リリィのシネマBOOK

リリィのシネマBOOK

ぐうたら主婦リリィが、気ままに綴る、映画レビュー
劇場観賞は月平均5・6本、洋画贔屓かな

Amebaでブログを始めよう!

劇場鑑賞しました
 
おとなのけんか
 
 

 
 
 
 
 
制作国 フランス/ドイツ/ポーランド (2011年)
 
原題 CARNAGE
 
脚本 ヤスミナ・レザ
 
監督 ロマン・ポランスキー
 
キャスト
ジョディ・フォスター (ペネロペ・ロングストリート)
ケイト・ウィンスレット (ナンシー・カウアン)
クリストフ・ヴァルツ (アラン・カウアン)
ジョン・C・ライリー (マイケル・ロングストリート)
 
 
 
 
 
解説
「戦場のピアニスト」「ゴーストライター」の巨匠ロマン・ポランスキー監督が、ヤスミナ・レザの大ヒット舞台劇を、4人のオスカー受賞&ノミネート俳優の豪華共演(ジョディ・フォスター、ケイト・ウィンスレット、クリストフ・ヴァルツ、ジョン・C・ライリー)で映画化したコメディ・ドラマ
子ども同士の喧嘩を穏便に解決するべく親同士が和解の席を設けるが、平和的だったはずの話し合いが、いつしか本音が飛び交う混沌と狂騒の場と化していくさまを、リアルタイムの進行で、ユーモラスかつシニカルに描き出す
 
あらすじ
ニューヨーク、ブルックリン、11歳の子ども同士が喧嘩し、片方が前歯を折るケガを負う
ケガを負わせてしまった側のカウアン夫妻がロングストリート夫妻の家に謝罪に訪れ、和解の話し合いが行われる
お互いに社交的に振る舞い、話し合いは冷静かつ友好的な形で淡々と進んでいくかに思われたが、いつしか会話は激化し、本音合戦に
それぞれが抱える不満や問題をぶちまけ合い、収拾のつかない事態に陥っていく・・・
 
 
 
 
 
リリィの評価  ★★★☆☆
 
 
感想
 
最近にしては上映時間が79分と短く、あっと言う間に終わってしまった印象です
もとは舞台劇の映画化
豪華4俳優がワンシチュエーションで、マシンガントークを繰り広げます 
  
仲間外れにされたザッカリー(カウアン)は、イーサン(ロングストリート)の顔を棒で殴って歯を2本折る
子供同士の喧嘩の和解のため、ロングストリート夫妻宅に招かれたカウアン夫妻
最初は双方とも穏便に済ませようと、お互い言葉や態度に腹が煮えるのを必死に隠しています
しかし、ついに理性がぶち切れると、いつしかまったく論点のずれた言い争いへ
どんどんエスカレートしていき、今度は両夫婦の過激な本音が炸裂
敵味方が入れ代わり立ち代わり、いい大人が青筋立て、目の色を変え、不毛な舌戦が続く
 
登場人物は4人だけ、みんな明らかに非常識な一面を持っています
何かと社会正義を振り翳す、ペネロペ(ジョディ・フォスター)
化粧直しに余念がない、ナンシー(ケイト・ウィンスレット)
携帯を片時も手離さず、所構わず通話をはじめる、慇懃無礼なアラン(クリストフ・ヴァルツ)
ハムスターが嫌いだから捨ててきたと手柄のように言ってのける、マイケル(ジョン・C・ライリー)
体裁がはがれていく様、本性が洗いざらい露呈する様を、ブラックジョーク的な笑いで楽しみます
 
とくに見物なのは
ナンシーが○○を盛大にぶちまけた後、ペネロペが希少な美術書を汚されて憤るところ
ナンシーが○○を水に落とした後、それまで一番偉そうだったアランが「人生のすべてを失った」と項垂れるところ
ペネロペに○を放り投げられ、散らばった中身を、ナンシーが取り乱しながら拾うところ
大人が後生大事に抱えているものほど、傍から見ればくだらない虚飾だと、皮肉っているように感じました
 
これだけ激昂して暴力を持ち出さないのは偉いですが、できればお酒も持ち出さないで欲しかった
酔っ払ってからはくだをまいているみたい
大人げない大人たち
名優たちの演技はさすが、何の不安もなく、集中を欠くこともなかったです
 
   


