第4Q散りゆく「華」
「行こうぜ雷太、みんな!」雷太と肩を組む寛太。
雷太に本当は軽いハズの寛太の体重がずっしりとかかる。
「雷太、ワリィ…」耳元で囁く寛太に「何が?」気付かないフリをする雷太。
「ありがとう…」消えそうな声で言う寛太。
「バッカヤロウ、お前らしくもねぇ。」
「そうだよな…ヨシッ行くぞ、みんな!」
一方黒雲ベンチ
「犬丸代われ」Tシャツを脱ぎ始める崋蛇登。
「えっ?」
『予選なんかでねぇって、ほかの先輩達なんて試合にも来てないし、崋蛇登先輩が出るなんてどうしたんだ?』
194センチの崋蛇登が入ることによって更に大きくなる黒雲。
だがそれだけではない。
彼が入った瞬間不吉な予感、イヤ、恐怖にも似た感覚が鷹崎メンバーを襲う。
コートに立った崋蛇登は体育館全体さえ沈黙させる。
更にボール運びを始めた崋蛇登に沈黙していた体育館がざわめく。
「あの身長でポイントガードかよ」
「デカすぎだろ」
驚く観衆をよそ目にあることを思い出した鷹崎メンバーは期待に満ちた表情だ。
「きた、寛太先輩得意の長身ガードだ」「もらいっ!」
寛太は中学生の時にアメリカNo.1と言われ、将来NBA1巡目指名間違い無しという194のポイントガードと対戦する機会があった。
結果は…
寛太が圧倒的なクイックネスで相手を翻弄するというものだった。
もちろん相手のポストアップ、パワープレイには苦戦したが…
にも関わらず、
寛太は18点13アシスト6スティール1ターンオーバー、
相手は21得点6アシスト2スティール3ターンオーバー。
平均40点とる相手を押さえ、自らも大活躍。
これには相手監督も「カンタはアール(ボイキンス)にD(ディフェンス)を加えたプレイをする」と唸った。
これは鷹崎のメンバーみんなが知っていることだ。
明らかに寛太に分があると思われるマッチアップに沸き立つ応援席。
しかし、コート上のメンバーは違った。
崋蛇登に対する不思議な感覚が大きくなる。
コート上のメンバーは一瞬足が動かないことに気付いた。
崋蛇登の一つ一つのドリブルが増長させていく感覚、それは…
本当の「恐怖」
『寛太、そいつヤベェよ…』
コート上のメンバーの「恐怖」が伝染したのか、それとも同じものを感じたのか、体育館は徐々に静まり返る……
インターバル(3)
『ガシャッ』
「ど、どうしたんだ寛太?」
返事をしない寛太。
「うっ…」
「か、寛太?」
「疲れた~ほとんど練習出来てないからな」
悔しそうに言う寛太。
「なんだよ、ビックリさせんなよ」
ホッと安心するメンバーの中に一人険しい顔をする雷太。
『バカヤロウ、お前がケガなんかで休むハズねぇだろ…』
大親友の雷太は寛太がケガをした後も代わらずに練習し続けていたことを知っていた。
しかし、雷太はどうすればよいというのか。
今寛太が抜ければ…
続き
『バシャッ』
ミラクルプレイにまた体育館が揺れる。
「スゲェ、スゴ過ぎる!」
「千賀先輩!」
「…」
なぜか無視して起き上がる寛太。
「?」「どしたんだろ?」
「あいつ…」
崋蛇登がはっきりと怒りを浮かべて寛太を見つめる。
『ゴン、スパッ』
フリースローを決めると、第3Qは終了した。
安堵の表情でベンチに帰る鷹崎。
「さっきのプレイは最高だな」雷太が肩を組む。
「…あ、あぁ」
「どうしたんだよ、寛太。もたれんなよ。」雷太は自分に寄り掛かる寛太の弱々しさに一抹の不安を覚える。
「ワリィ、ベンチまで」
雷太がベンチまで連れて行き、
「サンキュ…」
手を離した瞬間。
『ガシャン!』