝いた上に、その内容が話題にもなり、年末に各メディアが発表する年間ベスト的なリストでは1位に選ばれることが多かった。発砲事件の被害に遭い、そのことをテーマにした曲をオープニング・トラックとしたデビュー・アルバム「グッド・ニュース」は全米アルバム・チャートで最高2位を記録した。そのアルバムからシングル・カットされたこの曲は、女性もセクシュアリティーについて主体的であるべきだというメッセージを存在そのものによって発しているようでもある、ミーガン・ジー・スタリオンを象徴しているともいえるかもしれない。
1. willow/Taylor Swift
コロナ禍で予定されていたライブやフェスティバルが中止になったことによって制作され、サプライズのようにリリースされたアルバム「フォークロア」はそれまでとは異なるインディー・ロック的な音楽性と、シンガー・ソングライター作品としてのクオリティーの高さで話題になり、大ヒットも記録した。まさに2020年を象徴する作品の一つだったなと振り返られもしている只中に、またしても新しいアルバムが今回もサプライズ的にリリースされた。音楽性は前作の延長線上にあるように思え、クオリティーも信頼と安心という感じである。ストリーミング再生回数なども換算されるようになったことによって、クリスマスの定番曲が上位に多数ランクインしているこの時期のシングル・チャートで、新曲としての存在感を発揮しそうな予感でいっぱいである。