フー・ファイターズの9枚目のアルバム「コンクリート・アンド・ゴールド」がリリースされたということだったので、取り敢えずチェックしておこうぐらいの軽い気持ちで聴いてみたところ、なかなか良くて、3回続けて再生した。
1曲目の「Tシャツ」という曲がバラードっぽい入り方をするため、フー・ファイターズってこういうバンドだったっけと一瞬戸惑うのだが、少し経つとロックっぽくなるので、やはりこういうバンドだったと再認識するのである。
その後、ハードロックに影響を受けたようでありながらも、ポップ感覚が根底にあるような曲が続くのだが、思っていたよりも若々しいサウンドだなと思った。
という訳で、私はけしてフー・ファイターズの熱心なリスナーではない。1995年の初夏にリリースされたデビュー・シングル「ディス・イズ・ア・コール」はわりとすぐに買ったのだが、それはニルヴァーナのドラマーであったデイヴ・グロールの新しいバンドに対する興味ゆえであった。当時、金曜深夜にフジテレビで放送されていた「BEAT UK」という番組でいきなりランキングの1位になっていて、なんだか愉快だった記憶がある。
その夏はブリットポップ、つまりイギリスのインディー・ギター・バンドがヒットチャートの上位に次々とランクインするような状況が起こっていて、私も当時はイギリスのバンドのCDばかり買っていたような気がする。オアシスの「ロール・ウィズ・イット」とブラーの「カントリー・ハウス」が同じ日にリリースされて、どちらが1位になるかという話題を、イギリスのちゃんとしたニュース番組が取り上げたりもしていた。
そんな中、フー・ファイターズの音楽はポップなアメリカン・ロックであり、それが逆に新鮮でもあった。すぐ後にリリースされたアルバムも買ったのだが、あれはバンドではなくデイヴ・グロールが独力でレコーディングしたものだったらしい。
1997年に2枚目のアルバム「ザ・カラー・アンド・ザ・シェイプ」がリリースされ、確かこれも買ったはずである。「モンキー・レンチ」や「エヴァーロング」といったポップなシングル曲はわりと気に入っていたのだが、アルバムを通して聴いた記憶があまりない。かなりヒットはしていたと思うのだが、その頃の私の音楽の趣味とはやや異なっていたし、他に聴きたい音楽がたくさんあったからだ。レディオヘッド「OKコンピューター」、スピリチュアライズド「宇宙遊泳」、ザ・ヴァーヴ「アーバン・ヒムス」、日本ではコーネリアス「FANTASMA」がリリースされた年である。
それから、フー・ファイターズのアルバムは1枚も買っていなかったと思う。たまにシングル曲が欲しくてiTunesストアで買った記憶があるが、いまやその曲名すら思い出せない。
だから、私がフー・ファイターズに対して抱いている先入観というのも、かなりいい加減なものであることは間違いない。
しかし、今回、「コンクリート・アンド・ゴールド」を最初から聴いてみて、さすがにこれだけの長きにわたって人気を保っているだけあって、ラウドなロックでありながらも、このポップさはやはりすごいな、などと思っていた。
そんな感じでアルバムは最後までいくのかと思いきや、途中からやや大人っぽくて繊細な感じというか、まるでビートルズのような曲調になった。メロディーがものすごく良いし、アレンジも凝っている。トータルして、とても聴きごたえのあるアルバムになっている。
デイヴ・グロールは数年前に脚を骨折し、その後もツアーは実行したのだが、完治していなかったこともあり、ある一定の期間、バンド活動を休止しようとしていたようだ。そのようなブランクの影響もあり、このアルバムの制作には当初、苦しんだようである。結果的に、デイヴ・グロールはこのアルバムのプロデューサーに、グレッグ・カースティンを起用することにした。メンバーになっている音楽ユニット、ザ・バード・アンド・ビーの作品に感銘を受けたからだという。デイヴ・グロールとグレッグ・カースティンとは、同じ1969年生れである。
グレッグ・カースティンはまた、アデル、シーア、ビヨンセといったポップ畑のプロデューサーとしても実績を積んでいた。フー・ファイターズのようなハードロックに影響を受けたタイプのバンドのプロデュースをするのははじめてだったようだ。また、フー・ファイターズにとっても、ポップス界で実績のあるプロデューサーを起用することは新しい試みであり、このような背景がアルバムにより自由な感覚をもたらしているように思える。
少し前に同じくアメリカのロックバンドであるクイーン・オブ・ザ・ストーン・エイジが、最新アルバム「ヴィレインズ」においてヒットメーカーのマーク・ロンソンをプロデューサーに起用したこともあった。
「コンクリート・アンド・ゴールド」にはまた、意外なゲストも参加していた。デイヴ・グロールがニルヴァーナのドラマーとしてグランジ・ブームを巻き起こしていた1992年、「エンド・オブ・ザ・ロード」で全米13週連続1位の大ヒットを記録したR&Bグループ、ボーイズ・Ⅱ・メン、そのメンバーであったショーン・ストックマンである。
他にはジャスティン・ティンバーレイクやスムーズジャズのデイヴ・コーズ、ザ・キルズのジャスティン・モシャートなどが参加している。
また、このアルバムの後半にはビートルズからの影響を強く感じさせるところがあるが、そのうちの1曲「サンデー・レイン」においては、なんとポール・マッカートニーがドラムを叩いているようである。
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