(穴子とキュウリの酢の物 高田馬場「和」)
会社時代の部下にして、現在同社の役員におわしますAさんと久しぶりに飲みに行った。
場所は高田馬場の割烹「和(かず)」。いつもの店があいにく臨時休業なので初見の店である。
元部下とはいえ今や飛ぶ鳥落とす勢いのAさんをお待たせするわけにはいかない。
約束の時間の10分ほど前に店に入ると、我々の席のすぐ横の席で私よりちょっと上くらいの高齢者8人組が大騒ぎをしていた。場所柄どうやら早稲田大学OBの集まりらしい。
「席をあっち側に代えましょうか」
マネージャ氏はすぐに席を集団から遠い場所に用意してくれた。
こういう人は信用できる。
「おすすめはなんかありますか」
「ふふふ。ブリのカマがいいですよ。あと一つだけ残ってます」
とりあえずそれを注文し、生ビールをもらったところでAさんがやってきた。
Aさんと飲むのは1年半ぶりだろうか。
あの人はどうしてる、最近目ぼしいヤツで死んだのいないの、お父上は元気でやってるの、先日「PCがウィルス汚染した」という詐欺にひっかかって5万円請求されたところを2万円に負けさせた、と自慢してましたから一応元気です、などと根ほり葉ほり。
敵(じゃないか)は私のブログを見てくれているそうで、こっちの近況を話す必要がないのはありがたい。
(マネージャ氏おすすめのお造り 椿の葉がやけに目立つ)
そうこうするうちに8人組の席が水を打ったように静まりかえった。
久しぶりに会った興奮(よお元気か!久しぶり!)
→思い出話(あのとき高田馬場駅前でオシッコしただろ、違うあれは○○だ)
→近況報告(ガンになった、孫が結婚した)
そんな一連のやりとりが済むと、酔いもあって急激に疲れてしまうらしい。
(ブリカマ 写真ではよく分からないがデカい)
その頃こっちは佳境を迎えていた。
「ここだけの話なんですが」
「・・・(ガンか、糖尿病か、それとも老いらくの恋か)」
「ゴルフを始めました」
「おお!」
(こうやってほぐしてみると大きさがよく分かる(そうでもないか))
聞けば何を血迷ったのか、昨年一念発起して始めたのだという。あまりに下手クソで恥ずかしいので社内では内緒にしているらしい。
「ゆるふわさんのように100が切れたらうれしいんですが」
「フフフ。まあ努力だよ、努力(←上から目線)」
「取引先からもらったんですが、私が使うのはもったいないので差し上げます」
と、渡してくれたのはニューボール。
(CATVインターネット関連のキャラクターらしいが詳細不明)
ああ、ありがたや、先輩思いの後輩(でしかもエラくなったヤツ)。
私よりおよそ一回り年下の彼がリタイヤするのは8年ほど先だろう。その時生きていれば私は75歳、後期高齢者の仲間入りだ。
なんとかゴルフを続けていられるだけの健康と体力を維持して、いつか丘の公園清里ゴルフコースに連れて行ってあげよう、いや下手クソなんだから清里アーリーバードゴルフコースで十分か。夜は「コジシタ八ヶ岳」か、いつもの「心粋」で済ませちゃおうか。
そんな楽しい未来を想像しながら店を出た。