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リリィのシネマBOOK

ぐうたら主婦リリィが、気ままに綴る、映画レビュー
劇場観賞は月平均5・6本、洋画贔屓かな


劇場鑑賞してきました
 
エリックを探して
 
 
 
 


 
 
 
製作国/イギリス・フランス・イタリア・ベルギー・スペイン(2009年)
 
原題/Looking for Eric
 
監督/ケン・ローチ
 
キャスト
スティーヴ・エヴェッツ (エリック・ビショップ)
エリック・カントナ (エリック・カントナ)
ステファニー・ビショップ (リリー)
ジェラルド・カーンズ (ライアン)
ジョン・ヘンショウ (ミートボール)  他
 
 


 
 解説

大のサッカー好きという社会派の名匠ケン・ローチ監督が、かつて名門マンチェスター・ユナイテッドでエースとして君臨した元フランス代表のスーパースター、エリック・カントナとの異色のコラボで贈る、心温まる人生一発逆転コメディ
なにもかも上手くいかず、どん底で苦しむ中年男が、突然現われた憧れのヒーロー、カントナのアドバイスに勇気を得て難局を乗り越えていく姿を仲間たちとの熱い絆を軸に描く
 
 
 あらすじ

マンチェスターの郵便配達員エリック・ビショップは、しょぼくれた中年オヤジ
2度の結婚に失敗した彼は、7年前に出て行った2度目の妻の連れ子2人を一人で育ててきた
しかし、その2人の息子はいまやすっかり問題児
おまけに、未だに心から愛しているものの、今さら合わせる顔がないと感じていた最初の妻リリーと再会しなければならなくなり、気持ちが沈んでいた
そんな彼の心のアイドルは、地元マンチェスターの英雄、エリック・カントナ
今日も自室に貼った彼のポスターに向かって愚痴をこぼすエリックだったが、なんと突如どこからともなくカントナ本人が現われた
そして含蓄ある格言で彼を励まし始めるのだったが・・・
 

 
 
 
リリィの評価 ★★★★★
 
 
感想
 
負け犬人生を悔やんでいる冴えない中年男性が、自己啓発本を友人と試してから、一大奮起
失っていた家族の信頼を取り戻していく、涙あり笑いありの感動作!
 
結婚生活も破綻して、妻には見放され、一緒に暮らしている息子たちは父親として敬ってくれない
何となく郵便配達員の勤務をこなし、日々が過ぎていく
あのときああしていれば、こうしていなければ・・・後悔や不満ばかりが募っていくけれど、長年くすぶっているだけ
覇気がない、そんな痩せた中年男性エリックだけど、擦れ違って別れた1度目の妻をいまだ愛しているし、2度目の妻の連れ子である兄弟を実の息子に等しく将来を心配しています
優しいのに、意気地がなく、いつも逃げ腰だった“つけ”で、誰にも期待されない存在
よくいる世渡り下手な不器用な人物ですが、特筆すべきはエリックには素晴らしい仲間がいること
  
自己啓発本に習って、憧れの英雄カントナ(元サッカー選手)が、常に傍らで自分を見ていると想像し
自分を変えることによって、情けない現状を打破しようと奮闘するエリックは、面白おかしく描かれているのに、どこかカッコいいです
何事も向かい合わないことには、愛する女性はおろか、息子たちとも、関係を修復できるはずがない
エリックがそれまでうやむやにしてきたことに、真正面から挑んでいく姿には、遠慮なく笑った後に、胸がほっこり温かくなること必至です
そして、困った時には団結し、力を貸してくれる仲間
強固な友情に恵まれているエリックは、実はとっても羨ましい 
 
家族や友人の大切さ、前向きに生きていく姿勢の意義、人生いくつになっても心がけ次第で正せる
最高に楽しい映画ですが、いいメッセージもたくさん詰まっていて、大好きです!
 