にほんブログ村


DVD鑑賞しました
 
百万円と苦虫女






製作/日本(2008年)
 
監督/タナダユキ

キャスト
蒼井優・・・(佐藤鈴子)
森山未來・・・(中島亮平)
ピエール瀧・・・(藤井春夫)
笹野高史・・・(白石)
佐々木すみ子・・・(藤井絹)  他
 
 
解説
ほろ苦い青春ロードムービー
ひょんなことから各地を転々とすることになるヒロインの出会いと別れ、そして不器用な恋を丹念に映し出す
転居を繰り返しながら、少しずつ成長して行く主人公の姿に共感する
 
あらすじ
職浪人中の鈴子は、アルバイトをしながら実家で暮らしていた
彼女は仲間とルームシェアを始めるが、それが思いも寄らぬ事件に発展し、警察の世話になる
中学受験を控えた弟にも責められ家に居づらくなった彼女は家を出て、1か所で100万円貯まったら次の場所に引っ越すという根無し草のような生活を始める
 
 
 
 
 
リリィの評価 ★★★★☆
 
 
感想
 
どうせロードムービーを観るなら、見知らぬ異国の地の美を堪能できる洋画がいいなと思っていたけれど、そんな私の偏見を引っ叩くような邦画でした
背景が身近な日本の土地だからこそ、旅する主人公に共感することもあるのだと・・・
 
鈴子の踏んだり蹴ったりの刑事事件から、心を鷲掴みにされました
バイト先の先輩は、毎日顔を合わせているから何となく親しいような錯覚をしてしまうけれど、個人的な交流がろくにないまま部屋をシェアするのは無謀
更に事情をよくよく問い質してみれば、彼氏連れ・・・非常識にもほどがある
が、仕方ない、安請け合いしてしまった自分が悪いと思って受け入れるしかない
その矢先、蓋を開けてみれば奇妙な同居はとんでもないオチへ続いた・・・
 
百万円って、まあ大金には違いないけど、パッと使おうと思えば一晩で使い切ってしまえる額ですよね
でもそれだけ貯金するのに、どれほどの労力を必要とするか、少なくとも一晩で稼げる額では到底ない
百万円貯まったら家を出ていく宣言をした鈴子に、弟が尋ねる
「何で百万円なの?」
「百万あれば、とりあえずやっていけるような気がする」
で、コツコツ働いて、実行しちゃう鈴子
 
最初の行き先は、海の家
かき氷を作って、上手いと煽てられて、人から誉められたことなんかなかったから、お姉ちゃん嬉しかったよと弟宛の手紙に書く
そこでも人付き合いが苦手な彼女は、親睦を図ろうと近づいてくる男の子に見えないバリアを張っている
人と関わらないようにしたいのは、傷つくのが怖いから・・・
また目的の百万円に到達したら、はい、立つ鳥は後を濁さずでバイバイ
 
次の行き着いた先は、山の農家、住み込みで桃を捥ぐ
若い都会の女性が精を出すのに感心した村人たちが、挙って鈴子を「桃娘」に祭り上げようとする
人に深入りしてほしくないのは、自分に自信がないから、責任を持てないから・・・
今度は目的もそこそこに逃げるように、はい、さようなら
 
次に行き着いた先は、小さな町のホームセンター
同じ店の大学生のアルバイトと恋に落ちる
口を閉ざして笑っていれば上手くいくかと思っていた、でも違う、相手と向き合わなくてはいけないんだ
不器用な鈴子がいろんなことを遠ざけてきた自分の過ちに気づいたのは、皮肉にも大切な人の心を見失ってしまったせい
新たに歩き始める鈴子は、次の街こそは怖がらずに他人との関係を築こう、と弟への手紙に綴る
 
鈴子の人間不信さと臆病は、人見知りな一面を隠している私には、骨身に染みて理解できました
失敗を恐れては前に進まないけれど、傷つくのは痛くて、先にリスクを考えて尻込みすることもある
でも自ら作った他人との壁を越える一歩を踏み出す勇気を鈴子に思い出させてくれたのは、辛い現実と戦う生意気だけれど可愛い弟
小さな身体に負けん気を宿して困難に立ち向かう弟は、いつか目にした光景、意地悪な同級生に屈せず返り討ちにした姉の姿に、感銘を受けたから
「お姉ちゃんを見習う」なんてツンデレの弟に言われたら、鈴子じゃなくても愛おしさを感じてしまいます
 
