Negicco「relive MY COLOR」について。 | …

i am so disapointed.

Negiccoが中野サンプラザでライブを行うことを知ったのは数ヶ月前のことだった。7月には新潟の朱鷺メッセまで行ってとても楽しかったのだが、その後、8月ぐらいからとても忙しくなり、一般的にライブをやっているぐらいの時間帯については、ほぼ自由が利かない状態となっていた。中野サンプラザは一昨年の4月、私がはじめて観に行ったNegiccoのワンマンライブの会場でもある。現在、私は中野サンプラザから電車を使えば10分程度の場所にいる場合が多いのだが、その日のその時間に行くことはほぼ不可能であった。あわよくばという思いもあったのだが、週明けに当日の夕方から打ち合わせが入り、それで完全に諦めがついた。夕方に打ち合わせがあるのに、18時開演のライブに行けるはずがないからである。

 

ツイッターのタイムラインをながめていると、いろいろな場所から人々が中野に向かって集まっている様子がうかがえた。7月には私も新潟に向かう新幹線の中でそれらを見たり、自分で書き込んだりしていた。あの頃はあんなに遠くても行けたのに、いまやこんなにも近いのに行けないという現状である。しかし、それもまた運命であり、いつもすべてにおいて本気の全力であるため、導き出された結果がおそらく自分にとって最も正しいのだ。つまり、今回は行けないのが正解ということである。こういうことがあるからこそ、余計に次にまた行きたいと思うかもしれないし、その時の楽しみはより高まるのだろう。そう思いながら、いまやるべきことを朝から全力でやっていた。

 

すると、待っていた人が夕方よりも早く現れ、やるべきこともわりと順調に終わった。その時点で17時06分だった。チケットがまだ販売されていると前日にツイートされていたし、当日券が発売されるという情報も見たような気がする。そもそもまだ残っているかどうかも分からなかったのだが、その時に出来る範囲で最大限の努力をするので結果はどうあれ反省はしても後悔はしないというスタイルでずっとやっているので、瞬時に取るべき行動を冷静沈着に決めた。

 

ネギライトは常時、カバンに入れて行動している。これは妻に持っていることをバレないようにだが、実はいくつか持っているアイドルグループのTシャツはイベント関係の仕事の時にユニフォームとして支給されたことになっているので、特にWHY@DOLLの冬のツアーのやつとかはデザインがかわいくてとても気に入ったらしく、妻が普通に部屋着にしている。先日、かせきさいだぁデザインの葱娘Tシャツも物色されていて、「どうせもう着ないでしょ?」などとも言われたのだが、デザインが気に入っているとかいろいろよく分からない言い訳をしていた。しかし、この日はライブに行くつもりなどそもそもないので、もちろんNegiccoのTシャツを着てきてはいない。とりあえず新しいワイシャツを着て行いこうと、よく分からないのだが思い立ち、近所のAOKIで売っていたやつを買って、事務所で1分ぐらいで着替えた。あと、ネギライトは実は7月の朱鷺メッセの時点で電池の残量があやうくなっていた記憶があったので、高円寺のデンカランドでボタン電池を買った。その前に電池の交換の仕方というか、そもそも開け方がよく分からなかったのだが、iPhoneで検索すると「しげたろうの日記帳」というブログで画像入りで詳しく説明されていたのですぐに分かった。私のような単なる無駄話だけではなく、こういうちゃんと人の役に立つブログを書いている人は素晴らしい。

 

その時点で開演24分前、当日券さえまだあってスムーズに買えれば間に合うはずである。こういう時に、慌ててはいけない。いつもは東京メトロ東西線はスルーして、総武線が来るのを待つのだが、それは新宿で乗り換えて帰宅するためであり、実は東西線は中野にも泊まるのだ。確かそんな気がして車内の案内図を外から見ると次は中野となっていたのですぐに乗車、中野で降りたら北口である。中野サンプラザには一昨年のNegiccoで来ているし、その前だと1987年に忌野清志郎のライヴを観ている。初のソロ・アルバム「レザー・シャープ」の時で、イアン・デューリー&ザ・ブロックヘッズのイアン・デューリーを除くメンバーがバックバンドであった。あの時、Negiccoのメンバーは誰一人として生まれていなかったのか。

 