 


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劇場鑑賞しました
 
マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙
 
 

 
 
 
 
制作国 イギリス (2011年)
 
原題 THE IRON LADY
 
監督 フィリダ・ロイド
 
キャスト
メリル・ストリープ (マーガレット・サッチャー)
ジム・ブロードベント (デニス・サッチャー)
オリヴィア・コールマン (キャロル・サッチャー)
ロジャー・アラム (ゴードン・リース)
スーザン・ブラウン (ジューン)
ニック・ダニング (ジム・プライアー)
ニコラス・ファレル (エアリー・ニーブ)
イアン・グレン (アルフレッド・ロバーツ)
リチャード・E・グラント (マイケル・ヘーゼルタイン)
アンソニー・ヘッド (ジェフリー・ハウ)
ハリー・ロイド (若き日のデニス)
アレクサンドラ・ローチ (若き日のマーガレット)
 
 
 
 
 
 
解説
主演のメリル・ストリープがみごとアカデミー主演女優賞を獲得した伝記ドラマ
男勝りの決断力とリーダーシップで“鉄の女”の異名をとった英国初の女性首相マーガレット・サッチャーの人生と知られざる素顔を家族との関わりを軸に描き出していく
 
 
あらすじ
孤独な晩年を送る86歳のマーガレット・サッチャー、すでに他界した夫デニスの幻想を相手にしてしまうこともしばしば
そんな彼女は、ふと自らの人生を振り返る
市長も務めた父の影響で政治家を志すようになったマーガレットは、やがて下院議員選挙に立候補するがあえなく落選、失意の彼女を実業家のデニス・サッチャーが優しく励まし2人は結婚、子どもにも恵まれ、幸せな家庭を築くが、政治への意欲を失わないマーガレットはついに下院議員への当選を果たす
男たちが支配してきた世界に飛び込んだマーガレットは、様々な困難に強靱な意志で立ち向かい、着々と政界での地位を高めていくのだが・・・
 
 
 
 
 
リリィの評価  ★★★☆☆
 
 
感想
 
率直に言ってしまうと、サッチャーと言う女性の何に重きを置きたいのか、的がぼやけて感じる
認知症を患っている高齢のサッチャーが、自身の過去を断片的に回想していく構成だから、アプローチ的には間違っていないかも知れない
しかし女性初の首相としてイギリス政界のトップに君臨した栄光も挫折も、その裏で苦楽をともにした家族との関係も、全体的に散漫とした印象を抱いてしまいました
  
深く刻まれた皺、湾曲した背中、足を引き摺るように歩く姿は、紛れもない老婆のそれで、メリル・ストリープの熱演には、冒頭から早くも度肝を抜かれました
次いで、食卓を夫デニスと一緒に囲み、日常の延長のような世間話を交わしている
でも第3者の目には、老婆がぽつんと席についているだけ・・・
接している相手はすぐに幻であることが示されますが、マーガレットには実際存在しない夫が普通に暮らしているように見え、声が聴こえてきます
 
その夢現を行ったり来たりする認知症のサッチャーを中心に、場面転換は前途揚々と輝いていた若き頃から順に紐解いていく 
庶民生まれのマーガレットは、見下されることを黙ってよしとせず、女であることもハンデキャップにせず、信念を胸に政治家を目指し、男と対等に渡り合う
スーツを着た男性社会にたったひとりヒールを履いた女性が乗り込んでいく絵が、彼女の高揚と異質どちらも象徴しているかのようでした
 
合間に描かれる、デニスとの出会い、プロポーズ、双子の出産
しかし同一人物の若き頃を演じたアレクサンドラ・ローチからメリル・ストリープに移る歳月がそっくり白紙のまま
ついぞ母としてのサッチャーが具体的に語られた感は薄く、妻としても描写不足は否めないです
「ママいかないで」とすがってくる子供たちを突き放して車を走らせる、公務を優先にするエピソードが唯一強調されていましたが、それに対しての葛藤はこちらが想像するしかなく、老いた現在のサッチャーが実子とどのような仲を築いているのか伝わってきません
ですが、すでに他界した夫へ「デニスあなたは幸せだった?」と、問いかける深刻な表情
「きみはひとりでも生きていけるよ、今までもずっとそうだったように」と、夫の幻影が去っていくとき残していく厳しい言葉
それらは家族を蔑ろにしてきたサッチャーの罪悪感の現われに違いないと思いました
 
首相に11年間も在位していたサッチャーの政策ですが、イギリスの近代史に詳しくないせいもあり、要点が駆け足で流れていったダイジェストみたいに感じてしまって、とくに感情移入できませんでした
個人的にはサッチャーが初の女性首相に立つため、服装から口調まで民衆に与えるイメージを改革する選挙戦略が興味深かったです
 
