アリアナ・グランデ「ポジションズ」について。 | …

i am so disappointed.

アリアナ・グランデが先日、10月23日に新曲「ポジションズ」を発表したが、その翌週の30日には早くもこの曲を含むニュー・アルバムがリリースされるという。前作の「サンキュー、ネクスト」が昨年の2月だったので、1年8ヶ月以上は経っているのだが、今年はジャスティン・ビーバーとレディー・ガガとのデュエット曲が共に全米シングル・チャートで1位になったりもしていたので、久しぶりという気がまったくしない。

 

それで、この新曲をさっそく聴いてみたのだが、ポップなR&Bで、アリアナ・グランデの記名性の高いボーカルの魅力もじゅうぶんに生かされているように感じられる。ストリーミングサービズでの再生回数も好調なようである。とはいえ、前作、前々作からの先行シングル、つまり、「ノー・ティアーズ・レフト・トゥ・クライ」や「サンキュー、ネクスト」と比べると、ややインパクト欠けるように思える。しかし、いまや押しも押されぬ人気アーティストにしてポップ・アイコンとなったアリアナ・グランデなので、こういう普通に良い曲をしっかりヒットさせてしまうというのもまた良いのではないか、とも考えた。

 

そして、同時に公開されたミュージックビデオを観てみたのだが、ホワイトハウスが映り、アリアナ・グランデはアメリカ大統領に扮しているようである。周知の通り、アメリカ合衆国ではこれまでの歴史の中で、女性が大統領だったことが一度も無い。アメリカの政治情勢にアクセスしていると、ある条件さえ整えば、初の女性大統領が誕生する可能性は、早ければ今回の次の大統領選でもありうるという説を見ることもある。

 

それはそうとして、この曲のリリースのタイミングだが、アメリカ大統領選に向け、候補者同士の最後の討論が行われた直後だったという点に、何らかのメッセージ性を感じたりもする。そして、曲の内容はラヴ・ソングのように思えるのだが、同じ間違いは繰り返さないというような歌詞があり、それは過去の恋愛での失敗のことのようでもありながら、前回のアメリカ大統領選のようでもある。

 

アリアナ・グランデの普段のSNSでの発言などと合わせて考えると、その意図は明白なようにも思え、この曲にはジェンダー・イコーリティー的なメッセージも込められているのではないか、というような気もしてくる。というか、明らかにそうだろう。

 

ポップ・ミュージックは意図するかしないかにかかわらず、大衆音楽として受容された時点で、政治的な機能を果たすことから逃れられない。それは、たとえ純粋なラヴ・ソングであったとしても同じことである。生活には、政治が大きく影響しているからである。

 

現在、アメリカのメジャーなアーティストはほぼほぼいわゆる政治的発言をすることが当たり前になっているようにも思え、それがポップ・ミュージックの社会における役割をいまだにキープしているようにも思える。

 

ゆえに、それを理解するためには、よりハイコンテクストな知識や教養が必要になってくる、という側面もあるのかもしれない。そんな小難しいことは考えずに、無心になって楽しめるのこそがポップ・ミュージックだろう、という意見ももちろんあるのだろうが、私がポップ・ミュージックに興味や関心をいだく要因の一つとして、社会への影響であったり反映という部分が大きくあるため、アメリカのメインストリームのポップスがおもしろいというのも、つまりはおそらくそういうことである。

 

そういった意味で、超メインストリームのメジャーなアーティストでありながら、いや、だからこそ、いわゆる政治的発言(反トランプや民主党支持など)をしっかり行っているアリアナ・グランデの動向からは目が離せず、あと数日後にはリリースされるニュー・アルバムもひじょうに楽しみなのである。