危機と向かい合う力



近年の企業コンプライアンスの事例としてよく取り上げられるのが、

ジョンソン・エンド・ジョンソン社(以下J&J社)の「タイレノール事件」。


私も講演で一度聞いて、記憶に残っています。

それほどに印象的な話です。


こちらで詳しく経緯など取り上げられているので、

御覧ください。


週刊!Tomorrow's Way



その講演では、講師の方が一番最初にJ&J社の「我が信条 」のコピーを配布されました。


そのときの講師の方の言葉ですが、

「人間は危機的状況に陥ったとき、自分が楽な方に走ってしまう。

そうではなく、自分が正しいと思うことをしなければならない。」


この言葉は非常に印象に残っています。



危機的状況に出会ったとき、楽な方を考えてしまうのが人間の性。

そんな迷ったときに、自分の判断基準となるもの。それが理念なのだと思います。

それは企業であれ、一組織であれ、個人であれ、変わらないと思います。


私も自分個人の信条を書き留めています。

何かに迷ったとき、困難な状況に出会ったとき、それを読み返し、

そして自分の行動を決めています。


改めて、理念は自分に力を添えてくれるものだと実感しています。

そのきっかけを与えてくれたのは、J&J社でした。



J&J社


我が信条

余計なものはそぎ落とす


livedoor


数々の話題を振りまき、先日もセシール買収 を発表したライブドア ですが、

そのライブドアの社風に関する記事が日経ビジネスアソシエに掲載されていましたので、

ここに紹介します。




「堀江貴文社長の考えは、『社風なんて百害あって一利なし』。

だから、ライブドアに社風らしき社風はありません。

代わりにあるのが、『稼いでくるならプロセスは問わない』というカルチャーです。

いわば、ライブドアはやる気のある人に”場”を与える装置。」


「不思議なもので、『可能性と自由をあげます』と言えば、

たとえ給料が下がっても優秀な人が自然と集まってくる。」




社風はなくても原則はあります。

つまり、「稼いでくれば手段は関係ない」というものです。


会社に対する様々な考え方、捉え方があると思いますが、

会社は人に”場を与えるもの”であり、人を縛り付けるものではない、

という考えが読み取れます。



最低限の共通認識・目標を与え、あとはそれぞれの裁量に任せる。

そうすることで自ら目標達成のための方法を考えるようになる。


余計なものはそぎ落とす。


それもまた理念のひとつのアプローチだと思います。


「勝つ」と言い切る


Dell


今日は、ダイレクト・モデルと呼ばれるビジネスモデルを構築し、

コンピュータ・メーカーとして走り続けるデルの理念をご紹介します。




<Soul of Dell>


<Customers: お客様>

私たちは、優れた満足経験を優れた価格でご提供することによって、お客様がデルに対する高いロ イヤルティ(忠誠心)を持って下さると信じます。

私たちは、ダイレクトな関係、標準ベースの技術に基づく最高の製品とサービスの提供、そして、高い 価値と優れた満足経験においていかなる競合他社にも負けないことをコミットします。


<Dell Team: デル・チーム>

私たちの継続的な成功は、チームワークと、チームメンバー一人一人が学び、開発し、育成を図れ る様々な機会にあると信じます。

私たちは、成果主義であること、そして、世界市場での私たちのビジネス展開を反映する最高の人材を 育成し、保持し、また魅了することをコミットします。


<Direct Relationship: ダイレクトな関係>

私たちは、あらゆる活動において「ダイレクト」であることの価値を信じます。

私たちは、高い倫理意識を持って行動すること、お客様のニーズにタイムリーかつ道理にかなったマナ ーで対応すること、お客様、パートナー、およびサプライヤーとの間でオープンなコミュニケーションを育成し、効果的な関係を構築すること、そして、 階層的・官僚的でない組織によってビジネスを運営することをコミットします。


<Global Citizenship: グローバル・シチズンシップ>

私たちは、世界市場において責任ある企業であることを信条とします。

私たちは、全ての国の法律、価値および文化を理解、尊敬すること、利益を伴うビジネスの成長を図る こと、健全なビジネスの風土を世界で促進すること、そして、個人として、また組織として、私たちが属するあらゆるコミュニティ(地域社会)に対し、 積極的に貢献することをコミットします。