そして、特筆すべきはやはりアカデミー主演女優賞を戴いたメリル・ストリープの絶品の演技!
誰かが“役が憑依した”と賞賛していましたが、まさに言い得て妙
説得力に定評のあるメリル・ストリープの演技は、身震いするほど高潔です

  


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劇場鑑賞してきました
 
ダーク・シャドウ
 
 

 
 
 
 
制作国 アメリカ (2012年)
 
原題 DARK SHADOWS
 
監督 ティム・バートン
 
キャスト
ジョニー・デップ (バーナバス・コリンズ)
ミシェル・ファイファー (エリザベス・コリンズ・スタッダード)
ヘレナ・ボナム=カーター (ジュリア・ホフマン)
エヴァ・グリーン (アンジェリーク・ボーチャード)
ジャッキー・アール・ヘイリー (ウィリー・ルーミス)
ジョニー・リー・ミラー (ロジャー・コリンズ)
クロエ・グレース・モレッツ (キャロリン・スタッダード)
ベラ・ヒースコート (ビクトリア・ウィンター/ジョセッテ)
ガリー・マクグラス (デイビッド・コリンズ)
 
 
 
 
 
 
解説
数々のヒット作を送り出してきたジョニー・デップとティム・バートン監督が、8度目のタッグを組んだファンタジー
1960年代に放映されたテレビドラマを基に、魔女によってヴァンパイアにされ200年にわたり生き埋めにされていた男と、その末裔たちの姿を描く
同シリーズのファンであるジョニーが主人公バーナバス・コリンズを演じ、これまでのヴァンパイアのイメージを一新するような演技を披露
共演にはミシェル・ファイファー、クロエ・グレース・モレッツ、ヘレナ・ボナム=カーターら豪華キャストがそろう
 
あらすじ
200年前、コリンウッド荘園の領主として裕福な暮らしを謳歌していたプレイボーイの青年バーナバス・コリンズ
しかし、魔女のアンジェリークを失恋させるという大きな過ちを犯し、ヴァンパイアに変えられ、墓に生き埋めにされてしまう
そして1972年、彼は墓から解放され自由の身となるが、2世紀の間にコリンウッド荘園は見る影もなく朽ち果て、すっかり落ちぶれてしまったコリンズ家の末裔たちは、互いに後ろ暗い秘密を抱えながら細々と生きていた
そんなコリンズ家の末路を目の当たりにしたバーナバスは、愛する一族を憂い、その再興のために力を尽くそうと立ち上がるのだったが・・・
 
 
 
 
リリィの評価 ★★☆☆☆
 
 
感想
 
ティム・バートン×ジョニー・デップの鑑賞意欲をそそられるネームバリューは流石ですよね
強烈な個性のキャラクターたちが、バートン監督特有のゴシック・ホラーの世界観で、喜怒哀楽をぶつけてくるパワフルなファンタジー映画でした
基になったテレビドラマシリーズは知りませんが、監督はよほど想い入れがあるのか、70年代ミュージックとともに楽しんで制作したんだろうなと思います
豪華な役者陣も、同様に、とても楽しんで演じているのが分かります
  
オープニングのわくわくが最高潮でした
コリンズ家の栄華の夢、アンジェリークの愛憎によって、バーナバスが永い眠りに就くまで
背徳感漂うような暗い映像が、全編に渡って引き立っています
共感と言う意味において、バーナバスは初めから無自覚にもずるい男
魔女アンジェリークを弄んだものの、愛を誓って結婚の約束をするのは清純派のジョセッテ
う~ん、執念深くて情の強い女に手をつけたのが運のつき、結局自業自得じゃない?と思ってしまいますが、本人だけならともかく、直接関係ない一族まで呪われるのは、確かに悲惨・・・
 