姉と弟は、最大の見所でした
涙も出そうになりました
そして、鈴子と亮平の恋愛
お互いに相手と一緒に居られることを深く望んでいたのに、意思の疎通が下手な2人は方法を間違えてしまいました
優しさの擦れ違い、すごく切なかったです
ラストシーンではてっきり追いついて・・・と願ったのに
え~ん、煮え切らない
誤解したまま、誤解されたままと言うのが、妙に苦いですが、これが現実と言うものだよね
 
 


にほんブログ村


DVD鑑賞しました
 
ダウト ~あるカトリック学校で~
 
 
 
 
 
 
 
 
 
製作国/アメリカ(2008年)
 
原題/DOUBT
 
監督/ジョン・パトリック・シャンリー
 
キャスト
メリル・ストリープ (シスター・アロイシアス)
フィリップ・シーモア・ホフマン (フリン神父)
エイミー・アダムス (シスター・ジェイムズ)
ヴィオラ・デイヴィス (ミラー夫人)   他
 
 
 
解説
劇作家ジョン・パトリック・シャンリィが9.11の衝撃とその余波が大きな影となって人々の心を覆ってしまった世情を背景に書き上げ、2005年のトニー賞、ピュリッツァー賞をダブルで受賞した名作戯曲『ダウト 疑いをめぐる寓話』を、シャンリィ自らメガフォンをとり、実力派俳優陣の豪華競演で、映画化した心理ドラマ
60年代のカトリック学校を舞台に、少年に対する性的虐待の疑いを掛けられた進歩的な男性聖職者と、心証のみで彼を執拗なまでに追いつめていく厳格な女性校長の息詰まる言葉の攻防がスリリングに展開していく
 
あらすじ
前年のケネディ大統領の暗殺や公民権運動の高まりなど激動と変革の真っ只中にある1964年
ニューヨークのブロンクスにあるカトリック学校でも、厳格な校長シスター・アロイシアスに対し、進歩的で生徒の人望も篤いフリン神父はより開かれた校風にしていくべきとの持論を展開していた
そんなある日、新人教師のシスター・ジェイムズは、学校で唯一の黒人生徒ドナルドを呼び出したフリン神父の不可解な行動に不審を抱き、シスター・アロイシアスに相談する
シスター・アロイシアスは2人が“不適切な関係”にあるのではと疑い、フリン神父を厳しく問い詰める
一方シスター・ジェイムズのほうはきっぱりと否定したフリン神父の説明に納得し、反対になおも頑迷にフリン神父への疑惑を深めていくシスター・アロイシアスの態度にこそ違和感を覚え始めるが・・・
 
 
 
 
リリィの感想 ★★★☆☆
 
 
感想
 
カトリックの学校を舞台に繰り広げえられる、心理戦と舌戦
受賞こそ叶いませんでしたが、メリル・ストリープ、フィリップ・シーモア・ホフマン、エイミー・アダムス、ヴィオラ・デイヴィスの主要キャスト4人がアカデミー賞にノミネートされたことで話題になりました 
  
メリル・ストリープの演技が圧巻でした、改めて凄い女優です、その実力を遺憾なく見せつけられました
「マンマ・ミーア!」「恋するベーカリー」「ジュリー&ジュリア」の大柄で豪快、闊達な女性のイメージを念頭に置いて観ていたので、見事に裏切られましたね
本当に同一人物が扮しているんだろうかと、何度も画面に目を凝らしてしまいました
それほどシスター・アロイシアスは、いかにも神経質そうに眉を動かし、鋭い眼光に猜疑心を閃かせ、ぴんと正した背筋が堅苦しいさを物語っているかのような人物です
こけた頬、眉間や口許に刻まれた皺さえ、この熟年の女性が礼節を重んじて生きてきた歴史に変えてしまいます
 
もともと舞台劇、場面ごとに会話で進められていく演出の感じは、まさにそれです
カトリック系の学校で、周囲に馴染めず虐められる黒人の生徒ドナルドと、フリン神父の間に沸き起こった疑惑“いかがわしい関係”
証拠は一切ないが、シスター・アロイシアスは絶対的な確信を持ち、フリン神父を追い込み、問い詰める
 
