(ヤマハYAS-62「YAS」はYamaha Alt Saxの略の模様 テナーサックスは「YTS」だから間違いないだろう なおサックスをこの向きに置くのはNG)
どうやら音が出るようなので、アルトサックスを買うことに決めた。
いろんな意見を総合すると、数万円で買える中国製やメルカリの中古品なんかはリスクが高いらしい。まして「ご自由にどうぞ」は論外である(汗)。
無料レッスンを受けた古野先生のお勧めはヤマハYAS-62、またはヤナギサワAW-01だが、値段を見てオッたまげた。YAS-62はなんと35万円もするではないか。
(こわくて直視できない 吉祥寺島村楽器にて)
私がこの10年で買ったもので一番高いものはクルマを除くと2022年夏に購入した中古のゴルフクラブセットで全部で15万円くらい。
次に高いものはノースフェイスの防寒コートとホームカラオケ用ニンテンドースイッチの4万いくら、あとはせいぜい1万円程度のチマチマしたものばかりだから、35万円というのは想像を絶する高さである。
(30万円位でビビっているようでは大物にはなれません 新大久保山野楽器にて)
廉価版サックスでお勧めなのが同じくヤマハのYAS-280というヤツでこちらは15万円ほど。
それでも高いがサックスをやる以上この出費はミニマムということらしい。
さあどうするか。これからお世話になる三浦先生に相談した。
「280で問題ないですが、音が軽いので何年かすると飽きるかもしれません」
「先生、サックスをやれるのもせいぜいこの先10年ですから、飽きる前に死んじゃうと思うんです」
「・・・(確かに歳が歳だからなあ)」
「ちなみに先生はどんなの使ってるんですか」
先生が使っていらっしゃるアルトサックスはヤナギサワのナンとかいうビンテージモデルで、なんと1950年代に製造されたものだという(先生はテナーサックスが専門でアルトは趣味に近いらしい)。
きちんと手入れをして、愛情を注いで大切に扱えばこの子たちは70年経っても立派に使えます、とのこと。
う~む。
偶々家にやってきた次男に、
「オレが死んだら形見のサックスを使う気ある?」と質したが答はNO。
ならばと長男に聞いたところ、やってもよさそうな雰囲気だった。私はちっとも知らなかったが、長男は中学時代にサックスをやっていたという。
203×年の春
プププ、ププ~プププ~
I'm in a NewYork state of mind~
山梨県内の寂れた墓地にサックスの音色が響き渡った。喪章を巻いてアルトサックスを吹いているのは故人の息子だろうか。
207×年の秋
プププ、ププ~プププ~
何十年かぶりに再び墓地にむせび泣くようなサックスの音色が流れた。
「なんて曲」
「Newyork state of mind。ビリージョエルって人」
「ステキなメロディ。ずいぶん年代モノのサックスね」
「オヤジの形見だけど、40年前にじいさんからもらった形見らしいんだ」
「私たちの子供にもサックスやらさないとね」
いい話じゃないの。
孫やその子供たちが吹くのはやっぱり少々高いサックスじゃなきゃ。
そんなわけで三浦先生の案内で新大久保へ。
目指すは山野楽器「ウィンドクルー」。何故ここ?というと先生のレッスン拠点のひとつがここ新大久保だから。もうひとつここには「山野楽器リペアセンター」があって、これから先メンテナンスの時には新大久保に足を運ぶことになるので万事都合がいいらしい。
(楽器店は山手線沿いの路地を入った果物屋の上)
(リペアセンターは楽器店向かいアジアンマーケットの上らしい)
先生からの事前の連絡で防音室には4台のアルトサックスが待ち構えていた。
(手前からYAS-380、YAS-480、YAS-62、ヤナギサワAW-01 横に寝かせる時はこの向き(=ボタンが見えにくい方を上にする)にしないと繊細な箇所が傷みやすいという)
「これを高い順に並べるとどうなりますか」
「ふふふ。奥から高い順に並べてます」と店員さん。
ぱっと見ヤナギサワはちょっと赤味がさしていて妙に艶めかしいのでパス。
残りの3台をまずは三浦先生に吹いていただいた。
上手い(当たり前だ)。
上手いが私には楽器の違いが殆ど理解できなかった。
先生に促されて3台を吹き比べてみたが、やはり目クソ鼻クソである(クソはオマエの方だろ~、とサックスの声)。
先生によるとこの中では62がよい音を出している由。個体としてもいい出来とのことなので62に決めた。
ゆるふわ66歳にしてアルトサックスのオーナーとなった瞬間である。
リペアセンターで微調整を終えた愛機を三浦先生が再びテストしてくださった。
プーパ、プーパ、プーパパッパッパッパ~
Oh pretty baby, don't bring me down I pray・・・
流れてきたのは将来の目標曲として先生に伝えた「君の瞳に恋してる can't take my eyes off you」だった。
(さすがプロ 思わず聞きほれた)
この曲がリバイバルヒットしたのは1982年のこと。おそらく先生が生まれる前のことだから、私のためにわざわざ覚えてくれたのだろう。
ああ、ありがたや、わが師の恩。
次のレッスンが待っている先生とはここでお別れしてリード(別名ソフトクリームの木匙)だの、サックスをぶら下げるストラップ(付属のヤツはショボすぎるらしい)、管の中をシャカシャカ掃除する越中ふんどしのような布だのを買って店を出た。
蛇足ながら日本で唯一のふんどし専門店が東上野にある。
これでカッコだけは立派なサックスプレーヤーの誕生だ。
レッスンはいよいよ週明けから始まる。