そんなことを思い、横断歩道を渡って中野サンプラザに着いた。会場の前ではメガホンを持った係員のような人が開演間近なのでチケットをお持ちの方はご入場ください的なことを言っている。持っていない人はどうすればいいのか、当日券はまだ売っているのか聞こうとしたのだが、中を見るとどうやらプレイガイド的な所でチケットを買う的な情景が繰り広げられていたので、おそらくこれがそうだろうと思って近づくとまさにそうだったので、冷静沈着にチケットを買った。もちろん心の中ではガッツポーズだが、そこは大人の男性なので、あくまで冷静さを装った。

 

もちろん2階席だが、はじめて中野サンプラザでNegiccoを観た時にもそうだったので、初心に返る的な意味でもちょうどいいと思った。私がNegiccoの音楽をはじめて聴いてすぐにハマった2016年、Negiccoはすでに結成から12年以上が経過していて、どうしていままで知らなかったのだろうとか、いまさら知るなんて遅すぎるのではないかとか思っていたのだが、その後も新しいファンがどんどん増えているようで、昼食を取りながらすぐ近くで行われるライブなのに行けないとことによるブルーズをかかえながら読んでいたツイートには、はじめてNegiccoのライブに行くというものも結構あった。

 

席は後ろから2列目だったが真ん中あたりで、ステージが全体的に俯瞰できる。そういう意味では、中野サンプラザというのは本当に良い会場なのだ。忌野清志郎とNegiccoしか観たことがないけれども。

 

開演前の会場では、やはりすごく良い曲が流れている。今回は生バンドによるライブだということが話題になっていたが、どうせ行けないと思っていたので、あまり詳しく調べてはいなかった。前回の朱鷺メッセの時は、久しぶりの新潟でありNegiccoのワンマンライブということで、過去のNegiccoの楽曲を時系列に聴いていくなどして気分を高めていたのだが、今回はつい1時間ほどまえには行けるとはまったく思っていなかった。心の準備ができていない。

 

ライブだけではなくすべてにおいてトータル的に楽しめた7月の新潟遠征だったのだが、1つだけ反省があるとするならば、ライブ前にはしゃぎすぎて肝心のライブの時間に万全の態勢だったわけではない、ということが挙げられる。一体、なにをやっているのか。にもかかわらず最高だったので、やはりNegiccoはすごいのだ。

 

それはそうとして、今回は青天の霹靂的に訪れた参加の機会であり、事前の準備がまったくない。こういうのもまた良いものである。

 

場内が暗くなり、いよいよライブがはじまる。ステージにバンドメンバー、そして、Nao☆、Megu、KaedeというNegiccoの3人が現れる。早くも気分は盛り上がり、1曲目は最新アルバム「MY COLOR」から「Never Ending Story」である。やはり生バンドは良い。Negiccoは一般的には新潟を拠点とするアイドルグループということになっているのだが、私は純粋に音楽グループとして好きである。ますはそれありきで、次にメンバーのキャラクターや、その歴史が持つ物語性、そして、ファンや運営をも含めたNegiccoというカルチャーが好ましく思えた。つまり、まずは楽曲ありきである。私は2016年のアルバム「ティー・フォー・スリー」の大人ポップ路線が大好きなのだが、最新アルバムの「MY COLOR」においては、より溌剌とした部分が増えたように思える。それは、この「Never Ending Story」から受ける印象によるところも大きいのだろう。

 

そして、Negiccoの楽曲はグループの物語性をほのめかすことはあったものの、基本的にはそれから独立している体であり、ファンが聴けばより深く楽しめる、というようなタイプだったと思うのだが、「MY COLOR」の収録曲にはそのものズバリというようなものが少なくはない。もちろんNegiccoのことをまったく知らなかったとしても、素晴らしいポップスとして純粋に楽しめるクオリティーは持っているのだが、今回はその物語性の含有量がいつに増して多めだと思える。それはおそらく、結成15周年を記念するアルバムという意味合いによるものでもあったのだろう。1曲目のタイトルからして「Never Ending Story」と、物語のことを歌っているのである。

 

続いて、「MY COLOR」の2曲目の収録された「キミはドリーム」である。アイドルポップスといえば恋愛をテーマにした曲が多いが、これらの曲は生きざまとでもいうべきものについて歌われている。音楽、夢、人生、このようなテーマが極上のポップ・ミュージックにのせて歌われている。

 

MCがどこで入ったかとかは正直言ってあまり覚えてはいないし、もちろんライブ中にメモを取るようなこともしてはいない。セットリストだけははっきり覚えている。それは、おそらく後ほど言及するであろうある理由によってである。

