辛いなら忘れにおいで いつでも笑顔にする。 | …

i am so disappointed.

いまWHY@DOLLのライブで最もボルテージが上がる曲といえば、「Tokyo Dancing」なのではないだろうか。WY@DOLLのメンバーのみならず、それぞれのママもお気に入りだというこの曲は、アルバム「WHY@DOLL」の3曲目として発表された。

 

強力なシングル曲「菫アイオライト」「キミはSteady」が1曲目、2曲目に収録され、本当に大丈夫だろうか、その後にどんどん尻すぼみになっていくのではないかというような心配はあったのだが、次の「Tokyo Dacing」が最高であり、その後も良い曲がずっと続く素晴らしいアルバムだということが分かった。

 

その後、ライブやイベントでのパフォーマンスを重ね、いまやこの曲はWHY@DOLLのセットリストにおいて、かなり重要な曲になったのではないかと思える。

 

先日、「A-to-J  Connections」なる日本のポップ文化について取り上げた海外のサイトに、「WHY@DOLL」のレビューが掲載されていることを知った。すべて英文である。日本の音楽評論家や音楽ファンが海外の音楽を評価する場合と同様に、本国とは異なった視点が感じられておもしろかった。

 

日本の音楽雑誌で海外の音楽を取り上げる場合、時には歌詞の内容やアーティストのバックグラウンドなどをまったく理解しようとせずに書かれている場合も少なくない。トータル的に作品に対する理解は完全には為されていないともいえるのだが、一方で純粋に音楽として聴けているともいえるのではないか。敢えて爽やかなメロディーやサウンドにのせてものすごく批評的なことを歌っている曲が、ひじょうに聴きやすくておしゃれな曲、などと頓珍漢な評価をされることがあったとしても、である。

 

このサイトの「WHY@DOLL」評において、歌詞についての言及はほとんど無いのだが、曲やサウンドから得た印象が評価の中心となっているようだ。また、生活習慣やそのイメージに対する文化的な違いなども反映しているようで、なかなかおもしろかった。

 

「マホウノカガミ」において、ボーカルのパワーやレンジが評価されているのだが、夜に裏庭でスプリンクラーと一緒に踊りたくなる曲、などとも表現されている。

 

また、「菫アイオライト」が「80年代の日本のポップ音楽を思い起こさせる」、「忘れないで」が「昔の80年代のJーPOPが好きな人におすすめ」、「Dreamin' Night」が「シティポップの雰囲気を感じさせる」などと評価されている。

 

カントリー調の曲に挑戦した「Hello Hello Hello」については「懐かしい日本的なフィーイングが感じられる」、モータウンやグループサウンズといった1960年代のポップスからの影響が感じられ、作家もそれを公言している「恋はシュビドゥビドゥバ!」が、「アニメのエンディングテーマの雰囲気」を感じさせ、しかもそれが言うまでもないことだと述べられている。

 

「夜を泳いで」「Hello Hello Hello」のユニークさが評価される一方で、日本のファンに人気のある「恋なのかな?」の評価はそうでもない。アルバムは総合的に5点満点中4点の高評価をあたえられているのだが、中でも日本のファンとほぼ変わらない受け留められ方をしていると思えたのが「Tokyo Dancing」であり、「親しい仲間たちとの深夜のディスコパーティーの気分を味わわせてくれる」と評されている。

 

ディスコやクラブといったダンス空間は、退屈で憂鬱な日常を忘れるための非日常的な場として捉えられることが多く、それがディスコソングのテーマとして宇宙が取り上げられがちなことにも繋がっているのだろうか。

 

かつてアイドルのイベントやコンサートに行く人たちとクラブやディスコに行く人たちというのは、ほぼ交わらない印象があったのだが、いまやそれは過去の話である。ハロー!プロジェクトの曲で踊るクラブイベント「爆音娘。」や、クラブミュージックの要素を大きく導入したPerfumeのブレイク、また、「爆音娘。」の影響を強く受けたconnieがかかわったNegiccoなどの功績が大きいような気がする。

 

先日、レギュラー公演で初披露されたWHY@DOLLの新衣装はラメを用いたキラキラしたもので、その回のセットリストはダンスミュージックをコンセプトにしていた。もちろん「Tokyo Dancing」もパフォーマンスされ、大いに盛り上がったのであった。

 

ファンに振りコピをする人が多く、しかもその手数がわりと多いような気がするWHY@DOLLだが、「Tokyo Dancing」においてはそれがわりと分かりやすく、また、「Wow Wow Wow Wow」という部分を合唱することによって、一体感を感じやすい。もちろん曲の良さがそれを可能にしている。

