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Theatre

観劇の備忘録。独り言。

「クリプトグラム」に関する投稿はこれで四本目。

    書き過ぎだよ。。。。。

備忘録として細かい感想だけ書いて終わりにしよう(ネタバレ無し)。

谷原章介さん(デル):
はまり役でした。代表作だと思います(と勝手に断定)。気弱で劣等感まみれなのに、要所要所ではドニーとジョンをちゃんと受け止めてる。男らしい包容力に溢れた姿でした。相反する二つの要素がしっかり解け合ってて良かったなぁ。初めに観た時はどうしても、素の格好よさに目がいってしまったんだけど、二度目以降は彼の身体的演技に目が釘付けで、谷原さんって事忘れるくらい。猫背、歩き方、うつむき加減、視線、口調。うーん忘れられない。

安田成美さん(ドニー):
綺麗でチャーミングで、可愛いドニーでした。観ていてうっとり。でもそれじゃあこの役駄目なんですよね。マメットの描いている母親と真逆ですよ。台詞もフリも完璧で始終苛立っている冷たい母親を熱演だったのですが。。。見る側の問題だったのかもしれません。安田さんの善良さを打ち消すだけの想像力が私にはありませんでした。もうちょっと毒のある人をキャスティングして欲しかったかな。そして安田さんは別の役で拝見したいです。

坂口湧久さん(ジョン):
お見事。この一言です。どれくらい細かく演技つけられてたんだろう。どんな動作一つをとっても心情が現れていて意味のない動き無し。三回観たけど動きは全く同じで、全部計算されたものだったんでしょうね。あの膨大な台詞に加えてたいしたもんです。
大人になっても是非役者を続けて欲しいです。今小6で、これから舞台に立つには難しい年齢。すっぱり舞台出演はお休みして、しっかり身体を作って欲しい。今の舞台俳優は大型化してるから、身長は出来る限り伸ばさなきゃね。沢山本読んで、沢山音楽聴いて、色んな経験してください。間違ってもダラダラ子役を続けて、結果つぶれてしまわないように。切に切に祈ります。

小川絵梨子さん(演出):この世代の人が今、どの世界でも一番面白いですね。彼女の演出作品はじめてみましたが繊細緻密って言ったら大げさ?でもそれだけ想像力を刺激されました。同年代の森新太郎作品がどかーんと観客の心を打つなら、彼女の作品はじわじわと心に攻め込まれて気づいたら心に刻まれちゃったよって感じかな。次も観たい。新国立劇場のマンスリープロジェクトは絶対行こう。

美術と音楽も良かったのですが、それよりも何よりもプログラム!!ものすごく凝ってるよ、これ。表紙は白地に黒でタイトル(英語と日本語)。中央に黒い線が斜めに数本。で台詞(英語ね)の断片が地紋として印刷されてるんです。光にかざすと浮かんできます。しかもところどころ文字が落ちてるんですよ。例えば「blanket」は「bl nke 」ってなってるわけ。パッと見は暗号にしか見えないんだけど、じっと見ていると何の単語かは分かる仕組み。こんなところも暗号解読させるのか!(そういやフライヤーも同じ趣向だったな)
表紙をめくると裏には階段が。表紙の黒い線と思ったのは階段のラインでした。その次は赤い透明なフィルムに白い小さい四角が散っているページ。前のページに重ねて見ると階段が真っ赤なライトに照らされたように見える。火事のイメージなのか?血のイメージなのか?英語の脚本だとプロローグにキャンプの唄の歌詞がのってるんだが、ランタンから出火して大火事になっちゃう唄だそうで、そのイメージなのかも。
その次のページからも全て地紋に文字が印刷されてます(これは意味が取れない!!分からない!!!)。中表紙には劇中の小道具(ロウソク、ティーポット、写真立て、釣り竿などなどなど)のシルエット。それ以降のページも全て文字の入った地紋。そしてそして地紋部分をよーく見ると、さらにさらに小道具が1ページに一つずつ浮かび上がるようになっています。凝り過ぎだ!!中表紙の次には湖と湖畔に立つボートハウスとキャビンの写真。この写真が良い!イメージぴったり。
デザイナーの方も脚本も読み込んだんだろうか?いやあ私も楽しませていただきました。
あ、中身はですね、可もなく不可もなくかな。1996年に書かれたマメットの評論、小川さんと中屋敷さんの演出についての対談、役者の略歴。それくらいなんですよ。デザイナーの努力と比べるとちょっとどうなのよ、って内容でした。

