朝、起きて、近所のセブンイレブンに行き、明太ポテトスティックというパンと缶コーヒーを買うついでに、「週刊文春」の最新号を立ち読みした。NGT48についての記事は小さく、同じ雑誌で先に報道されていた内容とは、また異なる部分があるように感じた。
先々週の水曜日、インターネットでニュースなどをチェックしていた時に、NGT48のメンバーが自宅マンションで男性から襲われ、それにはグループの関係者もかかわている、それから1ヶ月間、運営の言葉を信じて待っていたが対応がなにもされなかった、このままでは他のメンバーにも危害が及ぶ可能性がある、と涙の告発をインターネットの配信で行っていたところ、突然に打ち切られていたことを知った。
NGT48のことはほとんど知らないに等しかったし、この告発したメンバーのこともまったく知らなかった。しかし、この件はどうやら無視してはいけない、という気分になった。翌日、NGT48の公演が行われたが、そこでこのメンバーは事件の被害者にもかかわらず、ステージ上で騒動について謝罪をさせられたという。しかも、その時、客席の前の方には彼女に危害を加えた当事者のグループが陣取り、からかうような言葉を発していたというのだ。
それでますます私はこの件のことが気になり、いろいろと調べるようになるのだが、まずはなによりも被害者であるメンバーのことが気がかりであり、そして、この事件の原因となった構造的な問題、そして、それに対する運営やメディアの対応など、普段から私が強く関心をいだいている、性差別や性暴力、組織による個人の権利の軽視などといった問題を可視化するものであることが明らかになっていった。NGT48のことをほとんど知らない私がこの件に強く興味をひかれるのもおそらくそのせいであり、SNSなどでこの件に対するいろいろな人たちの反応を見る限り、私のような者はけして少なくはないように思える。
普段、芸能人のスキャンダルなどはくだらないと思っているし、メディアはもっと重要な問題を取り上げるべきだと考えているのだが、この件については現在の日本社会における重要な問題ともかかわるものであるのと同時に、当のメディア自体が被害者を救うのとは別のベクトルでの報道を行っているように思える部分もあるということで、広く注視されるべきであろう。
今回の件についていろいろと調べていく上で、私は今回、涙の告発を行った被害者メンバーのことを人としてとても魅力的だと思った。本人としてもこのようなかたちで知られることは不本意ではあるだろうし、彼女のパフォーマンスを一度も観たことすらない私のような者が少し調べただけで簡単にこのようなことを言ってしまうのはあまりにも軽すぎはしないだろうかという思いももちろんあるのだが、SNSなどでこの件に対する人々の反応を見る限り、やはり私のような者は少なくないのだと感じた。
まほほんこと山口真帆は、1995年9月17日に生まれ、青森県の八戸市出身だということである。アイドルよりは、モデルになりたいという気持ちが強かったのだという。美しい女性に対する関心が強く、好きなモデルの写真集や画像を集めるのが趣味だったようだ。
AKB48は2005年に劇場での初公演を行い、翌年、シングル「桜の花びらたち」でインディーズデビューした。アイドルファンの間で徐々に人気を高めていくが、それが一般的になっていったのはキングレコードに移籍し、オリコン週間シングルランキングで最高3位を記録した2008年の「大声ダイヤモンド」あたりからだろうか。翌年の「言い訳Maybe」で初めてオリコン週間シングルランキングの1位に輝き、以後、「RIVER」「桜の栞」も連続して1位、これらの楽曲も収録したベスト・アルバム「神曲たち」が2010年4月7日にリリースされると、オリコン週間アルバムランキングの1位、年間アルバムランキングでも12位の大ヒットを記録したのであった。これがAKB48が社会現象化しつつあった頃であり、次のシングル「ポニーテールとシュシュ」に投票券が封入されていた「AKB48総選挙」も大きな話題となった。この投票結果を受けて大島優子がセンターを務めた「ヘビーローテーション」も大ヒットし、そのキャッチーな曲調とも相まって、AKB48を世間一般的に旬である国民的アイドルグループとして印象づけたのであった。当時、「神7」と呼ばれていたAKB48の主要メンバー、前田敦子、大島優子、篠田麻里子、渡辺麻友、高橋みなみ、小嶋陽菜、板野友美を子供から大人まで、多くの日本国民が認知していたような印象がある。
この頃、山口真帆は青森県で中学生だったと思われるのだが、アイドルにそれほど興味がなかったとはいえ、これだけ流行っているのだから、AKB48のミュージックビデオは観たようである。そこで、渡辺麻友のことを「この完成された顔はなんだ!!」と思い、好きになったのだという。他にも「歌もダンスも上手で、アイドルとしてパーフェクト!」「正統派アイドルなのに、性格がおちゃめで子供っぽいところも大好き」などとも話していたようだ。山口真帆が後にアイドルとして活動するにあたり、その理想像的なモデルとして渡辺麻友をイメージしてもいたであろうことは想像に難くない。渡辺麻友はナイアガラサウンドからの影響も感じられる素晴らしいシングル「11月のアンクレット」を最後に、2017年でAKB48を卒業するが、男性スキャンダルとは無縁のアイドル活動をまっとうしたことでも、一部のアイドルファンの間では賞賛されている。しかし、その姿勢を貫くことは時として孤独でもあり、2015年6月14日に放送された「情熱大陸」では「AKBはまじめに頑張ったり、ストイックにやったり、それが正解じゃないところ。まじめな子が損をするような世界でもあるので、AKBは」などとも語っていたようだ。