 

それにしても、Negiccoのライブは良い。楽曲やパフォーマンスはものすごくカッコよくてちゃんとしているのに、MCはすごくゆるい。適当とかいい加減という言葉は悪いニュアンスで用いられることが多いが、本当は良い意味を持った言葉ではないかと思うのだ。NegiccoのMCには、その本来での良い意味における適当さ、いい加減というか良い加減、ごっつええ感じとでもいうものを感じる。悪意の付け入る隙がないというか、本当に良いものだなと思うし、本当にクソッタレなことが多い現実におけるオアシスというか、佐野元春の「Rock & Roll Night」流に言うと、「瓦礫の中のGolden ring」なのではないかと思うのである。

 

スマートフォンのことを「スマホ」と略するのが生理的にずっとダメで、それはおそらく「フォン」の頭文字がどうして「ホ」なんだよというようなどうでもいい人からどうでもいい、ひじょうにくだらない理由であり、ただただ気持ちが悪いことはネオアコとネオ・アコースティックは違うとか言いながらアズテック・カメラのことをアズカメなどと略して平気な感性とも通じるので、あまり人前では言わないことにしていた。しかし、Negiccoが「スマホには写らない」という曲を出したならば、もうそれは「スマホ」で良いでしょう、という程度にはいい加減(本来の良い意味の)ではある。この曲は思い出野郎Aチームというグループの作曲らしく、lyrical schoolの素晴らしいアルバム「WORLD'S END」に収録された「オレンジ」という最高の曲と一緒である。ただただ心地よい音楽で、この期に及んで、私はやはり横ノリの曲の方が特にライブでは好きなのだな、と実感したのであった。

 

そして、「愛、かましたいの」、2016年の暮れ、アルバム「ティー・フォー・スリー」の後に最初にリリースされた中毒性の高いポップ・ソングである。ステージのスクリーンにはミュージック・ビデオが映されている。今回のライブのために新しく撮影された映像も多数映写され、「スマホには写らない」ではKaedeが映画館のようなところでただただスマートフォンを見ているような映像が流れた。そして、「愛、かましたいの」ではやはり、Kaedeの「ちょっとじゃなくて ずっとがいいんだ ほんとは!」が最高である。

 

そして、次に「Tell me why?」が歌われた。「MY COLOR」リリース当時にファンの間でかなり人気があったような気がする。ユーロビートっぽい曲で、当時、WHY@DOLLのライブによく行っていて、やはりユーロビートテイストの「Promises, Promises」とか、カバーでも「Give Me Up」や「ラッキー・ラヴ」をやっているのを聴いていたので、それほど新鮮には感じなかった。あと、朱鷺メッセではこの曲をやっていなかったので、私がライブで聴くのは今回がはじめてであった。アレンジはおそらくアルバムとはかなり違って、バンドの演奏になるとまるでシティ・ポップである。これはかなり気に入った。

 

同じく私が「MY COLOR」で最も衝撃を受けたが、朱鷺メッセではやらなかった「She's Gone」を、やはりライブでは初体験である。シャムキャッツによるインディー・ポップ的な私が大好きなパターンの音楽をNegiccoがやってしまうという感激に加え、やはりMeguの「一人の弁当全然美味しくないから」という私にとっての「MY COLOR」におけるピークを初めてライブで体験できた感激、そして、その歌声にはやはり鳥肌が立った。

 

この時点で、セットリストが「MY COLOR」収録曲のみ、しかも収録曲順に歌われていることにやっと気がついた。これは、つまりそういうライブなのだろうか。後から2列目から観ていても、Negiccoのパフォーマンスは魅力的でずっと観ていたくなる。よって、せっかく新しく撮り下ろした映像が満載なのにもかかわらず、スクリーンをそれほど観てはいない。「She's Gone」の時には一週間のイラストのようなものが映っていることに途中から気がついた。

 

どの曲の時か忘れたのだが、Nao☆がスーパーで買い物をしながら売っているものを食べるやつがあり、その時ばかりはスクリーンに目を奪われた。特に饅頭のようなものを頬ばるシーンがたまらなく良い。これをおかずにサトウのごはんが食べられるレベルで、すごく良い。その後、一斤の食パンに齧りつく。最高である。アンコールのMCで発表されていたのだが、これらの映像は後日、YouTubeで公開されるようだ。

 