こんなもんかな。そういや明日は大千秋楽でした!
もしこれから舞台を観るという方がこれを読んでいたら、観劇中は暗号は解こうと思わずに純粋に舞台を楽しんで欲しいです。台詞回しは早くて独特。観ながら暗号解読するのはマメット専門家か観劇オタクでもない限り無理です。取り敢えず役者たちの演技をじっくり観て欲しい。台詞は難解でも演技はとても分かり易いので。

長々おつきあいありがとうございました。

「クリプトグラム」の妄想。次はデルの視点でみた物語。

これが結構難しい。デルに関係する暗号が山ほど出て来る上に、舞台上の人物描写も実に複雑です。長身、猫背、少し引きずる足、たまに吃音、くたびれた服装。内気&気弱(ドニーに対して)、寛容&愛情深い(ジョンに対して)、憧れ(ロバートに対して)、強い劣等感(自分に対して)。どういう人生を歩んで来たのやら。。。

取り敢えずデル達が大学生だったあたりから妄想を始めます。舞台の裏を読み解くというよりほぼ二次創作になっております。お嫌いな方は読まないでね。

デルは支配的な母の影響で非常に内向的な性格。さらに猫背で吃音。友人は幼なじみの同級生、ロバートとドニーしかいない。ロバートとドニーは恋人同士だが、親へのカモフラージュのため湖にキャンプに行く時には必ずデルも伴う。湖のキャビンは三人が幼い頃から訪れていた場所。ある時デルとドニーがエレメンタリースクールの時に夢中になった本が二冊本棚に残っていたのを見つける。二人はそれぞれにもう一度サインをし、友情の印に生涯もっていようと約束し合う(「自分にこどもが出来たら読んであげたいわ」みたいな会話もしたかもね。でロバートはこの本には興味なし。ロバートは読書よりスポーツ)。
外向的で自信に満ちあふれたロバートにデルは憧れの気持ちを抱いている。さらになんど女性を紹介されても興味を持てない彼は自分のセクシャリティに気づき、二人には打ち明ける。(この辺りから「あなた早く結婚しなさいよ」「良い人がいたらね」の会話は三人の中で有り得ない冗談として交わされていたと思われる)
ロバートへの淡い恋心を自覚しつつも、自分を理解し認めてくれるドニーも大事に思っているデル。愛し合う二人を見守るしかない辛い状況ではあるが離れる事は出来ない。
やがて戦争が始まり、ロバートは空軍パイロットとして出征して行く。戦時中、ドニーを支えたのは作家として成功したデルだった。
戦争は終わり、帰って来たロバートはドニーと結婚する。祝福するデル。
順調なスタートを切ったように見えた結婚生活は次第に破綻して行く。戦争中にパイロットとしてもてはやされたロバートは普通の生活に適応出来なかったのだ。仕事もうまく行かず、他の女性と浮気を繰り返す。悲嘆にくれ女性としての自信も失っていくドニー。
(この辺りでドニーとデルは一度だけ関係を持ってしまったと想像します。ドニーを慰めているうちになし崩しってとこかな?ロバートのシャツがフィットするくらいですから、デルは肉体的には男性の魅力に満ちているはずですしね)
一時は離婚も考えたロバートとドニー。しかしドニーの妊娠が明らかになり、ロバートは悔い改め、もう一度やり直す事を誓う。(デルは一応ドニーに子供の父親が誰か尋ねたと思います。そしてきっぱり否定されたと)
ジョンが生まれ、夫婦はなんとか絆を取り戻す。ジョンのゴッドファーザーとして一家を見守るデル。デルはロバートの事業がうまく行くようドニーには内緒で援助をし、何よりもジョンを可愛がる。
しかし、成長するにつれジョンはロバートよりもデルに似てくる。スポーツよりも読書を好む思慮深い性格。あの本も今やジョンの愛読書だ。そうしたジョンを素直に可愛がれなくなってくるロバート、さらにドニー。二人の分も愛情をそそぐデル(幕開きのジョンとの会話、そして薬を必死にのませるシーン。愛に溢れてましたよね)。
壊れて来る一家の絆。ロバートはまた浮気をするようになる。罪悪感からロバートの浮気を知ってもいさめる事が出来ないデル。彼に出来たのはドニーが気づかないようロバートの情事に協力することだけ。
ロバートは妻子を捨てて浮気相手を選ぶつもりだとデルに告げる。デルに止める力はない。ただジョンにだけはきちんと話してやって欲しいと訴える。湖のキャンプに連れて行ってそこで話すとロバートは約束する。

