悲しみのミルク | リリィのシネマBOOK

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ぐうたら主婦リリィが、気ままに綴る、映画レビュー
劇場観賞は月平均5・6本、洋画贔屓かな


劇場観賞しました
 
悲しみのミルク
 
 

 
 

 
 
 
 
 
制作国/ペルー(2008年)
 
原題/LA TETA ASUSTADA
 
監督・脚本/クラウディア・リョサ
 
キャスト
マガリ・ソリエル (ファウスタ)
スシ・サンチェス (アイダ)
エフライン・ソリス (ノエ)    他
 
 
 
 
 
 
 
 解説
母親の苦悩が母乳を通して子どもに伝染する「恐乳病」という南米ペルーの言い伝えを基に、残酷ながらも感動的なストーリーを紡ぐ寓意(ぐうい)劇
第59回ベルリン国際映画祭金熊賞、第82回アカデミー賞外国語映画賞ノミネートなど、国際的に高い評価を受けた
恐乳病におびえるヒロインの姿や行動から、ペルーの激動の歴史が見えてくる
 
あらすじ
ペルーの貧しい村、死を目前にした一人の老女が歌っていた
それはテロの時代に彼女が味わった壮絶な恐怖と苦しみの記憶
やがて老女は息を引き取り、娘のファウスタが一人残された
母親の苦しみを母乳から受け継いだと信じるファウスタは、成長した今も恐怖のために一人で出歩くこともままならない
しかし母を故郷の村に埋葬したいと願う彼女は、その費用を稼ぐため、街の裕福な女性ピアニストの屋敷でメイドの仕事を始める
恐怖心を紛らわせるため即興の歌を口ずさむファウスタは、その歌に興味を持ったピアニストの提案で、一曲歌うごとに真珠一粒と交換するという約束を交わすが・・・

 
 
 
 
リリィの評価 ★★★★☆
 
 
感想
 
 
第59回ベルリン国際映画祭、金熊賞に輝いたらしい本作は、ペルーが舞台です 
テロ時代、武器を持たない女は暴行されました
死の影がちらつく老婆は、甲高い声で、自らの悲惨な体験を歌にして聞かせます
その苦しみを母乳から受け継いだと、古い言い伝えを信じて育った娘は、心に深い傷を負っています
そして、娘ファウスタが悲しみもがきながら、女を虐げる男へ憎悪を抱いたまま死んでいった母親の呪縛から、ゆっくりゆっくり解放されるまでを描いていく物語です
 
同じ女性として、ファウスタを自分の殻に閉じ込める恐怖や不信は理解に難しくないです
暗い夜道をひとりで歩いていて、身の危険が一瞬脳裏をよぎらないことはないし、もし被害に遭ったらと想像するだにおぞましい
そう言う意味では、ファウスタの嘆きは我がことのように、痛いほど胸を打ちました
だけど決定的に違うのは、彼女を取り巻く環境が比べようもないくらい貧困に窮していて、もっとずっと治安が悪く、それこそ警戒しないと暮らせないと言うこと
身を守るため、自身の体に強いる無理
たびたびハサミを持ち出して処理するファウスタが、ただただ不憫で辛いです
 
スクリーンが映し出す景色は、積み木のような人家が建て並ぶだけの一面の砂漠
唯一逞しいのは、貧しくても日々を楽しく生きていこうとする人たちの活気
性を拒むファウスタと対照的に登場する、幸せいっぱいに結婚式に臨む何組かのカップル
母親を埋葬するお金さえ満足に用意できない逼迫した生活の中
ファウスが耐え切れない現実を紛らわそうと口ずさむ歌は、哀愁を漂わせ、どこまでも澄んで美しい
 
床に散らばった真珠の首飾りを一粒一粒拾い集めるように、内側で眠らせていた感情をひとつずつ揺り起こしていくファウスタの一挙一動を、観客は固唾を呑んで見詰めている
やがて曇った空に一筋の光が差し込むように、最後には希望が示されるので、重たい空気にも清々しい余韻を残してくれます
 
  


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