「MY COLOR」の1曲1曲が、生バンドの演奏とNegiccoのパフォーマンスによって、その魅力を増幅させていく。そして、アルバムの最後、13曲目に収録された「15」で、ライブ本編は終わるという。スクリーンには過去のNegiccoの歩みを編集したような映像が流れ、デビュー・シングル「恋するねぎっ娘」に繋がり、ループするような流れのアルバム音源、そして、朱鷺メッセにおいてはまさにそれが実現したのだが、今回はそれとは違うアレンジであった。

 

なんと、「MY COLOR」収録曲だけでライブを完成させてしまった。過去に代表曲、人気曲がたくさんあるが、いま現在のNegiccoはこれだという、ひじょうにロックな姿勢である。もちろん久しぶりの中野サンプラザ、生バンドであの曲もこの曲も聴きたいというのは、正直いってたくさんある。しかし、このライブはつまり「MY COLOR」というアルバム収録曲の魅力を最大限に高めるというコンセプトだったのであり、それゆえの「relive MY COLOR」というタイトルだったのだろう。

 

アンコールに応え、ふたたびステージに登場したNegiccoだが、実はNao☆がTシャツを後前に着ていたため、出てくるのが遅れたのだという。今年はメンバー個人での活動も充実していたというMCに続いて、Nao☆のソロ曲「菜の花」が歌われた。この曲はリリース当時、かなり気に入ってよく聴いていたので、その頃のことを思い出したりもした。このライブで聴けると思っていなかったので、これはうれしいサプライズであった。Negiccoのファンとしてはかなり薄いという自覚を持っているのだが、こうして振り返ると、一年間の思い出の中にNegiccoは比較的よくいたなとも思うのであった。続いて、Meguの「星のかけら」、Kaedeの「あの娘が暮らす街(まであとどれくらい)」と続き、ここまで来ると、これは「MY COLOR」の初回限定版に付いていたDisc2の曲順だと気づくわけであり、そうなると最後は「はじまりの場所」である。Nao☆が作詞をしたこの曲は、まさにNegiccoのはじまりの場所についいて言及されたものである。

 

演奏が素晴らしく、それはロック的である。ハード・ロックとかパンク・ロックのようなロック的ではなく、ザ・バンドのような過去のポップ・ミュージックの歴史を踏まえ、それを自分たちなりに進化させたようなものである。それは、アイドルが無理やりそのような音楽をバックに歌ってみたという感じではなく、そのパフォーマンスや存在感ともマッチするものであった。そして、「MY COLOR」は新潟を拠点とするアイドルグループ、Negiccoにとってのロック・アルバムだったのではないかと思ったのである。それは生きざまを歌い、我々により良く生きるための指標をあたえてくれる。私が中野サンプラザでライブを観たのは忌野清志郎とNegiccoだけだが、そこにはなにやら必然性があるような気すらしてきた。

 

そして、Negiccoの音楽とは日本のポップ・ミュージック史の良質な部分を継承し、独自の新しいものをつくり出す、いわばコズミック・ジャパニーズ・ミュージックともいえるものではないだろうか。これはもちろん、グラム・パーソンズの音楽などについて言われた、コズミック・アメリカン・ミュージックのもじりである。

 

それはまったくの余談なのだが、つまりアンコールも含め、Negiccoは「MY COLOR」収録曲、つまり一昨年の中野サンプラザの時点ではまだ発表されていない曲しかやっていない。

 

そして、ダブルアンコールでは「ねぇバーディア」「さよならMusic」「圧倒的なスタイル」という、ローリング・ストーンズでいうところの「スタート・ミー・アップ」「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」「サティスファクション」的な怒涛の定番曲3連発で大団円となった。「圧倒的なスタイル」では当然、恒例のラインダンスが起こり、ためらいがちだった隣のファンの方も誘って大いに盛り上がったのだが、終演後、帰りぎわにわざわざ「楽しい日をありがとうございました」とまで言ってもらった。Nrgiccoはその素質もさることながら、運営によるキャリアデザイが絶妙であり、それが開放的なムードにもつながり、ファン層を広げ続けているのだろうと思った。

 

そして、MCにはダブルアンコールにおいてもピースフルなムードが漂い、日本エレキテル連合やザ・たっちのギャグがコール&レスポンスされている。帰りにはスタッフと一緒になって、事務所社長でマネージャーの熊さんこと熊倉維仁がサトウのごはんをファンに配りながら、固く握手をしていた。