私はうつむき加減だった顔を上げた瞬間、
「うわっ!
『ハズレ』だっ!」
…と思ってしまった、悪いけど。
だって、そこに居たのは
どう見ても70歳以上
…どころか、向こうから
「86歳です」
…と言われても
「ああそうですか、お元気ですね~」
…と、自然に言えるくらい深い皴が刻まれた、背中の丸い小柄な白人の『オバアちゃん』だったのだから……!
まあ百万歩譲って「家庭内問題」のようなものだったら彼女のような人の方が……と考えることも出来ただろうが、私の問題に関して言えば正直
「ダメだ、こりゃ!」
…という気持ちしか浮かばなかった……のは差別だろうか?
それこそ今なら「ポリコレ」に引っ掛かるのかも知れないが、私の経験上「ビザ問題」に関しては……もっと若くて、でも若過ぎない相手……中年前後の男性を相手にするのが例え内容的には「それなり」ではあっても
「打てば響く」
…という感じ?
「こんな」……と言っては本当に失礼だが、コノ国に生まれてコノ国に育って、「ビザ」どころか「人種差別」も受けては来なかっただろう女性……多分年代的にも雰囲気的にもそうバリバリ働いて来た、という感じも全くない……
『気の良い隣のバアちゃん』
…が出て来られても、ね~?
いや、まあでも「全く判らない」からこそ、
「じゃあ、私では判らないから~」
…となって『次』=直接面接を組んでくれる!……ということもあるか?……と考え直し、そっちに持って行こう!と考えた私。
「で~、どんな御用件かしら~?」
「え~とですね、
ビザに関して
政府からこういうことが発表されたのですが……
……これに対して
私が個人的に用意しなければならない
資料等を詳しく知りたいんですけどね…」
…と、持参した資料を指差しながら説明し出した途端、「バアちゃん」が笑顔で口を挟んだ。
「あ~、あのねえ~、
アタシねぇ~、耳が遠いんでねぇ~、
アナタの口元を見ながらじゃないと
ナニ言っているか良く判らないからぁ~、
顔を向けて喋ってくれる~?」
……Σ(・ω・ノ)ノ……!!
いや、
……( ̄_ ̄|||)……!
……だったかもしれない。
見た瞬間から「期待」は出来ない相手ではあったけれども、その瞬間私の気持ちが一気に「絶望」、いわゆる
「奈落の底」
…まで落ちたことを、皆さん理解して頂けるだろうか……??