五月雨上がりのひと滴 ゴムのかっぱに沁みとおる
どうせオイラは~ 南麓やもめ~
東京に戻る日の前日、囲碁トモのAさんのお宅に伺った。
「一人なんでしょ、ウチで晩ごはん食べてきなさいよ」
奥様が優しい言葉をかけてくださったが今日はそうもいかない事情がある。
ひとつはそらを長いことひとりぼっちにはできないこと、いろいろな食い残しが家にあること、大相撲夏場所中であること(よそのお宅で会話もせず相撲に集中する、というのは度胸がいることだ)、そしてもうひとつは酒が飲めないこと。
私の晩メシは酒+ツマミなので、酒がないとなんだかデパ地下であれこれ試食しまくっているかのような妙な食事になってしまう。
対局を終えて辞去しようとすると、
「これ持って帰って」と奥様が紙箱を渡してくれた。
(川崎大師参道の老舗米菓店「堂本」の化粧箱)
ゆるふわの翁家に帰りて玉手箱を開けたるところあな不思議、モクモクと煙の湧き立ちて瞬く間に高齢者になりつることこそあはれなれ(ウソこけもうなってただろ、の桟敷席からの声)。
そんな浦島太郎のようなことが起きようはずもなく、中から出てきたのは「おつまみセット」であった。
(野菜天ぷら(サツマイモ、ナス、しいたけ、ブロッコリー等)、山菜おひたし、糠漬け、鮭焼き)
ああ、ありがたや。
ちゃんとしたものに詰めると器を洗って返すのが面倒だし、ひまわり市場の握り寿司のプラ容器ではなんだか殺風景、そんなことまで気を遣って「堂本」の化粧箱に詰めてくださったのであろう。実際歌舞伎座の幕の内弁当のような、ちょっと華やかな感じがさらに食欲をそそる。
にわかに豊かになった最後のぼっちメシ。
詰め合わせの脇を固めるのは茶色くなったもやしとウィンナの炒め、オクラの茹でたもの(簡単なのでしょっちゅう食った)、定番豚ナスそうめん(つゆはGW後半にこさえた第2クールのもの)、賞味期限切れ納豆、そしてセブンイレブンの「銀だらの西京焼き」である。
(200いくらとお手頃な値段 賞味期限がとても短いのは旨さを保つためだろう)
セブンイレブンの総菜はとても充実している。魚も銀だらのほか、鮭、サバ(煮たの、焼いたの)、ホッケ、さわらと揃っているが、なんといっても「銀だら西京焼き」がダントツに旨い。
今回のやもめ暮らし最大の収穫はこの銀だらに出会ったこと。東京でもこいつをツマミにしちゃうことにした。
およそ三週間にわたった八ヶ岳南麓やもめ暮らしもかくしてフィナーレを迎えたのであった。