トーヴ・スティルケ「スウェイ」を聴いた。 | …

i am so disappointed.

今年は女性アーティストのアルバムに優れたものがひじょうに多いような印象がある。最近、聴いたトーヴ・スティルケの「スウェイ」もひじょうに素晴らしく、これから何度も繰り返し聴きそうな気がする。

 

トーヴ・スティルケはスウェーデン出身のアーティストで、アルバムも今作が3枚目になるのだが、世界的にはまだまだ知名度は低いようである。16歳の頃にスウェーデンのアイドル・コンテスト的なものに応募し、そこで3位になったことをきっかけにデビューしたようである。当時の映像を観てみると、ホイットニー・ヒューストンのバラードをかなりの声量と歌唱力で歌いこなしている。このような基礎的な実力がある上で、これまでに発表してきた作品はエレクトロ・ポップ寄りなものが多い。2015年にリリースされた「エゴ」のビデオは東京で撮影され、ひじょうに美しい仕上がりになっている。また、同じ年にはブリトニー・スピアーズ「ベイビー・ワン・モア・タイム」のカヴァー・ヴァージョンも発表している。

 

そして、つい先日にリリースされた3枚目のアルバム「スウェイ」だが、楽曲のクオリティーがものすごく高く、トーヴ・スティルケのポテンシャルもフルに生かされているようである。

 

ロックン・ロール黎明期や1960年代のガールズ・グループ全盛期から、ポップ・ミュージックとはおもに若者のためのものであり、主題はその最大の関心事であるボーイ・ミーツ・ガールであろう。モータウンやフィル・スペクター・サウンドの全盛期などは一流のヒット職人ともいえる作家やスタジオ・ミュージシャンによる楽曲とポピュラー歌手のパフォーマンスが拮抗し、数々の素晴らしい作品が生み出された。

 

ポップ・ミュージックはもううでにあの頃のような影響力を社会に対して持っていないのかもしれないが、それでもボーイ・ミーツ・ガールというテーマは普遍的なものであり、それを当時を思わせるレトロなサウンドではなく、最新型のポップ・ミュージックとして表現したようなのが「スウェイ」なのである。ちなみに、トーヴ・スティルケは自分で曲も書くので、そこは少し違っているかもしれない。

 

「スウェイ」は全8曲、約27分とアルバムとしてはやや演奏時間が短めだが、内容がひじょうに充実しているため、これぐらいがちょうどいいのではないかという気もする。

 

1曲目に収録されたアルバム表題曲「スウェイ」においては、恋がはじまる直前の化学反応的な感覚について言及したポップ・ミュージックである。この昔々から定番のテーマが、クラブでもカッコよく聴こえるであろうエレクトロ・ポップにのせて歌われる。曲そのものがまるで新しい恋のように、フレッシュかつアップリフティングである。

 

2曲目の「セイ・マイ・ネーム」は付き合いはじめたかはじめないかぐらいの相手の口から自分の名前が発音されるときめきについて歌われる。「あなたはすぐに付き合ったりするようなタイプじゃないって言っていたけれど、別に気にしないわ。だって、私たちがふれ合うと気持ちが高まるから」というような歌詞に続いて歌われる「Up, up, up. up, up」という部分がひじょうにキャッチーで印象に残る。「私の名前を言って。お気に入りのセーターを着るように」という歌詞もすごく良い。そして、この曲のビデオはものすごくセンスが良いと思うのだ。

 

 

次に収録された「オン・ザ・ロウ」も恋になるかならないかの絶妙に微妙な状態について歌われていて、なかなかたまらないものがある。この曲においては、声の高低による表現や、やはりフックとなる印象的な部分があり、キャッチーでありながらもかなり計算してつくられた作品なのではないかという気がする。

 

「ミステイクス」はビタースウィートな曲について歌われていて、どうやら幸せな結末は迎えられそうもないのだが、「あなたは私に過ちを起こしたくさせる」というような歌詞がものすごくヴィヴィッドであり、ニュー・ウェイヴ的なキーボードの部分的な起用もハマっている。

 

「チェンジ・マイ・マインド」「アイ・ライド」「オン・ア・レヴェル」といずれもクオリティーは高く、そして、最後は「ライアビリティー(デモ)」である。傷ついてタクシーの車内で泣いているというシチュエーションからはじまるこの曲は、失恋をテーマにしている。そして、途中の歌詞にハッとした。「実際には私は人々が楽しむ玩具だが、すべてのトリックが効かなくなったら飽きられるだけ」と、そのようなことを歌っているのだ。これはポップ・スターである自分自身についての言及でもあるのだろうか。この曲のビデオはほぼワンショットで撮影されてい

 

るのだが、そのパフォーマンスはじつに魅力的であり、目を離すことができない。このような才能が世界的にはまだ無名に近い状態だということが信じられない。今回のアルバムでブレイクを果すとするならば、ポップ・ミュージック界はよりおもしろくなりそうな気がする。

 

 

Sway Sway
1,393円
Amazon