メインストーリーは、バーナバスが200年を経て復活した、1972年コリンズ家
時代が変わった光景に反応するバーナバスは、こう言う軽妙な演技もジョニデの本領発揮
でも残念ながら、予告編で小出しにしていた以上に面白いシーンは見つからず、すでに既知感があるためか笑いも起きませんでした
登場人物は多く、長いドラマ枠なら細かい魅力も描き切れるかも知れませんが、2時間強の映画枠では個々の出番が少なく、ドタバタ劇の印象を受けました
とくに家庭教師のビクトリアは重要な鍵なのに、心情が掘り下げ不足で浅いと感じざるを得ません
前世の宿願が叶うのはロマンチックだけど、今生の人格が無視されているのが納得いかない
好調のクロエ扮するキャロリンは、常に斜に構えた態度がいかにも反抗期の少女っぽく、予測せぬ変貌があっと驚くサプライズです
デイビッド坊やはいじましく、あくが強いコリンズ家の面々唯一の癒し系
そして、影の主役とも言えるアンジェリークは、まさにエヴァ・グリーンの美貌が毒を吐いたような妖艶な魔女っぷり
実は彼女にこそ憐憫を覚えるのですが・・・
いみじくもエリザベスが口にしていた通り、「憎むのは、愛の裏返し」
激しく愛し方を間違えてしまいましたが、「誰も愛せない」って、そうじゃないよ
 
で、コリンズ家の再興は??? 
 
 


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劇場鑑賞してきました
 
 
ジェニンの心
 
 
 




 
制作国/ドイツ、イスラエル(2008年)
原題/DAS HERZ VON JENIN/THE HEART OF JENIN
 
監督/マーカス・フェッター、リオール・ゲラー
 
 
解説
 
2005年11月、パレスチナ・ヨルダン川西岸地区のジェニン難民キャンプに住む少年、アハメドがイスラエル兵に撃たれ、脳死状態に陥った
父親のイスマイルの決断のもと、アハメドの臓器は、移植が必要な6人のイスラエルの子供に提供された
1年半後、イスマイルは、息子の臓器によって命を救われた子供たちに会いにいく
メディア的 "美談" とは無縁の位置で、犠牲と平和の意味を深くとらえたドキュメンタリー
 
2010年 ドイツ映画賞最優秀ドキュメンタリー賞を受賞
 
 
 
 
リリィの評価 ★★★★☆
 
感想
 
 
ヒューマン・シネマ・フェスティバルに参加して観てきました 
 
パルスチナの難民キャンプに移り住んでいたアハメド少年が、おもちゃの銃で遊んでいるところをイスラエルの兵士が射殺、脳死に陥りました
父親イスマイルは、息子アハメドくんの臓器を移植提供する決断をしました
宗教や宗派の違いは詳しくないのですが、劇中、こう語られていました
「生きている時はすべて神のものだから提供は許されないけれど、死んでしまえば許される」
アハメドくんの臓器が、敵対するイスラエルの子供たちへ渡ることについては
「兵士を殺しても復讐にはならない、それよりも善意は衝撃を与える、(イスラエル人はパレスチナ人の)臓器を提供されるくらいなら、(病気の子供たちは)死んだほうがいいと思っているはずだ、それは自爆テロよりも価値がある、私はそう言う復讐を選ぶ」
(注意:言葉はぜんぜん正確ではないです、ニュアンスだけ受けとってください)
 
アハメドくんの臓器が6人の子供に移植する手術が施されて、1年半後
イスマイルさんは息子の臓器で生き長らえたドナーたちを尋ねます
事件の余波と結果、関係者たちのインタビューを介して事実を伝える、派手な演出は一切ないドキュメンタリー映画でした
 
ユダヤ教信者らしき父親は、娘の命を救うのがアラブ人とは知らず、差別する発言をしてしまいますが
後に、イスマイルさんを家に招き入れて「本当に感謝している」と告げます
しかし恩人に礼儀は払っても、根強い人種差別的な思想は捨てられないようでした
 
世界に必要なのは、戦争ではなく、優しさやいたわりであること
イスマイルさんの声は激昂することなく、ひたすら淡々としていましたが、子供たちを見る瞳は愛情に満ちていました
どの子供たちにも、失ったアハメドくんの影を探すかのように、じっと優しい眼差しを向けていました
一度、感極まったように口調を咎めました
「これ(ドキュメンタリー映画)を観ている人は知っているだろうか、パレスチナが真に望んでいるものを」
 
 
――平和と権利
 
すべての人がすべての命を大切な人になぞらえたら、命の重さはみんな同じだと解かるのに・・・
戦争がなくなるのは、そう難しくはないはずだ
 
 


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劇場鑑賞してきました
 
ウォー チャイルド
 
 
 
 
 

 
 
制作国/アメリカ(2008年)
 
