2005年の夏ぐらいの時点でアークティック・モンキーズは「NME」などでかなり話題になっていて、そのうち聴いておかなければぐらいには思っていた。フランツ・フェルディナンド、リバティーンズ、フューチャーヘッズ、ブロック・パーティーなどのブレイクにより、数年前からUKインディー・ミュージックはふたたび盛り上がりを見せていた。当時のシーンにはニュー・ウェイヴからの影響が感じられるバンドも多く、その辺りが個人的にも好ましく思えていた。
アークティック・モンキーズはライヴ会場で自分達の音楽が入ったCD-Rを配っていたらしく、その音源がファイル共有サイトなどを通じて多くの音楽ファンに知られ、大がかりなプロモーション等を行わずして人気を獲得していったようだ。フランツ・フェルディナンドなどの作品をリリースしていたインディー・レーベル、ドミノと契約し、10月14日にシングル「アイ・ベット・ユー・ルック・グッド・オン・ザ・ダンスフロア」をリリースすると、これが全英シングル・チャート初登場1位の大ヒットとなった。曲はきわめてシンプルなインディー・ギター・ロックであり、当時、このタイプの音楽のシングルがここまで売れるのは異例であった。この曲のビデオも演奏シーンを撮影しただけのものだったが、このバンドの魅力を短い時間で伝えるには最も良い方法だったのかもしれない。優れた楽曲と演奏とスタイル、それだけで勝負できるのだという自信が感じられた。
翌年、2016年1月16日にシングル「ホエン・ザ・サン・ゴーズ・ダウン」がリリースされると前作に続き全英シングル・チャート初登場1位、1月25日にリリースされた「ホワットエヴァー・ピープル・セイ・アイ・アム、ザッツ・ホワット・アイム・ノット」はイギリスで最も速く売れたデビュー・アルバムとなり、もちろん全英アルバム・チャート初登場1位を記録した。
アルバムのタイトルは労働者階級の若者のリアリティーについて書くことが多かった小説家、アラン・シリトーの「土曜の夜と日曜の朝」から取られている。アークティック・モンキーズの音楽はザ・ジャムやザ・スミスといったイギリスのギター・ロックの系譜に連なるようなものであり、かつ同世代の若者たちのリアリティーを描写してもいた。音楽ライターやポール・ウェラーをはじめとする多くのアーティストからも高評価を得た。
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前作に比べ、全体的に速くてラウドになった印象だが、一方でこのアルバムからの2枚目のシングルとしてもリリースされた「フロレセント・アドレセント」のように、回想的かつメランコリックな曲においては、アレックス・ターナーのソングライターとしての成長も感じさせた。
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2011年リリースの4枚目のアルバム「サック・イット・アンド・シー」ではやや初期に戻り、私の好きなアークティック・モンキーズが帰ってきたという感じで、わりと気に入っていた。「ザ・ヘルキャット・スパングルド・シャラララ」が特にポップで好きだった。全英アルバム・チャート初登場1位、日本ではオリコンで12位であった。
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ギター・ロックではあるのだが、ヒップホップのようなビートを導入している曲もあり、これがバンドの音楽に力強さと新しさをあたえているように感じた。アレックス・ターナーはデビュー当初からヒップホップが好きなことを公表していたが、ストリートのリアリティーを表現するという部分では共通するところがあったが、楽曲面で直接的な影響はあまり感じられなかった。このアルバムにおいて、ヒップホップ的な要素のサウンド面での導入についに成功したといえるだろう。
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このアルバムのツアーの後、アークティック・モンキーズは活動休止期間に入り、アレックス・ターナーはマイルス・ケインとのユニット、ラスト・シャドウ・パペッツとして活動したり、マット・ヘルダーズはイギー・ポップの高く評価されたアルバム「ポスト・ポップ・ディプレッション」に参加したりした。
約4年半ぶりとなるアルバム「トランクイリティ・ベース・ホテル・アンド・カジノ」は2018年5月11日にリリースされる。