ちなみに私はアイドルが別に恋愛をしていてもかまわないと思う派だが、好感を持っているアイドルはことごとく活動中は恋愛をしないタイプのアイドルであり、これはおそらくその理想像に対するストイックさにひかれているからではないか、という気がする。また、私は基本的にただのミーハーなので、2010年には「ポニーテールとシュシュ」のシングルCDを買って、「AKB48総選挙」にも投票しているのだが、その時には渡辺麻友に入れたし、CDも特典として渡辺麻友の生写真がもらえる店をわざわざ探して、秋葉原のとらのあなまで買いにいった。
また、当時のAKB48のメンバーでは他に小嶋陽菜が好きだったらしく、「お顔もかわいいんですけど、お身体が美しいのが憧れです」「アイドルとして一番ハマったのも憧れな方も、小嶋陽菜さんですね」などと話していたようだ。
当時、私はモーニング娘。のメンバーであった道重さゆみに人生を救われたことから、自分なりのファン活動を行っていたのだが、小嶋陽菜が「さゆみん好きですね」と言ったり、うさちゃんピースをしたりしていたので、やや好感を持っていた。
今回の件を調べているうちにたまたま見つけたインターネット配信の動画で山口真帆は、「真面目にやっててもね、よう分からんからこの世界は。でも、真面目にやりたいと思う。アイドルが好きだから。好きだったから。まゆゆさんとか小嶋陽菜さんを見て、アイドルになりたいと思ったから」と話していた。
AKB48の「桜の木になろう」がヒットしていた2011年3月11日、東日本大震災が日本を襲った。山口真帆が住んでいたであろう青森県の八戸港にも津波が押し寄せ、大きな被害が発生した。それを見て、当時、中学校を卒業する直前だったであろう山口真帆は「人はいつ死んでしまうかわからない。そして、世の中に困っている人はすごくたくさんいる」と思い、ボランティア団体に参加して、活動を行っていたのだという。そんな時、AKB48が好きな友人に誘われて観に行ったドキュメンタリー映画、おそらく「DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る」だと思うのだが、その中で東日本大震災の復興支援のため、被災地訪問ライブを行うAKB48の姿を見たのが、アイドルになりたいと思ったきっかけだったようだ。
山口真帆は自分はなんのために生きているのだろう、生まれてきたからには人のためになりたい、というようなことを普段から考えているタイプだったようで、そこで導かれるようにして、アイドルという目標に出会ったようである。
その後、2014年にNMB48のオーディションに応募するが最終審査で落選するが、2015年にはNGK48の第1期生オーディションに合格し、晴れてアイドルになるという夢をかなえるのだった。アイドルになることについて、当初、親は反対していたようだが、祖父が新潟出身で、親戚もいるからということで、NGT48のメンバーになることは許されたのだという。
また別のインターネット配信で話していたのだが、この時に山口真帆は携帯電話の番号を変え、それまでの友人とも連絡を絶ったのだという。アイドルは恋愛をしてはいけないし、男友達もいるべきではない、たとえ女性の友人が電話番号を知っているだけだったとしても、そこから男の友達に知らされるかもしれない。そこまでの覚悟を持って、山口真帆は新潟に引っ越し、NGT48のメンバーとしての活動を開始したようである。
2016年の秋、山口真帆がインターネットで配信した映像に悪意のある編集が勝手にされ、拡散されるということがあったようだ。アイドルとして活動をするにあたり、特に男性スキャンダルはけしてあってはならないと強い覚悟で取り組んでいただけに、ひじょうに悔しく、ショッキングな出来事であり、山口真帆は当時の支配人に活動辞退さえ訴えたのだという。親までをも心配させてしまったことがひじょうに心苦しかったようで、後にこのことについて涙ながらに告白していたようだ。山口真帆はその悪意ある動画を編集、拡散した人の名前も知っているということだが、本来ならば運営はこの人物を名誉棄損で告訴してもいいレベルなのではないかと思う。
山口真帆については、調べれば調べるほど良いことしか出てこなく、そのパフォーマンスを観たことすらないにもかかわらず、私の中では好感度が上がっていく一方である。それだけに、ぜひ彼女にはこれ以上、苦しんでほしくはないと強く思うと同時に、この期に及ん当時の支配人やプロジェクト全体の責任者が表に出てきて事情説明をしていないこと、また、真相の解明を行わない、というかまるで回避しているかのようにして幕引きを図っているように思えることに、ひじょうに憤りを覚えるのである。
このことについて、ほぼなにも出来ない自分自身がなかなか嘆かわしくはあるのだが、微力ではあるが、彼女の素晴らしさ、及び、この件に関する様々な対応について感じている違和感について、少しでも伝わればと思ってこの文章を書いた。