人生とは失っていくことの連続だが、20世紀のアメリカが象徴する高度資本主義社会の豊かさもまた然りではないかと、ここ最近は特に思うわけである。それでしだいに瘦せ細っていくのか、いやむしろだからこそより核心となるものがはっきりとして、より本質的になっていくのか、それは人の捉え方それぞれなのだろう。
アメリカのオルタナティヴ・ロック・バンド、ディアハンターの音楽を初めて聴いたのは、2008年のアルバム「マイクロキャッスル」の頃だったと思う。ひじょうにクオリティーが高い。そして、新しいアルバムがリリースされる度に聴いているが、その期待が裏切られたことはない。とはいえ、そのリリースを心から待ちわびていたわけでもなく、インターネットなどでニュー・アルバムがリリースされたことを知り、聴いてみると確かに良いということである。その頃、CDをあまり買わなくなり、インターネットで音楽をダウンロードする方がメインになりかけた時であった。
CDを買っていた頃の方が、1枚1枚に対する思い入れは強い。2019年1月18日、ディアハンターのニュー・アルバム「ホワイ・エヴリシング・オールレディ・ディサピアード?」がリリースされたが、それ以前に音源は出回っていた。しかし、私はそれを探して聴いてはいなかった。いずれ正式にリリースされてから聴けばいいと思っていたからである。
この日は他にも楽しみにしていたアルバムがいくつかリリースされた。しかし、仕事で群馬県のスキー場に行って、イタリアンのフルコース料理を食べた後で夜遅くまでミーティングを行うということをやっていたため、すぐにちゃんと聴くことはできなかった。ホテルの部屋で聴きながら寝た。途中でおそらく眠りに落ちたが、これはかなり好きだと思った。
これまでのこのバンドの音楽性を考えると、その本質的な魅力は失っていないながらも、アプローチはきわめてポップである。とはいえ、1970年後半のデヴィッド・ボウイ的な意味合いにおいてのポップであり、たとえば「ロウ」あたりを彷彿させるのは、インストゥルメンタルの楽曲が収録されていることによるのだろう。あとはXTCの「スカイラーキング」だとか、ビートルズの実験的な部分などを想起させられたが、おそらく印象は聴く人の音楽遍歴や趣味嗜好によってかなり異なるのではないか、という印象を受けた。
すでに脱退していたディアハンターの過去のメンバーが昨年の秋に亡くなったが、そのことが少しは影響しただろうか。私はしたのではないかと思う。失われていくものに対する郷愁、そして、それを超えることによって、より本質に近づく。これは私が日々の生活において感じているリアリティーであり、ディアハンターのこのアルバムは、音楽的に完全に好みであるのみならず、そのような感覚に肯定感をあたえてくれるような部分もあるため、私はとても気に入っているのだ。
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