「……は?」
疲れていた頭が一瞬真っ白になった。
それでも次の瞬間、慌てて「彼」が行った方向を追い駆けたのだが「彼」は物凄い……とまでは行かないが結構なスピードのまま出発待ちの人達の波間に消えてしまった。
え? 今のはやっぱり「幻覚」???
(後で会った彼に同行していた同僚さん曰く
「彼はいつでもあんな調子でサッサと歩いて行くんだよ」
…と笑っていた)
……いや、しかしな~。
アノ人が「ゆうご」さん本人だとしたら、折角の「縁」なんだから話してみたいな~。
…そうは思っても「以前の私」ならここで終わったと思う。
そして結局「やっぱりあの時アアすれば…」となって後々もグズグズと考え続けた……と思う。
しかし。
何度も繰り返すが今や「ダメモト」が身に着いた私。
「別人」だったとしても、エエじゃないか!
…と直ぐ思い直し、更に
もしも「アノ人」が本人だとしたら、
絶対に同じ便に乗る、
ということだなよな?
と、直感した私は、同じヒマならと少し早めに『搭乗者用スペース』に向かった。
運良くその航空会社の『搭乗者用スペース』はヒースロー空港ターミナル3でも結構奥の方というか、本当に
「この便の搭乗者以外は誰も来ない」
…ような場所にあった。
未だガラガラだったエリアで私は敢えて出入口近く……やって来る人達が一番良く見える場所に座り、ぼんやりしつつも横目では入って来る人達全てをしっかり見守って?いた。
ところで。
今回驚いたのは、それまでの経験では『日系航空会社』を利用すると機内=搭乗者は
「外国人が外国人のまま」
…と言うか、乗客の9割……時にそれ以上が「日本人」であったのに、その時のソレは
「日本人が半分くらい?」
…という状況だったこと。
(後で判った事だけれども『英国航空』とコードシェアをしているのでヨーロッパ内からの「乗り換え客」も結構居る、ということもあったらしい)
故に機内も終始日本語と同じレベルで英語その他の言語が飛び交い、客室乗務員の方々も言語の切り替えが大変だな~、という雰囲気だった。
さて。
搭乗開始時間が近付き、人がドンドンやって来た中にとうとう「アノ人」がやって来た。(周囲の人達と比べても背が高いので直ぐ判った!)
最初の「目撃」では見なかった、同じくらいの背丈の外国人男性と一緒に。
最初は「一瞬」だったその姿をじっくり観直すと、その移動スピードに似合わない(🤣)その穏やかな顔立ちを確認して
「あ、これは(話し掛けても)大丈夫なヒトだな」
…と直感した私。
(後にこの判断は大正解であったことが証明されます)
エリアへのチェックを済ませた「アノ人」が顔を上げてこちら側に視線を向けたその瞬間、私は彼に向けて笑顔と共に大きく片手を挙げて振ってみせた。
「アノ人」も直ぐ気が付き、笑顔のまま真っ直ぐこちらに寄って来た。
「…リオさん……ですかっ⁉」