2020年間ベスト・ソング50(10位-1位) | …

i am so disappointed.

10. Rain On Me/Lady GaGa & Ariana Grande

 

レディー・ガガのアルバム「クロマティカ」からの先行シングルで、アメリカやイギリスをはじめ10ヶ国以上のシングル・チャートで1位に輝いた。逆境を乗り越えてより強くなろうというポジティブでセルフエンパワリングな内容が、レディー・ガガ、アリアナ・グランデのパブリックイメージともマッチしていて、また、コロナ禍における人々の心情に訴えかけるものもあってのロングヒットというような気もする。

 

 

9. Dynamite/BTS
 
韓国出身のアーティストで初の全米シングル・チャート1位を記録した、記念すべき曲となった(そして、BTSはこの次のシングル「ライフ・ゴーズ・オン」でも連続して全米シングル・チャートで1位に輝く)。K-POPの魅力は鍛錬されたステージパフォーマンスにもあるが、この曲は楽曲だけを聴いている段階でも親しみやすく生気に満ちたディスコ・ポップで、ヒットソングとしての高いポテンシャルを有している。

 

 

8. Blinding Lights/The Weeknd
 
コロナ禍が実はひじょうに深刻な事態なのだと世界中の人々が気付きはじめた頃に、ずっとヒットしていた曲であり、どこかダークなトーンのシンセ・ポップが、当時の世の中を覆う空気感のようなものに妙にマッチしていたような記憶がある。この曲は全米シングル・チャートで1位を記録し、その後もずっと上位にランクインし続けている(初登場から53週目となる2020年12月12日付のチャートでも11位である)。リリースは昨年だが、2020年を象徴する楽曲として外すわけにはいかないような気がする。

 

 

7. 感電/米津玄師
 
2020年、日本で最も売れたであろうアルバム「STRAY SHEEP」からの先行トラックである。絶望がベースにありながら、それでも希望を追い求めていくことに価値を見いだし、そこから逃れることはできないのだ、というようなことがメッセージなのではないかと個人的には捉えているのだが、そういったことが直接的に歌われているわけでは特にない。ノリノリでアップテンポな楽曲にのせて歌われる諦念と、それを超えていこうとする心意気にやたらとシビれる。犬や猫の鳴き声もかわいくて良い。

 

 

6. ALIVE/RYUTist
 
新潟を拠点として活動するアイドルグループ、RYUTistのアルバム「ファルセット」から先行トラックとして発表された。一日のはじまりが現在よりもずっと爽やかで、期待に溢れたものだった頃(たとえそれが忘却のはるか彼方だったとしても)を思い出させてもくれる、ポエトリー・リーディング的な要素をも含む、エバーグリーンでありながらプログレッシブでもあるポップスである。

 

 

5. WAP (feat. Megan Thee Stallion)/Cardi B
 
来年にリリースされるはずのカーディ・Bのアルバムからの先行シングルで、「サヴィッジ」のリミックス・バージョンが全米シングル・チャートで1位に輝き、ノリにノッていたラッパー、ミーガン・ジー・スタリオンをフィーチャーしている。タイトルの「WAP」は「Wet Ass Pussy」の略であり、これはセックスをテーマにしたポジティブな曲である。トラックが持つ中毒性にもたまらないものがあり、アメリカ、イギリスなどのシングル・チャートで1位を記録するなど、2020年の夏を象徴するヒット曲となった。また、この曲が果たした意義としては、セックスについて主体的に語ることを男性だけの特権にしておきたいという性差別主義者を怒らせることによって、自覚的か無自覚的かにかかわらず、世の中にはまだそのような価値観が残存しているが、それはアップデートされるべきであるということを可視化したことであろう。この曲は大ヒットしただけではなく、年末に様々なメディアが発表する年間ベスト・ソングでも「Pitchfork」「NME」「ローリング・ストーン」をはじめ、1位に選ばれている場合が多い。

 

 

4. 午前0時のシンパシー/Negicco
 
Negiccoが2020年にリリースした、唯一のシングルである。Nao☆、Kaedeのソロ・アーティストとしての作品も充実していたが、グループの楽曲もまた素晴らしい。一十三十一が楽曲提供と聞いた時にはいまどきのシティ・ポップ的な感じを予想していて、それでもかなり楽しみだったのだが、実際にはまたしてもその期待を超えていくプログレッシブな内容であった。それでいてグループの本来の魅力であるナチュラルでアットホームなところはキープされながら、確実に成長を遂げている。ちなみに今年聴いたすべてのポップソングの中から厳選したトップ50において、Negicco関連がこれでもうすでに6曲目である。RYUTistもこれまでに2曲がランクインしていて、新潟は一体どうなっているのだという気持ちでいっぱいである。