<Winning: 勝利>

私たちは、私たちが行うすべてのことにおいて勝利を収める情熱を持っています。

私たちは、優れたビジネス運営と卓越したカスタマー・エクスペリエンス(お客様の満足経験)、私た ちが従事する世界市場において常に他をリードすること、また、素晴らしい企業として、また素晴らしい職場として知られる存在になること、そして、優 れた株主利益を長期的に還元することをコミットします。





注目するのは最後の項目。「勝利」と言い切っていること。


日本では「勝つ」と宣言するということは「誰かを負かす」と捉えられ、

何となく敬遠されがちです。


ただ、資本主義社会では他社と競争し、

そして生き残っていかなくてはなりません。


デルはきっとその事実を正面から受け止める意味でも、

この理念を掲げているのではないでしょうか。


また、4番目の項目<グローバル・シチズンシップ>と組み合わせると、

「健全な競争」の上で勝利する努力をする、というようにも読み取ることができます。



これを読んで思ったのは、周囲が少し尻込みするような言葉を使って言い切ると、

組織は他社にはない勢いを得るのではないでしょうか。



ちなみに、昨日ご紹介した「GEバリュー」 の最後にも、

「私たちは、実力主義のもと、学習し、多様性を受容し、変化を追求します。」

として、実力主義をはっきりと示しています。


思い切って「言い切る」ことも、使い方によって良い効果を生むのだと思いました。



Soul of Dell

具体的に結びつける仕組み


GE



GE といえば、世界に名だたる企業であり、

また有能な人材を輩出することでも有名です。


「GEバリュー」として定められたGEの価値観では、それぞれの項目にロゴがついています。




GEバリュー


action_img

imagine 想像する:

私たちは、お客さま、社員、地域のために想像力を働かせます。


action_sol

solve 解決する:

私たちは、世の中の困難な問題の解決に役立てるよう、取り組みます。


action_bil

built 築く:

私たちは、成果を尊ぶ社風を通じ、市場を拓き、人を育て、株主価値を高めます。


action_lead

lead リードする:

私たちは、実力主義のもと、学習し、多様性を受容し、変化を追求します。





こういったロゴを使えば、いろんな場面で

その理念を思い出すことができるのではないでしょうか。


例えば、


「この決定はこの理念に基づいて下されました」という意味で、

文章の横にロゴをつけたり、


社内のいろいろな場所で、その理念を想起するように貼り付けたり。



理念というのは、人々に浸透し、

かつそれに基づいて行動するようになって、

はじめてその効果を発揮するものだと思いますが、


このようなロゴを用いると、

様々な場面に織り交ぜることが可能なのではないでしょうか。



GEバリュー

言葉をさらに「イメージ」させる



Five Values




豊田自動織機といえば、自動車メーカー・トヨタ自動車の母体だった企業です。


今日はその中で、

豊田自動織機の一人ひとりが大切にしたい価値観・行動

として定められている「ファイブバリューズ」をご紹介します。


理念というと、言葉で表現するものだと思ってしまいますが、

豊田自動織機は言葉に加えて、それらを色で表現しています。





豊田自動織機の一人ひとりが大切にしたい価値観・行動


Globalism = 緑

緑は、バランス・調和・発展の精神を表わします。
世界の中で偏りのないバランス感覚を持ち、常に一流をめざし発展していくという思いが込められています。


Customer Oriented= 赤

赤は、情熱を表わします。
情熱をもって、お客さまの「うれしさ」のために尽力していく、という思いが込められています。


Challenge to Change = 水色

水色は、変化を求め、常にイキイキとしている様を表わします。
現状に満足することなく、「理想の姿」に向けて変化していく、という思いが込められています。


Professional Excellence = 黒

黒は、精錬を表わします。
プロとしての実力と自信をもって行動できるよう、自分に磨きをかける、という思いが込められています。


Teamwork = 黄色

黄色は、光や希望ということから、人を元気づけるとともに、心を開かせ、奮い立たせる色とされています。
同じチームとして、お互いに心を開き、力を与え合う、という思いが込められています。





色をイメージすることで、言葉そのものの意味だけでなく、

その言葉を含んだ漠然とした”感覚”を抱くことができるのだと思います。



豊田自動織機 ファイブバリューズ

「確信」を秘めた言葉

Google

今や世界に名だたるGoogle ですが、

先に9月27日で7周年を迎えました。(まだ7年です!)


