私が大橋荘で生活をしていた1985年の春から約1年間、つまり昭和60年度について掘り下げるという作業を最近はある目的のために行っているのだが、もちろん飽きた時点でやめるのである。
この期間に日本である程度ヒットしたポップスについて振り返っていきたいと思うのだが、ここはなんとなくヒットしたような印象があるという記憶ではなく、データ上ヒットしていたものを取り上げることにしたい。そして、ヒットしたという基準を、オリコン週間シングルランキングの20位以内に入った曲ということにしていきたい。ヒットしたとはいえ、おそらく個人的にそれほど馴染みがない曲も出てくるのではないかと思うのだが、それらを聴いたり、データを調べてみることによって、あの頃の気分により近づけるのかもしれない。
時系列でいくのならば、まず1985年の春からはじめるべきなのだが、書きながら当時のこの時期の気分も思い出せた方がいいのではないかという理由により、1986年の1月をスタートとしたい。1月1週目はオリコンのランキング集計がなかったため、この年の最初のランキングは1月13日付ということになる。この企画においては、原則として1つの記事に対して1週間分のランキングを扱うこととし、その週に初めて20位以内にランクインした曲を対象にしていきたいと思う。
この週のランキングで初登場1位を記録したのは、新田恵利のデビュー・シングル「冬のオペラグラス」である。1985年4月1日に放送が開始されたフジテレビのバラエティー番組「夕やけニャンニャン」の出演者によって結成された、おニャン子クラブのメンバーである。「夕やけニャンニャン」は、フジテレビが1983年から土曜の深夜に放送し、女子大生ブームを巻き起こした「オールナイトフジ」の女子高校生版としてスタートした。おニャン子クラブについては一般の女子高校生というイメージが付けられていたが、実際にはすでに高校を卒業していたり、事務所に所属しているメンバーも少なくはなかった。
おニャン子クラブの人気が高まり、7月にはデビュー・シングル「セーラー服を脱がさないで」がリリースされ、これがオリコン週間シングルランキングで最高5位のヒットを記録した。リリースを記念するイベントが池袋のサンシャインシティ噴水広場で予定されていたが、人が集まりすぎて中止になった。新田恵利は、中島美春、福永恵規、内海和子と共に前列のメンバーに抜擢され、ソロパートもあった。一般の高校生として応募し、合格したのだが、すぐに向いていないと思い、辞めようと思っていたのだが、初期のメンバー数名が不祥事によって脱退したこともあり、出演を継続することになった。
河合その子、うしろゆびさされ組(高井麻巳子・岩井由紀子)、吉沢秋絵に続き、おニャン子クラブからは4組目のソロ・デビューとなり、初登場1位を記録した。この時点でおニャン子クラブはまだ1位になった曲がなく、関連アーティストとしては河合その子「涙の茉莉花LOVE」に続く、2曲目の1位となった。
作詞が秋元康、作曲・編曲が佐藤準という、「セーラー服を脱がさないで」などと同じ作家によって書かれていて、1986年1月1日にリリースされた。曲調はフィル・スペクター・サウンドやオールディーズのアメリカン・ポップスからの影響が感じられるが、歌唱力は高くはないが、とにかく印象に残るヴォーカル、特に「イェイイェイイェーイ、ウォウォウォウォー」のフェイクが衝撃的であった。
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Myこれ!クション 新田恵利ベスト(2)
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この週のランキングで2位に初登場したのは、「冬のオペラグラス」と同じく1986年1月1日にリリースされた吉川晃司「キャンドルの瞳」である。吉川晃司は1984年2月1日にデビューし、水球経験者であることなどが話題になっていた。同時期に「涙のリクエスト」でブレイクを果たしたチェッカーズと共に、デビュー当時はアイドル的な人気も高かった。男性アイドルでは1980年以降、田原俊彦、近藤真彦、シブがき隊と、ジャニーズ事務所からのデビューが続き、この年も野村義男が率いるThe Good-Byeがデビューしたが、この年はチェッカーズと吉川晃司の活躍がひじょうに目立った。
「キャンドルの瞳」は7枚目のシングルで、個性的なヴォーカルが印象的な楽曲で、作詞が安藤秀樹、作曲が原田真二、編曲が後藤次利となっている。このシングルのB面に収録された「奪われたWink」の作曲は、まだデビュー前の岡村靖幸である。
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MODERN TIME
1,978円
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この週の20位に初登場したのは柏原芳恵の「春ごころ」であり、最高位は10位となっている。柏原芳恵は1980年6月1日に、「No.1」でデビューした。当時は柏原よしえと、名前がひらがな表記であった。1981年にアグネス・チャンなどが歌った曲のカバー「ハロー・グッバイ」で最高6位を記録すると、その後、1980年デビューの女性アイドルでは松田聖子、河合奈保子と共に、ベスト10の常連となる。しばらくは企画盤を除くすべてのシングルを10位以内にランクインさせていたが、それもこの「春ごころ」が最後となった。
作詞・作曲は五輪真弓、編曲は萩田光雄で、1986年1月1日にリリースされている。当時、柏原芳恵は20歳だったが、すでにアイドルポップスらしさはなく、より本格的な大人の女性歌手としての方向性を模索していたようでもある。
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この週のトップ20で、前週の圏外からランクアップして入ってきたものとして、本田美奈子「Temptation(誘惑)」、HOUND DOG「ff(フォルテシモ)」があるが、いずれも1985年にすでに20位以内にランクインしていた曲であり、一旦、順位を落としてから、再浮上したものである。その時期までにこの企画がまだ続いていれば、おそらくその時に取り上げるはずではあるのだが、すでに飽きていた場合には確実に終わっている。