そして第一幕の夜がやって来る。

演出の小川さんと演者の谷原さんで作り上げた今回のデル。本当に魅力的でした。私にとって理想のゲイでした。結婚したいゲイNo1と言っても過言ではありません。
幕開きでのジョンとの禅問答のような知的な会話。慈しむような眼差し。暖かい口調。幼い子にも対等に語る姿勢。ジョンとデルの結びつきの強さがよく分かります。これだけで私やられてしまいました。さらに三幕はもう釘付け。
「君の心の平安の為に、僕を許して欲しい」そんなにドニーが大事なのか!!
さらにドニーと対峙し、初めて彼女に叫ぶのが
「・・僕はあわれなオカマだよ。ホテル暮らし。馬鹿な中年男。そして君を愛してる!」
演劇史上まれに見るパワフルな愛の告白です。これを言われて落ちないオタク女子はいないと思います。残念ながらドニーはオタク女子ではないので「やめてよ」で終わっちゃうんですが。あー勿体ない。ドニーって自分で不幸を作り出すタイプよね。

暗号としての「ナイフ」ですが、自分を縛るしがらみを断ち切るものって事なんでしょうね。ロバートは妻子ってしがらみを切って出奔するわけですし、デルの場合はゲイで女性は愛せないという彼の思い込みを断ち切るってことでもありそう。最後にデルがナイフをジョンに渡しますが、あれはロバートとの親子の絆を断ち切って自分のところに来て欲しいってデルの気持ちの現れかな。

しかしながら、もしデルが父親だと明かしたら、ジョンは受け入れない気がします。ジョンはジョンなりに父であるロバートを愛してますもの。だいたいドニーが絶対認めない。あれだけヒステリックに自分の正当性を主張する女性が自分の過ちを認めるなんて有り得ない。
ということで終幕の後には不幸が待っているだけな気がするんですよね。
八方ふさがりのデル。幕引きでも頭抱えてたっけ?でもめげないで。友人としてで良いから二人のそばにいてあげて。ドニーはどうでもいいけどジョンの為に。

ダラダラと書き連ねて失礼しました。ホントに妄想垂れ流しですみません。ちなみに羅列した台詞はすべてうろ覚えな上間違っているかも。小川絵梨子さんの脚本はとっても自然で聞き易かったので、読んでみたいところです。

ロバートとドニーの物語どうしようかな。一応頭の中にはあるんですが、もう文章にしなくてもいいかな。ただ後一回だけクリプトグラム全体について書きます。この舞台、プログラムやセットもすごく良かったんですよ。忘れたくないので備忘録としてそちらは残します。