そのGoogleの理念として、Googleが発見した10の事実 をご紹介します。



<Googleが発見した10の事実>

1.ユーザーに焦点を絞れば、「結果」は自然と付いてくる。

2.1つのことを極めて本当にうまくやるのが一番。

3.遅いより速い方がいい。

4.ウェブでも民主主義は成立する。

5.情報を探したくなるのは机に座っているときだけではない。

6.悪事を働かなくても金儲けはできる。

7.世の中の情報量は絶えず増え続けている。

8.情報のニーズは全ての国境を越える。

9.スーツがなくても真剣に仕事はできる。

10.すばらしい、では足りない。



これらはいわゆる「標語」のようなものではないので、

この言葉を読んだだけでは、よくわからないものもあります。


実際の本文は、それぞれの項目に細かい説明文が掲載されていますので、

さらに知りたい方はコチラ を読んでください。



面白いと思うのは、「発見した事実」と謳っている点です。


読んでみると、Googleの基本的な考えの部分と、

Googleが歩んできた過程の両方が組み合わさって描かれています。


それは基となる考えに加えて、それに伴う実績による「確信」が読み取れます。


これは読んだ人に対して強い説得力を生み、

かつ考えと実績の両方を理解してもらう理念のカタチだと思います。



Googleが発見した10の事実

NISSAN


CMでもよく流れている「SHIFT_」。


この具体的な理念が掲載されていたので、取り上げます。



<引用>

SHIFT_thinking「考え方を変える」こと。

これは、今まで誰もが、当たり前だと考え ていたものの見方や方法、

日々の生活の仕方を変えてみることです。

これまでの延長 線で改良を加えるのではなく、明確な目的を定めて、

従来の考え方にとらわれず、よ り効果的にものごとを行なうということです。

これは、変革です。

そして、変革こそ が、より良く、より速く、より高いレベルの成果を実現するのです。




実際に変革を成し遂げ、復活を果たした日産だけに、

なお一層この言葉の重みを感じます。



「考え方を変える」ことは、簡単なことではないですが、

今までとは違った「何か」をつかみたいと思えば、

それはとても重要なことではないでしょうか。



そして、会社全体がこの考えに沿って行動を起こせたならば、

変化の激しい現在でも、対応できる組織になるのではないでしょうか。




現在の日産の原形と、カルロス・ゴーン氏の経営に対する考えに関して

理解が深まる一冊を挙げておきます。



カルロス・ゴーン, 中川 治子

ルネッサンス ― 再生への挑戦

日産自動車 SHIFT_

昨日の続き。現在のトヨタの基本理念です。


豊田綱領を基に、1992年に策定、1997年に改定されています。




トヨタ基本理念


1.内外の法およびその精神を遵守し、オープンフェアな企業活動を通じて、国際社会から信頼される企業市民をめざす。


2.各国、各地域の文化・慣習を尊重し、地域に根ざした企業活動を通じて、経済・社会の発展に貢献する。


3.クリーンで安全な商品の提供を使命とし、あらゆる企業活動を通じて、住みよい地球と豊かな社会づくりに取り組む。


4.様々な分野での最先端技術の研究と開発に努め、世界中のお客様のご要望にお応えする魅力ある商品・サービスを提供する。


5.労使相互信頼・責任を基本に、個人の創造力とチームワークの強みを最大限に高める企業風土を作る。


6.グローバルで革新的な経営により社会との調和ある成長を目指す。


7.開かれた取引関係を基本に、互いに研究と創造に努め、長期安定的な成長と共存共栄を実現する。




グローバル企業であることを強く意識した内容になっています。


現在のトヨタの企業戦略や、競合他社との付き合い方も見えてくるように思えます。



http://www.toyota.co.jp/jp/environmental_rep/03/rinen.html

今や「世界のトヨタ」ですが、その創業者・豊田佐吉が定めた「豊田要綱」を取り上げます。


現在の「トヨタの基本理念」もこれに基づいて策定されています。



「豊田要綱」

一、上下一致、至誠業務に服し産業報国の実を挙ぐべし
一、研究と創造に心を致し常に時流に先んずべし
一、華美を戒め質実剛健たるべし
一、温情友愛の精神を発揮し家庭的美風を作興すべし
一、神仏を尊崇し報恩感謝の生活を為すべし



現在のトヨタ像とまさに重なります。

モノづくりへの探求心や、「派手ではないけれども確実」というような現在のイメージも、

この理念から始まり、そして現在につながっているのだと感じます。



http://www.toyota.co.jp/jp/environmental_rep/03/rinen.html