フリン神父は実際に疑わしい
授業中にドナルドを個人的に呼び出したことで、純粋を地でいくようなシスター・ジェイムズでさえ、疑心を抱き、深めていってしまうほど・・・
だけどどこまでが本音で建前か、礼拝で説教するくらい弁が立つ人物だけあって、真実を煙に巻くのも達者
白か、黒か
結局はっきり明かされず、限りなく黒に近いグレーで終わる
 
しかしながら、人間の感情とは複雑なもので、シスター・アロイシアスがただ学校の格調や規律、もちろん生徒を守りたいためだけに動いていたのではないことは、一目瞭然です
最初から彼女は、由緒ある学校の古い風を一新する改革的なフリン神父を快くは思っていなかった
浮かび上がった疑惑は、シスター・アロイシアスとって、フリン神父を排斥する格好の材料であったからこそ、執拗に追及したのかもしれない
彼女自身も、そんな心の奥深くに罪悪を感じているからこそ、最後のシスター・ジェイムズへ懺悔の告解を吐いたのかもしれません
 
 
 


にほんブログ村


劇場鑑賞しました
 
ツリー・オブ・ライフ
 

 
 
 
制作国/アメリカ(2011年)
 
原題/THE TREE OF LIFE
 
監督/テレンス・マリック
 
キャスト
ブラッド・ピット (オブライエン)
ショーン・ペン (ジャック)
ジェシカ・チャステイン (オブライエン夫人)
フィオナ・ショウ (祖母)
ハンター・マクラケン (若きジャック(長男))
ララミー・エップラー (R.L.(次男))
タイ・シェリダン (スティーヴ(三男))
解説

「天国の日々」「ニュー・ワールド」の名匠テレンス・マリック監督が、1950年代のアメリカに暮らすある家族の物語を、圧倒的なヴィジュアルと共に、壮大かつ根源的な視点から描き出すヒューマン・ドラマ
主演は「イングロリアス・バスターズ」のブラッド・ピット、共演に「ミルク」のショーン・ペンとハリウッド期待の実力派ジェシカ・チャステイン
2011年のカンヌ国際映画祭でみごとパルム・ドールに輝いた
  
あらすじ

成功した実業家ジャック・オブライエンは人生の岐路に立ち、自らの少年時代に思いをはせる――
1950年代半ばのテキサスの小さな町に暮らすオブライエン一家
厳格な父は、成功のためには力が必要だと、長男のジャックをはじめ3人の子どもたちに理不尽なまでに厳しい態度で接してしまう
一方、全てを運命として受け入れる母親は、子どもたちを優しい愛で包み込む
そんな両親の狭間で葛藤を抱えながらも、2人の弟との楽しい時を過ごすジャックだったが・・・
 
 
 
 
 
リリィの評価 ★★★☆☆
 
 
感想
 
カンヌ映画際でパルム・ドール賞に輝いた前評判か、ブラッド・ピットとショーン・ペンの豪華共演か
シアター内は8割の盛況を呈し
正直この手の映画は普段足を運ばないと思しき、年配のご夫婦や若いカップルも目立ちました
案の定、途中退場者も数組・・・エンドロール終了まで席に腰をついていたのは2割いたかどうか
間違いなく万人受けはしなそうです
  
とにもかくにも感性が物を言う映画です、10人が見れば10人とも感想がまるで違う
明確な回答などなく、観客に不親切な演出と構成です
例えば、溶岩の煮え滾る映像に何を想像するか
地球の創世を見い出す人もいれば、ゆっくり動いていく悠久の流れを感じる人もいるかもしれない
例えば、青い海に息づく生物に何を想像するか
生命の尊さを見い出しても、神秘的な美しさを感じても、視界から心に届くものは千差万別です
 
まさに想像は自由
だから、厳格な父親の教育の下、慈悲深い母親の下
家庭環境の影響を受けて成長していく、息子の心も観客の解釈にほとんど委ねられています
夫婦喧嘩を遠くから息を潜めて覗く、子供の鬱屈とした表情、翳っていく背景
しょせん深層心理とは、他人には不可解なもの
魂の悲鳴も浄化も、自分だけの空間に広がって消えていく、音楽や自然や光や影と言った五感を通じたすべてであって、そのどれでもないのかも知れません
抽象的で、哲学的で、芸術的な映画です
  