クリプトグラムの暗号解読は観客次第。どんな秘密が隠されていたのか、私なりの解読で浮かんだストーリーを書いてみます。ネタバレというよりは完全な私の妄想でございます。これから舞台をご覧になる方はお読みにならない方が良いかもしれません。と一応お断りしておきます。

視点をジョンにおいて考えてみます。最初の暗号は「毛布」。
あの毛布は彼が赤ちゃんの頃くるまれていたもの。つまり両親の愛情の象徴です。自分を守り暖めてくれる存在。
もう一つの意味もあります。ジョンが産まれる前ドニーとロバートは二人でこの毛布をもってよく田舎に出かけていた。と語られています。毛布は仲の良かった両親を連想させるものでもあるのです。
その毛布がいつの間にやら屋根裏にしまい込まれ、出してみると破れてしまいます。ジョンは自分への愛情が失われていく恐怖、そして自分の存在が両親の仲を壊してしまったのではと不安でいっぱいになるのです。毛布を破ってしまったと狼狽するジョンに向かって「あなたのせいではない。ずっと前から破れていたのよ」と冷たく告げるドニー。非常に象徴的なシーンです。
ドニーの言葉に納得出来ないジョン。
「でも僕が破ったんだ!びりって音がしたんだよ!」
「僕が破ったんだ。」
「音がしたんだ。。。」
「ぼくのせいじゃないの?前から破れていたの?」
楽日には、私、このシーンで落涙。坂口君のあの必死→うつろな言い方。巧過ぎだよ!
「毛布=両親の愛情」の公式を使うと、この後のジョンの台詞の数々がひたすら胸を打ちます。
特に三幕で毛布に執着する姿。「毛布持ってていいって言った!」と叫ぶ声。もうひたすら切なかったです(切ないどころか号泣して周囲からめっちゃ引かれましたよ。。坂口ジョンうますぎー)。まだたった10歳の少年なのです、まだ親の暖かい愛情にぬくぬくと包まれている権利があるのです。そうストレートに訴える事も、ドニーを非難する事もせずただただ毛布を求めるジョン。あー書いてても涙出て来た。

次の暗号はジョンが寝る前に聞こえてくるという「声」と闇の中に見える「灯り」。
なぜジョンはドニーに甘えないのでしょう?寒いのならば、不安ならば、抱きしめて欲しいとねだってもこの年齢なら不思議ではありません。さらになぜ夫婦の亀裂は自分のせいと思ったのでしょう?
ここで「声」と「灯り」に答を見つける事ができそうです。
色々な答のパターンがありますが、私はロバートがジョンに秘密を話したのだと思います。ジョンの本当の父親はデルだという秘密を。
真っ暗なベッドルーム、キャンドルを持って入って来たロバートが眠っているジョンに別れを告げる。一緒にキャンプには行かれない事を詫び、そして秘密をささやく。ともにキャンプに行くべき本当の父親はデルだとでも言ったのでしょうか?
ジョンは夢の中でそれを聞いていました。目覚めた彼はそれが本当にあったことか、夢だったのか分かりません。ただひたすらに夢である事を願って、父ロバートが帰ってくること待ち続けます。彼が帰ってくるまでは眠る事が出来ません。ロバートが帰って来さすればアレは夢だったのです。しかし帰って来ないロバート。
ロバートが戻らない事が決定的になった後も、ジョンはささやかれた言葉の正否をドニーやデルに聞く事ができません。ただ「声が聞こえた」「灯りが見えた」と訴えるだけ。湖の小屋に行きたいとドニーにせがむのはロバートに真実を問い質したかったのかもしれません。
芝居のラストはジョンの台詞です。
「眠れない」
「声が聞こえるんだ」
たった10歳の少年の深い苦悩でこの物語は終わるのです。



次は突っ込みどころ満載のデルの暗号に行きます。