 

また、この曲の歌詞にはディスコソングによくある非日常性の表現も見られる。タイトルが想像させるように舞台は東京なのだが、そこが非日常的なダンスフロアーとして描かれている。

 

「赤いタワー」は東京タワー、「丸いドーム」は東京ドーム、「お台場から七色の光」はパレットタウンの観覧車、「黄金の雲」は浅草のアサヒビール本社ビル隣にあるオブジェ、「空のツリー」は東京スカイツリー、「電気街」は秋葉原で、「スクランブル」は渋谷のスクランブル交差点といったところだろうか。

 

渋谷Gladのレギュラー公演によく来るようなファンにとっては見慣れたこれらの景色が、この曲においては「僕らの秘密のワンダーランド」であり、「銀河も超えて」たどり着くような場所として表現されている。

 

この曲の作詞者はWHY@DOLLと同世代の女性シンガーソングライター、仮谷せいらである。大阪という都会の出身者ではあるが、地方から上京して活動しているという部分において、WHY@DOLLに共感を持っていて、それがあらわれているのが「WHY@DOLL」におけるもう1つの提供曲「夜を泳いで」である。

 

地方出身者から見た東京への幻想、これを蘇らせることによって、たとえば日常の中で忘れかけてしまった上京した当初のときめきやわくわく感のようなものを思い出させてもくれる。そういった意味において、「WHY@DOLL」収録曲では「見慣れた景色は何も言わず背中をそっと押した」が、「待ってるね」と「笑顔で見送ってくれたあの日が消えない」、それでも「ここにいると決めたの」と歌われるちはるんのソロ曲、「Hello Hello Hello」ともじつはゆるく繋がっていような気もする。

 

そして、このブログでも何度か書いているが、この曲の中にとても好きなフレーズがある。WHY@DOLLのライブの中で、最もここを楽しみにしているといっても過言ではない。それは、ちはるんのソロパートである「辛いなら忘れにおいで いつでも笑顔にする」である。

 

ライブでこの箇所を歌う時、ちはるんは指で「おいで」というようなジェスチャーをするようなことがあるのだが、先日の「WHY@DOLLのほわどるに恋なのサー」やじつは今回、このテーマでブログ記事を書くきっかけにもなったDance Movieにおいて、この振りは存在しない。

 

人生において、多くの人々はできるだけ楽しもうという意識でいろいろなことに取り組むと思う。しかし、そこには悲しさや辛さのようなものが付随するのはよくあることである。その経験が糧となり、自分自身を理想としているものに近づけるのだと、もちろん信じてはいるのだが、やはり弱ったり折れそうになったりすることはあるだろう。

 

そのような局面において、絶対的に肯定感を得ることができる何かがあるということは、大きな救いになるのだろう。その強度が心を積極的にし、それによって何かを成し遂げることに繋がる。

 

「大袈裟かもしれないけど、私もそんな誰かのオアシスになれたら!って思ったんだ」

 

上京してから最初のシングル「サンライズ~君がくれた希望~」において、WHY@DOLLはそう言っていた。

 

現在、WHY@DOLLの存在は、少なくとも誰かにとって、そうなり得ていることは間違いない。

 

「辛いなら忘れにおいで 不確かな未来置いて」

 

これは先ほど言及した部分を、曲のわりとはじめの方ではーちゃんが歌う時の歌詞である。

 

たとえば大きな理想を追い求める場合、そこに確固とした意志が必要なわけだが、しかし実際には「不確かな未来」への不安は常に付きまとうのである。

 

現実を忘れてファンタジーに逃避するというよりは、肯定感を確実なものにして、それによって現実を変える。

 

それは、たとえば見慣れた東京の街を「僕らの秘密のワンダーランド」にしてしまうようなものである。

 

そのために必要なのは想像力と強度、それを可能にする肯定感であろう。

 

私にとって「Tokyo Dancing」の重要性というのは、これらのすべてを兼ね備えているところなのではないかという気がする。

 

「So, Tokyo Dancing 僕らがユニバース 君と踊れば Wow Wow Wow Wow」

 

WHY@DOLLのパフォーマンスと一体化し、一緒に踊り、声を上げれば、もはや「僕ら」そのものが「ユニバース」、つまり「宇宙」である。そのような肯定感を、この曲は私にあたえてくれる。

 

そんな「Tokyo Dancing」のDance Movieが公開された。夜の東京タワーを背景に踊るWHY@DOLLが、ずっと観られる。

 

この動画をきっかけに、WHY@DOLLの「ユニバース」がまた大きく広がることを心から望んでいる。

 

 

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