決して嫌いじゃないです
人間としてごく有り触れた愚かさを持つ両親と、感受性の強い時期に長男の目に映った世界の明暗、物事の対比
淡々と描かれていく家族の関係とドラマ
壮大な地球の活動とは打って変わって、ちっぽけだけど日々様々な物事に直面して生きる人間の人生
そして鮮烈な映像の数々には魅入ってしまいますし、鳴り響くクラッシック音楽にも酔いました
ただリリィ個人としては、シンクロできませんでした
 
 
 


にほんブログ村


劇場観賞しました
 
悲しみのミルク
 
 

 
 

 
 
 
 
 
制作国/ペルー(2008年)
 
原題/LA TETA ASUSTADA
 
監督・脚本/クラウディア・リョサ
 
キャスト
マガリ・ソリエル (ファウスタ)
スシ・サンチェス (アイダ)
エフライン・ソリス (ノエ)    他
 
 
 
 
 
 
 
 解説
母親の苦悩が母乳を通して子どもに伝染する「恐乳病」という南米ペルーの言い伝えを基に、残酷ながらも感動的なストーリーを紡ぐ寓意(ぐうい)劇
第59回ベルリン国際映画祭金熊賞、第82回アカデミー賞外国語映画賞ノミネートなど、国際的に高い評価を受けた
恐乳病におびえるヒロインの姿や行動から、ペルーの激動の歴史が見えてくる
 
あらすじ
ペルーの貧しい村、死を目前にした一人の老女が歌っていた
それはテロの時代に彼女が味わった壮絶な恐怖と苦しみの記憶
やがて老女は息を引き取り、娘のファウスタが一人残された
母親の苦しみを母乳から受け継いだと信じるファウスタは、成長した今も恐怖のために一人で出歩くこともままならない
しかし母を故郷の村に埋葬したいと願う彼女は、その費用を稼ぐため、街の裕福な女性ピアニストの屋敷でメイドの仕事を始める
恐怖心を紛らわせるため即興の歌を口ずさむファウスタは、その歌に興味を持ったピアニストの提案で、一曲歌うごとに真珠一粒と交換するという約束を交わすが・・・

 
 
 
 
リリィの評価 ★★★★☆
 
 
感想
 
 
第59回ベルリン国際映画祭、金熊賞に輝いたらしい本作は、ペルーが舞台です 
テロ時代、武器を持たない女は暴行されました
死の影がちらつく老婆は、甲高い声で、自らの悲惨な体験を歌にして聞かせます
その苦しみを母乳から受け継いだと、古い言い伝えを信じて育った娘は、心に深い傷を負っています
そして、娘ファウスタが悲しみもがきながら、女を虐げる男へ憎悪を抱いたまま死んでいった母親の呪縛から、ゆっくりゆっくり解放されるまでを描いていく物語です
 
同じ女性として、ファウスタを自分の殻に閉じ込める恐怖や不信は理解に難しくないです
暗い夜道をひとりで歩いていて、身の危険が一瞬脳裏をよぎらないことはないし、もし被害に遭ったらと想像するだにおぞましい
そう言う意味では、ファウスタの嘆きは我がことのように、痛いほど胸を打ちました
だけど決定的に違うのは、彼女を取り巻く環境が比べようもないくらい貧困に窮していて、もっとずっと治安が悪く、それこそ警戒しないと暮らせないと言うこと
身を守るため、自身の体に強いる無理
たびたびハサミを持ち出して処理するファウスタが、ただただ不憫で辛いです
 
スクリーンが映し出す景色は、積み木のような人家が建て並ぶだけの一面の砂漠
唯一逞しいのは、貧しくても日々を楽しく生きていこうとする人たちの活気
性を拒むファウスタと対照的に登場する、幸せいっぱいに結婚式に臨む何組かのカップル
母親を埋葬するお金さえ満足に用意できない逼迫した生活の中
ファウスが耐え切れない現実を紛らわそうと口ずさむ歌は、哀愁を漂わせ、どこまでも澄んで美しい
 
床に散らばった真珠の首飾りを一粒一粒拾い集めるように、内側で眠らせていた感情をひとつずつ揺り起こしていくファウスタの一挙一動を、観客は固唾を呑んで見詰めている
やがて曇った空に一筋の光が差し込むように、最後には希望が示されるので、重たい空気にも清々しい余韻を残してくれます
 
  


にほんブログ村