原題/WAR CHILD
 
監督/カリム・クロボック
 
出演/エマニュエル・ジャル
 
 
公式サイト (English)
 
エマニュエル・ジャル「ウォー チャイルド」の歌 視聴 
 
 
 
解説

祖国スーダンの平和を歌う、エマニュエル・ジャル
孤児、少年兵、難民を経て、ミュージシャンとして成功する壮絶な人生は、眩いばかりの生命力と希望に満ちあふれている
祖国とアフリカの平和と希望を歌い続ける
 
彼の音楽は、映画「ブラッド・ダイアモンド」などでも採用された
 





リリィの評価 ★★★★★


感想

 
ヒューマン・シネマ・フェスティバルに参加して観てきました
 
祖国スーダンの苛酷な環境、壮絶な生い立ちが、エマニュエル・ジャル本人の口から語られる、ドキュメンタリー映画です
戦渦を被る、悲惨な経験を次々明かしていくのに、エマニュエル・ジャン自身は微笑を絶やさない
家族が恋しい、愛情に飢えている、トラウマも抱えていると言いながらも笑わせて、相手を和ませてしまう
内容は目を覆いたくなるようなものなのに、不思議と気分は落ち込まない
正直もう一度観たいと思ったドキュメントは初めてです
 
エマニュエルは歌います、「僕の話を聞いてくれ、僕らは戦争の子供(ウォーチャイルド)」
平和と、家族への愛
難民たちに足らないものは教育、知識が広がれば希望も多くなる
そして、おぞましくて愚かしい戦争
復讐したかった敵兵士や宗派はすでに憎んでいない、石油やダイヤモンドや金や土地で利益を得ようと暗躍する者たちがいる現実を知ってしまった、今では
魂の慟哭を綴った彼のヒップ・ホップ(音楽)は、たくさんの人の心に響き、ミュージシャンとして成功しました
 
エマニュエルは若くして世を悟ったような穏やかさで、 講壇に立ちます
話すのは得意じゃない、上手く伝えられない
そう言っても言葉を慎重に選んで、自らの人生を振り返ります
難民が蔓延る祖国スーダン、生きていくためには少年でも銃を持ち、兵士になって戦場を彷徨う
「人を殺したことはある?」
核心を突く質問に、エマニュエルは一瞬視線を虚空に泳がせ、こう答えました
「戦争になると、草むらに向かって、とにかく銃を撃つ、闇雲に何でもいいから撃つんだ」
「敵の兵士に出くわすと、何度も殴った、もう死んでいるのに殴ったよ、怖かったんだ」
(注意、セリフは正確じゃないです、ニュアンスだけ受けとってください)
 
餓死しかけた辛い記憶も・・・
脱走した仲間たちと、砂漠をひたすら歩いていくと、いつしか用意した食料も尽きていた
空腹が続いて、極限までくると、人間の行動はおかしくなっていく
誰かが人肉を食べたと言う噂が立った
彼自身も衰弱して横たわっていると、ふいに目にした隣の友人が美味しそうな食物に見えた
だけど動けない彼の代わりに、友人がとってきてくれた獲物を残さず食べた
「おかげで、友だちを食べなくて済んだよ」と、エマニュアルは苦い笑いを浮かべました
 
劇中、何年ぶりか祖国に戻って、ずっと願っていた家族との再会を果たしました
エマニュエルは祖国の教壇にも立ち、憧憬の眼差しを向ける同郷の子供たちの質問にも答えます
「難民国を出て(豊かな国へ)行った人間は、二度と戻ってこないと思っていた」
「豊かな国へ行っても夢見ているほど幸福ではない、孤独に押し潰されそうになる、働かなきゃ生きていけない、自分のことだけで精一杯、誰もがぎりぎりで明日の生活を支えている、(戻ってこないからといって)彼らが祖国や家族を忘れたとは思わないでほしい」
 
上演時間はたった一時間半
だけどエマニュエルの傷つけられても真っ直ぐな姿勢から学んだことは、とても尊いものでした
死ぬほど辛くても悲しくても苦しくても、逞しく生きていく先にしか、未来に辿り着ける道がないこと
体験談に基づいた真実を歌う彼の声には、耳どころか全身を傾けて聞きたい、聞かせてほしいと心から思わせる力があります
 
 
 


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