 

 

3. 青空/aiko
 
日本のポップ・ミュージックにおいても、欧米と同様に歴代ベスト的な企画がわりと見られるようになって、そのようなリストが大好きな私としてはうれしい限りなのだが、個人的な感覚からしてみると、いわゆるはっぴぃえんど史観のようなものであったり、その延長線上にあると思われるシティ・ポップや「渋谷系」、一方で1990年代の「ロッキング・オンJAPAN」的なものに偏りすぎているような気もしている。それはそうとして、元「ロッキング・オン」「SNOOZER」などの田中宗一郎やモデルやタレントのまつきりなが熱心なファンであることを知って、ちょうど気になっていた頃にaikoの過去の楽曲がサブスクリプションサービスで配信開始、さらには新曲としてこの曲がリリースされ、個人的なブームが一気に発生した。これまで20年以上もの間、J-POPのメジャーなアーティストの一人ぐらいの印象しかなかったのだが、日本のポップ・ミュージック界において屈指のオリジナリティーと才能を持ったシンガー・ソングライターであることがよく分かった。それで、この新曲なのだが、失恋の痛みがシティ・ポップ的なサウンドにのせて歌われていて、たまらなく良い。「体を脱いでしまいたいほど苦しくて悲しい」「目の奥までいたい」「想ったり嫌になったり 自由で不自由だった」というようなユニークだがリアリティーがあるフレーズがあったかと思えば、「なんだよあんなに好きだったのに 一緒にいる時髪の毛とか凄い気にしていたのに 恋が終わった」という身も蓋もなさもたまらなく良い。

 

 

2. ナイスポーズ/RYUTist
 
RYUTistのアルバム「ファルセット」から3曲目、Negicco関連をも含めた新潟を拠点とするアイドルポップスでは9曲目と、ここまで49曲中9曲、厳選したはずなのに占有率約18.%とは一体、どういうことなのだろう。それはそうとしてこの曲、アルバムの数ヶ月前から配信はされていて、ジャケットでメンバーがジャンプをしているなという印象はなんとなくあったのだが、実はちゃんと聴いていなかった。それで、アルバムでやっと聴いたのだが、その内容の素晴らしさに感動して、何度か観たオンラインライブではこの曲のある箇所にくると決まって泣きそうになってしまうというヤバめな体験さえさせてくれたのであった。日常的な青春の1コマは時が経てば忘れてしまうのだが、当時は些細に思えていたそれが、実は人生における輝ける一瞬だった可能性はひじょうに高い。この曲はそういった瞬間を記録し、最も効果的な演出で再現したものであり、まるで良質な短篇小説のような表現がポップソングというフォーマットで実現されている。そして、しばらく青春時代にありがちなマイルドな言い合いだとしか思っていなかった「君の主張は一貫してこうだ 思い出はもっと目に焼き付けろ 私はそうは全然思えない 憶えていられないこともあるよ」という歌詞が、実はこの曲の内容そのものについての言及でもあったのだと気付かされて、ハッとした。そして、終わり近くの「ヘイ!ヘイヘイ!」というのがとても良く、これはライブではメンバー達によって言われているのだが、音源では作詞・作曲をした柴田聡子によるものだという。
 

 

1. 朝になれ/加納エミリ
 
2019年の1stアルバム「GREENPOP」リリース時のキャッチフレーズは「NEO・エレポップ・ガール」だったが、今年の秋にリリースされたこのシングルでは音楽性が少し変わっている印象を受けた。80年代にブラック・コンテンポラリーなどとも呼ばれていたソウル/R&Bからの影響も感じられるのだが、アーティスト自身はそれほど自覚はなく、それでも当時、そのような音楽を好んで聴いていたので、その影響はあるのかもしれない、などとも語っていた。表面的にクールでドライにも感じられるのだが、絶妙にウェットなところもあるボーカルがとても魅力的で、この曲では以前よりもそれが強く感じられるような気もする。おそらく失恋を原因とする無気力で自堕落で不活発な状況(「散らかった部屋 寝てばかりだ かじったパン 味はしないや」)と、そこから抜け出したいという祈りにも似た想いが、タイトルにもなっている「朝になれ」というフレーズには込められてもいるように聴こえる。きわめて個人的なテーマのようにも思えるが、これが偶然か必然か、コロナ禍におけるわれわれの心情ともリンクするところがあり、とても深い意味を持って心に響いてくる。個人的に、2020年の日常のサウンドトラックとして、最も相応しいと思えた曲である。